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話し合いにまじる影法師

電撃戦と言う言葉には色々な意味がある。

例えば第二次世界大戦の時代、ドイツがポーランドに侵攻した戦闘。

例えば、機動力による撹乱などを主とした作戦の総称。

例えば、機動力に富んだ迅速な攻撃により勝利する戦い。

大体がこの三つを言うが、前回イギーが提唱したのは二つ目と三つ目を混ぜたものだ。


「急襲による撹乱、それによる混乱に乗じての目標の奪取。それが叶わない場合は奪取に失敗した奴が囮になり敵戦力を引き離す。最初に撹乱した奴は撤退したと見せかけて回り込み強襲又は目標の奪取…か?」

「そう言う事だ」

「しかし、先輩これはブリッツ(電撃戦)とか言うより別なモノな気が?」


第三戦術研究部の乱雑とした部屋の中、男三人が膝を付き合わせて話し合っていた。

話す内容は前回の話の続きで、電撃戦の事。

とは言え、今回はメンバーは少し増える。

部屋の中央では男が三人、隅の座席には女が三人、壁に一人男が立っていた。

中央の男三人はイギーと宗像、そのと宗像の兄『双角』だ。


「ブリッツの概要は機動力と攻撃力だな。能力者ってぶっちゃけ戦車と変わらんからな」

「兄さん、俺らは兵器かよ」

「人の形をした兵器って古代の賢人も言ってたからなぁ。士郎、そこら辺はキッチリ割り切れ、他人からみれば能力者ってのはそんなもんだ」

「兄さんの言う事はいつも過激なんだよ」


イギーから手渡された書類片手に、逆立てた髪型が特徴的な双角が獰猛な顔で言う。

それを疲れた顔の士郎が軽く諌める。


「ふん。事実を言ったまでだろうが」

「兄さん……」

「まったく、この二人は仲が良いやら悪いやら」

「先輩、悪いです」

「この兄の溢れんばかりの愛が解らんか⁉」

「わかんねー‼」


喧々轟々とコントかと見まごう話し合いを尻目に、そこから少し離れた応接セットでお茶を楽しむ女三人は世間話に興じていた。


「祝子町に出来たケーキ屋行ったらさ、コレが結構美味いのよ」

「舌が酒呑みの思惟が美味いって事は、そこ塩辛いとか?」

「んな事ないわ。甘さ控え目なのよ」

「なるほど、酒が効いたお菓子が多い訳か」

「何故ばれたっ⁉」


小柄でスレンダーな思惟の身体に対して、彼女と話している女性は対照的と言って良い程の男性にとって破壊的な程の肉体の持ち主であった。

手足は細く長く、かと言って女性らしさを象徴する胸は貧相ではなく豊満。

腰は作ったのではないかと疑う程に美しくくびれ、肌は白磁の様に滑らかで白い。

身体つきは雄の本能を刺激し屈服させる、正に完璧と言って良い程のモノ。

そう身体つきは、だ。


「でも、本当ーに、残念よねー」

「思惟、私の顔を見る度に言わないで」

「美人なんだけど、獰猛な美人ってのはねぇ。そう思わない、奈緒美ちゃん」

「しっ思惟さん、詩穂さん泣いてます‼」

「うっわ似合わない」

「思惟さん‼」


顔付きは整っている。

ただ彼女、櫛川(くしかわ) 詩穂(しほ)の見た目は凶暴なネコ科を思わせる様な容姿なのだ。

事実ハラハラと泣いている様に見えるが、見た目はライオンが機嫌が悪く唸っている様に見える。


「声楽部でソロで歌う時は綺麗に見えるんだけど不思議よね」

「ああ、私も思いました。部活動紹介で歌ってたの綺麗でしたっ‼」

「そう?」

「ただその色香に迷った男性部員の半分は恐ろしさに負けて逃げて、半分は女王様扱いをしてくると言うオチが」

「思惟さーん‼ ほら詩穂さん気にしないで下さい。ニッコリ笑って、せっかくの美人が台無しですよ」


思惟の上げて下げる、むしろ突き落とす様な内容に、詩穂の心はボロボロ。

慌てて奈緒美がフォローにはいるも、詩穂の泣き顔を見てウッと怯んでしまい再び泣かしてしまう。

思惟は笑い奈緒美はオロオロ、詩穂は大泣き。

はっきり言って場はカオスだ。

そんなグチャグチャになった場を正すのは意外な人物。


「コントはそろそろ終わりにしろ。話し合いを始めるぞ」

「あら珍しい。イギーが口を出すなんて」

「それ位はわきまえているさ。折紙、なんだその信じられないモノを見る目は」

「あはははは」

「まったく……詩穂、話し合いだ。泣き止め」


どいつもこいつも能力者はこれだと、イギーが肩を怒らせながらも詩穂の方へ向く。

イギーが声をかけた瞬間、泣いていた詩穂に劇的な変化が起きる。


「ははいっ、イギー先輩‼なんですっ?」

「第一戦研の代表で来てるんだから、しっかりしてくれよ?」

「はいっそれは十分な程に分かってます‼」


一発で泣き止んだ詩穂、その頬は少し赤い。

突然の身代わりの早さに奈緒美は驚くが、そこは読心系の能力者故か状況を素早く読み取ると思惟の耳に口を寄せる。


「あのーもしかして詩穂さんって…」

「そのもしかしてよ。まったく…」


簡単に言えばホの字である。

恋の力で簡単に泣き止む凄みのある女性、少しウザい。

それが弄られる原因なんだなーと、奈緒美は納得した。


「さて、詩穂も復帰した所で話し合いを続けるぞ。今、双角との話し合いの結果、戦術名は『ネオ・車懸り』となった」

「どーいう経緯でそーなった」

「その場のノリだ。でだ、今回は三箇所同時に仕掛ける。場所は秦山村」

「秦氏一族の本拠地ですね」

「能力者の戦闘服造りを担う、機織り一族か。イギー、メンバーはここの六人か?」

「編成は双角と士郎、俺と思惟、詩穂は遊撃だ」

「先輩? 霧島先輩はどうするんですか?」


士郎の言葉で、今まで壁に寄りかかり場を眺めていた霧島葵に視線が集中する。


「俺は何をする?」

「お前が入るとオーバーキルになるからダメだ。と言いたい所だが、防御に定評がある秦氏一族相手に、最強戦力を遊ばせる訳にはいかん。だからだ」


そこでイギーの視線が奈緒美に移る。

自分が戦力にならないのを知っていた奈緒美は、他人事と聞いていたのでいきなり視線が集中したのでアタフタと慌てる。


「えっ私? えっえっ⁇」

「初心者の面倒みながら突入して頭を抑えてくれ」

「了解」

「ちょっ、イギーさん⁉」

「くれぐれも葵に相手を殺させるな? 頼んだぞ奈緒美君」

「エーッ‼‼⁇」


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