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第十二話 † 孤城

  神罰を下す者






 黒の天使に槍を突き刺した兵士は怯えていたが、震えるような声で喜びの声を上げていた。


「や、やった、、やったぞ」

兵士は狂ったように二人で喜んでいた。

「そう、そんなに死にたかったの、喜ぶなら相手を殺してからにするべきよ、『シャイルディフェスト エンヴェセイス』」

ジークヒルデは二人の兵士を魔力で弾き飛ばす、二人とも壁にぶつかって血を吐いて倒れた。自分の背中に刺さった槍を引き抜く、それと同時にわずかな血が床に落ちた。だが傷は既に回復している。

「見逃して差し上げたのに残念です、天使がお前達如きに殺されると思うか…」

そう呟いてその場を離れ、王のいると思われる玉座の間へと足を進めた。足音が宮殿の廊下に響いた。ほかの兵士は何処へ行ったのか、宮殿に人の気配はない、王の間に近づくにつれて血の臭いが強くなってくる、人間の血の臭いだ、王の間に近づくにつれてきつくなる、すぐに王の間に着いた。



 衛兵はおらず扉は重く閉ざされている、手を触れるが開く気配はない、「壊すしかないか…」扉に手のひらを当てる、バシッと電流が流れた感覚に手を引いた。「結界か…」扉に触れないように手をかざす。

「闇の劫火に焼かれるがいい、、『ジェルド エフェラ ダルク』」

だが、闇の炎は扉に傷一つけておらず、扉の周りが焼けただけだった。魔導鏡を見る、一人で行くと言った手前、リリスに助けてもらうのは癪だ…

「何ボーッとしているの」

 リリスがいつの間にか立っていた。

「いつの間に…」

「天使を本国へ送るのに手間取ってね、何かが干渉して転移魔法陣がうまくいかなかったのよ。」

「一人でいいと言ったのに…」

「一人で行かせたら私がティアリスに責められるんだから…」

リリスは壁に手をかざすと呪文を呟く、壁が崩壊し中に入れるようになった。言葉がでなかった。

「扉だけ封印するなんて頭が悪いわね」

「どうして分かった」

「細い事は後で、大公のお出ましよ」

大公が暗い王の間に一人椅子に腰掛けている、踏み入ると足下に何かが転がっている、死体だ、部屋中埋め尽くしていた。

「ようこそ、アステリア帝国の悪魔達。アステリアも共に滅びるが良い」 

 ジークヒルデは大鎌を握り締めた。ここで死んでいるのは兵士ではない、非戦闘員だ、武器も持っていない、ベイン大公国の文官や民間人も混じっているように見えた。

「貴様がやったのか…」

「これはお前達がやったのだ、世界はそう見る、悪魔の言葉と我々人間の言葉、世界はどちらを信じるかな。」

大公は馬鹿笑いしている、ジークヒルデは震えていた。黒の天使の言葉など誰が信じるだろう、このままでは天界はおろか神界からも人間への積極的な介入が始まる、そうなれば黒の天使は完全に消滅するだろう、だがリリスは大公を嘲笑う。

「そうよ、私達は悪魔よ、だから何。大公、生き地獄を味わうか、死んで地獄を味わうか選びなさい。」

「何を言う、開き直りおって」

 開き直り、確かにそうだ、そしてリリスの言った言葉の意味、いや、真意が分からなかった。

「私たちが貴方を生かそうが殺そうが、地獄を見るのは大公、貴方です。」

「アステリア帝国は滅びる運命だ」

「大公、ティアリスの前で同じ事を言えるか」

「ああ、言えるさ、お前達は終わりだ、神は我々の味方だ」

 リリスが魔導鏡を取り出し大公に向ける、ティアリスの姿が映っていた。

『公王、相変わらず愚かよの、その程度のことでアステリアは倒せぬぞ。』

「何を言うか、悪魔ども、我らが負けたとしても、そのときはお前達も道連れになるのだ」

『貴様は神に背くことを三つ犯している、一つは生命の創造、二つ目は守護天使を錬金術の触媒として利用、最後に非戦闘員の虐殺。』

「生命?あれは人形、ただの人形、守護天使も虐殺も悪魔のやったことだ、世界は我々の味方だ、お前達の言葉など誰が信じるか!」

 ティアリスが不敵に笑っている、敵に弱みを見せるなという事か、違う、この二人の言葉は虚勢ではない、自信があるのだ、確かに負けないという確信があるのだ。

『本にお前の主は愚かよ…どこまで醜態を晒すか。ヒルデ、お前の拾ってきた猫はなかなか可愛いぞ、だがこいつは天界に返してやらんとな』

 猫、拾ってきた猫、天界に返す、一瞬分からなかったが先ほどの守護天使のことだった。魔導鏡には椅子に座るっている守護天使が映る、ティアリスは彼女の後ろに立つと天使を抱きしめ、公王を見て不敵に微笑む。

『この子を天界に返したら、貴方の身は破滅する、神の領域を侵した背教者としてね。』

「い、ステラ…、お前は死んだ…死んだ…死んだはずだ…」

 大公は頭を抱えてそう繰り返した。

『後少し遅ければ死んでいたでしょうね。ジークヒルデ、リリス、最終段階を終了させなさい。』

「はい。」

「リリス、私にやらせて…」

 最終段階、国王を倒し、公国を占領すること、ジークヒルデは大鎌を構えて公王に斬りかかる、フェイク大公はそれを交わして剣を抜くとヒルデに斬りかかった。大公の攻撃は鍛えられているものではない、振り回しているだけに見えた。避けるのも容易く、大鎌を持って動きを若干制限されているジークヒルデですら簡単に避けれる。余興にもならない、ジークヒルデはもう少し遊びたかった。だが時間はない、ヴァルトノアの軍勢は首都に到達していた。

 ジークヒルデが大公を壁際に追い込み大鎌を大きく振って斬りつけた。だが鎌は壁に突き刺さり、大公の首を斬る直前で止まっていた。

「聞こえるか、お前に殺された死者の声が、お前に相応しい“死”を与えよう。」

 ジークヒルデは後ろに飛び、部屋の中央で魔法円を宙に描いた。リリスはそれで何をするつもりか分かった。

「これで終わりよ…『ライズエライルイシュオル』お前達を殺した相手を喰らうがいい…」

 死者の蘇生、だが生前のようなものではない、人間がアンデッドと呼ぶものだ、そしてそれは足元を埋め尽くしていた死体に他ならない。アンデッドとなった人々は大公に襲い掛かる、大公の悲鳴、呻き声、やがて何も聞こえなくなり死者の群れはそこで動かなくなった。

「大公、貴方に相応しい“死”だとは思わないか、どうだ、己が手に掛けた相手に食われる気分は」

 ジークヒルデは亡骸となった大公を見て高笑いしていた。

「まるで悪魔だな…」

「リリスちゃん、後で可愛がってあげるからね」

 ジークヒルデが笑顔でリリスを見る、その言葉を聞いてゾクッとした。慌てて転移魔法円を発動させて姿を消した。ジークヒルデも一旦戦線まで戻り、各地で制圧戦を展開する計画を練った。




 ヴァルトノア王国軍の制圧している公国南部を速やかに制圧し、王国軍の北上を抑えなければならない。


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