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choice01  作者: 陽芹 孝介
第四章 絶望と希望
12/27


パーティールームに戻った四人は、待機組を仕切っていた九条、山村と互いに情報交換をした。

皆沈んだ表情をしている。

無理もない……昨日まで人一倍笑顔で、馬鹿みたいに騒いでいた愛美がいないのだ。

容子はもちろん美夢も泣いている。順平にも椿にも、涙の跡がある。

……皆悲しく……そして恐ろしいのだ。

頭の中はまだ混乱しているだろうが、本能的に理解している……この島に『殺人犯』が居ると。

九条が言った。

「そうか……やはり他殺か……でも拳銃って…」

葵が言った。

「可能性はいくつもありますが……山村船長、船に乗っていたのは僕たちが12人で間違いありませんね?」

山村が答えた。

「はい、間違いありません。私達以外の人間が船に乗り込んだらセンサーで反応するようになっています…」

「なるほど……まぁ仮にセンサーが故障して、誰が乗り込んで一緒にこの島に来たとしても、誰にも気付かれずに2~3日も、潜伏するのは……この狭い敷地では不可能ですね…」

有紀が言った。

「だとすると……我々の寝静まった夜にこの島にやって来たと?」

葵は言った。

「可能性は無くはないです…」

歩は言った。

「しばらくは……団体行動だな…」

するといつもは大人しい順平が声を荒げた。

「冗談じゃないっ!この中に犯人が、いるかもしれないんすよっ!」

九条があわせて言った。

「順平君……少し落ち着いて…」

順平は引かない。

「落ち着け?よく言えますね?俺はこの旅に一人で参加しました……あんた達と違って…」

葵は順平に言った。

「順平君……少し落ち着いて……では?君はどうしたいんですか?」

順平は葵を睨み付けて言った。

「自分の身は自分で守りますっ!」

葵は言った。

「籠城でもするつもりですか?」

「ええ……幸い食料は腐るほどありますし、必要な物は隙を見て転送倉庫に取りに行けばいい…」

葵は順平に言った。

「今ここで勝手な行動を取れば……君は容疑者ですよ」

順平はバカバカしいと、いった表情で葵に言った。

「じゃあ俺が犯人だと言う証拠をだしてよっ!」

葵はあっさり言った。

「証拠はありません…」

「そりゃそうだよっ!俺に拳銃を持ち込めるわけがないっ!」

そう言うと順平は食糧庫に行き、保存食をかき集めた。

自分の部屋に戻ろうとする順平を、九条は抑えようとしたが、それを振りほどき、順平は部屋へ戻ってしまった。

有紀はパーティールームの入口で、順平が部屋に入ったのを確認して言った。

「順平は、部屋に無事に戻った…」

九条が言った。

「やれやれ……まぁ、彼が疑心暗鬼になるのも無理はない…」

歩が九条に言った。

「言ってる場合かよっ!今こそまとまるべきだろっ!」

今まで黙っていた光一が言った。

「確かに団体行動は必要だが、無理がある…」

九条が言った。

「どういう事です?堂島さん?」

光一はゆっくり言った。

「別に反対している訳ではないが……四六時中は無理だ。寝る時は?風呂は?トイレは?」

葵がいつもの髪をクルクル回す仕草で言った。

「堂島先生の言う事も一理あります…」

葵は続けた。

「ここで一つルールが必要です…」

九条が言った。

「ルール……確かにそうだね…」

「ええ…堂島先生の言うように24時間……皆と行動を共にするのは不可能です」

有紀が言った。

「では……どうする?」

「例えば………朝昼晩の食事の時間をキッチリ決めて、その時間は全員で居る……それ以外は、部屋の広さから考えて……二人か三人一組で行動をとる…」

九条が皮肉った。

「順平君は出て行ったけどね…」

「それはしばらく様子を見ましょう……どうですか?皆さん…」

葵の提案に、皆は異論はないようだ。

九条は言った。

「とにかく朝食を済ませて、一度解散して……そうだな12時ちょうどにまた、ここに集合しよう…」

こうして一度朝食を皆ですることになった。思えばこうして集まって朝食するのは初めてだ。

当然ながら場の空気は重たい。

箸に手をつけない者もいる。

………当然だ………いるはず人が、いないのだから……。

九条が言った。

「皮肉なものだね、こういった事態になって……初めて皆で朝食をとるのだから……まぁ一人は部屋に戻ってしまったが…」

おそらく彼が精一杯絞り出した言葉だろう……だが、誰も反応することはなかった。

すると普段は……あまり話す事の無い椿が呟いた。

「小林様は……本当に私達の中に犯人がいると、思っているのでしょうか?…」

椿の唐突な質問……いや、誰もが聞きたい質問に答える者はいなく……沈黙が場の空気を支配する。

ただその中で言葉を発した人物がいた。

「順平君も…混乱しているのでしょう…」

言葉を発したのは葵だった。

葵はさらに続けた。

「気になるのは昨夜の全員の行動です……九条さんに先程聞きましたが……全員が昨夜は全員、0時までに就寝していたと言うことです…」

光一が言った。

「月島殿……何が言いたいのだ?」

「つまり……外部の犯行で無いのなら……ここにいる全員がアリバイの無い容疑者になります…」

葵の爆弾発言にその場がざわついた。

葵は場の様子をみて言った。

「……まぁ……順平君は、その事を踏まえて僕たちを疑ったのでしょう…」

九条は場を収めるのに慌てて言った。

「あくまで少ない可能性の話だよ……凶器は拳銃だ、僕たちに持ち込める代物じゃないよ…」

葵は空気を読んで九条に賛同した。

「確かに僕たちに持ち込める代物じゃありません…」

九条は話を変えるよに言った。

「とにかく今は何も考えず少し休もう……お茶でもしてね…」

頭を抱えて座っている九条を見て、山村と椿は食後のお茶の準備を始めた。

皆がお茶の準備や朝食の、後片付けを気晴らしついでにしているのをよそに…葵は一人髪をクルクルさせて考えていた。

すると葵の背後からいつものアイスカフェラテが渡される。

「どうも……歩さん……」

葵にアイスカフェラテを渡したのは歩だった。

「隣……いいかい?…」

「ええ……どうぞ…」

そう葵に言われると歩は、自分の珈琲をテーブルに置いて、葵の隣に座った。

しばし二人の間は、沈黙に包まれている……先程の事があってか、お互い気まずい。

「後ろからアイスカフェラテを渡されたのは……今回で二度めです…」

切り出したのは葵だった。

歩は言った。

「さっきは……すまなかった葵君…」

「アイスカフェラテを頂いたので、手打ちです。僕にも配慮が足りませんでした…」

「君は……変わってるな…」

「よく言われます…」

歩は少し考えて言った。

「どう考えてるんだい?今回の事…」

葵は髪をクルクル回しながら言った。

「犯人は……外部犯ではありません……残念ながら…」

歩は肩を落として言った。

「やっぱな……俺もそう思うよ……まぁ俺には根拠ないけど」

「僕にも、確証はまだありませんが……不可解な点があります…」

「なんだい?」

「確かに何らかの方法でこの島に昨夜、やって来たとし……愛美さんを殺害して、死体を外に出す。そして愛美さんの部屋に入り内側から鍵をかけて、潜伏する。可能性はゼロではありませんが、極めて低い…」

「聞いた感じだと可能性高そうだけど…」

葵は首を横に振って言った。

「だとしたら、部屋の外て殺害されているはずです……現場を検証しましたが、確実に部屋の中で殺害されてます。歩さんも立ち会ったはずですが…」

「確かに……でもドアを開けた瞬間に撃たれたかも?」

葵は首を振った。

「それもありません……愛美さんのシャツに焦げ跡がありました……あれは銃口を身体に着けて撃たないと、焦げ跡はつきません」

葵はさらに続けた。

「因みにドアを開けさせて、無理矢理侵入し、殺害する……これもないでしょう……いくら愛美さんでも見たこと無い人間を相手に、ドアを開けることは無いでしょう……ドア穴も付いてますから、少しくらいは外を確認できます…」

「よって、顔見知りか……で、あとは?」

歩は少しなげやりになっているが、葵は構わず言った。

「全員にアリバイが無い事です……ただそれは、そんなに問題ではありません」

歩は少し不思議そうに聞いた。

「どういう事だい?」

「逆の発想をすれば全員にアリバイがある事になります……そしてこの状況をみはからった犯行……手強いです」

ここで葵は話を変えた。

「それはそうと、歩さん……あなた何者です?」

「どういう意味だい?」

「あなたがただのカメラマンで無いのはもうわかってます。先日見えた腕の傷や火傷跡…」

「あぁ……プールに落ちたときか……見えちゃったか…」

「戦場か災害地のカメラマンかとも思いましたが……あなたの命に対する思いはまるで…」

歩は表情を緩めて言った。

「まったく君は…たいしたやつだよ。わかった……話すよ……君は、信用できる…」

そして歩は自分の経歴を語りだした。

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