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第十七話 † 楔

  月の門




 ユースティア首都、宮殿の塔の天辺にユリュシアが立ち、その前にはジュエルの姿が見えた。空にいたティアは彼女をみて不敵に笑みを浮かべた。彼女の背後に現れた魔法円から二対の翼の天使ヴェルス・アシュタルテが姿を現した。

 ヴェルスが剣を振るい、込められた魔力は疾風の如く敵陣を切り裂いた。砂塵が風に流されて、収まった後には魔族の肉塊がそこかしこに散らばっていた。

 突然に上空から三本の光の柱がおりてきたかと思うと周辺の敵を殲滅していった。その一つがヴェルスの傍に落ちて爆発した。だが、ヴェルスは無傷だった。閉じた目を少しだけ開くと、砂塵の中、目の前にはユリスがいた。彼女の張った障壁が直撃を防いでいた。

「申し訳ございません、私が至らぬばかりに…」

 ヴェルスは彼女に手を上げたが、彼女に非があったわけではない、それなのに彼女は自分が至らないと言った。他の女神達の前で手を上げたのだから彼女にとって辱めであり、使えないと言っているようなものだ。

「悪いのは私だ、お前は何も悪くない」

「私は貴女様についていきます、ですから私を捨てないで下さい…」

「捨てるものか…。リム、いるんでしょう?監視任務を解きます、ユリスを守りなさい、死ぬ事は許しません」

「心得ました。」

 リムは塔の陰から姿を見せると不敵に笑った。リムが最初に受けた命令は『ユリスを監視しろ、背いたら殺して構わない』だった。ここにきてユリスが裏切らないと確信を得たのだろう、リムはそれが少し嬉しかった。

「我らの目標は月の門だ」

「はい」




 魔導鏡を通してティアリスの指示がとぶ、アディル達は指示通りに城門や、城壁、軍事及び政府機関の入っている建物を“ラグナロク”で狙い撃っていく、退路を絶つように外側から中央議事堂へ向かって範囲を狭めていった。

 魔族の中でも翼を持つ一部の者達は上空へ逃れてくる、ティアリスは上空から彼らに襲いかかった。その漆黒の剣は敵を寄せ付けず、近づく者は弾かれて堕ちていく、空中では自由に飛びまわることのできる天使達のほうが圧倒的に有利だ。その時、アリスは下から光の筋がティアリスを目掛けて飛んくるのが見えた。近くにいたアリスがその槍を剣で弾くと、ティアがそれを掴み取った。その槍には見なれない文字が刻まれていた。

「東方の天使か…」

ティアリスは目を凝らして下を見る、微かに白い翼が見えた。

「アリスは魔族を排除しろ、私はあれを殺る」

アリスはティアに従って降下し、ティアはその天使に向かっていく、天使はこちらを見て槍を片手に握っていた。その目に恐れと言うものは無かった。戦う理由はないが、やられたら三倍にして返すのが礼儀と言うのがティアだ。アリスが斬りつけると天使は交わし、そこへティアリスの剣が襲いかかる、天使は降下して剣を交わした。近づく魔族を剣の一振りで弾き飛ばす。

「うるさい魔族ね…、しばらく黙っていなさい…」

 アリスが手を地上に向けて翳して呪文を唱える『エシュアイテ シャイル』対魔障壁、それは近くにいた魔族を弾き飛ばしていった。

東方の天使は態勢を整えるとティアリスを槍で突いてくる、狙いはティアリスのようだ、だが、ティアリスはそれを軽く交わすと、身体を翻して漆黒の剣を天使の首に当てた。

「何故魔族の下で動いている」

「私の所属は解放軍」

ティアリスは天使をじっと見る、剣を彼女の首からそっと離した。彼女が携えていた剣を抜くと同時にティアリスに斬りつけた。剣が右下から迫る、その剣をアリスの剣が弾き飛ばした。

「どうして本気を出さない」

「同族殺しは禁忌」

「同族?…何故我らの領域を侵す」

「侵している訳ではない、悪しきものを広げている者を止める為に来たのだ。」

 ティアリスに対してどこか怒りの篭もった口調で言い放つ、ティアリスの落ち着きはらった様子は変わらない。

「他に言いたい事はないのか?東方の天使」

「私にはレイミアという名前がある…」

 そう言って東方の天使がティアリスからそっと離れると、アリスが二人の間に入った。

「邪魔をすれば容赦なく斬る」

 アリスの徒ならぬ雰囲気に東方の天使は怯んだ、目的の為ならば阻むものは全て斬り伏せる、そしてそれを躊躇しないだろう。東方の天使は槍を握りなおしアリスに斬りかかった。剣で受けるが槍の重さには耐えられず受け流すようにして懐に入ると剣先を喉元に突きつけた。

「クッ…」

 東方の天使の表情が歪む、動けば剣先が触れそうだ。

「チェックメイト」

 アリスがニヤリと笑うと剣がレイミアの背後から翼を貫き、右肩を斬りつけていた。アリスは正面にいる、では誰が…、振り向こうにも動けなかった。

「遅くなりました…」

 闇にまぎれて現れたリリスはレイミアの背後から彼女の羽根を刺して動きを封じたのだ。

「まさか…」

「そうよ、私が前に出たのは貴女の注意を引くため」

 リリスが剣を抜くとレイミアは落ちていった。それで死ぬことは無いだろう。

「ま、偶然だけどね」

 アリスは笑いながら言った。

「頃合か、一旦退きます」

「ユリシア達を見殺しにするのですか」

「死にはしない、彼らは神の命令で動いている、それに私達にはやるべき事がまだある」

 ティアの命令で帝国軍は後退した。



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