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好きな人  作者: 千里
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アッコと同じ

雪太の治療が始まってから、雪太は前より私の病室に来る回数が減った。

病室に来たとしても、具合悪そうで、無理してきてる感じがした。

「陽子っ♪」

「ねっ?こっち来ていいの?なんか無理してない?」

「無理してるよ!無理してでも、陽子と話したいからさ♪」

「あたし、無理してる人嫌なんだ。」

「そう!じゃぁ、無理しない!だから、明日も来れたら来るよ。」

「あの、話わかってる?」

「おわかりですよ♪」

「...。」

「ねぇ、陽子ちゃん、陽子ちゃんって友達一人もいないの?」

「いない。」

「ゥソでしょ!俺聞いたよ。大切な友達がいたって...。」

「誰から聞いた?

母さんでしょ!くだらないこと話して!」

「あっ、でも聞いても悪い事じゃないじゃん!陽子も普通の女の子と一緒なんだなぁって♪」

「...そう。

でも、アッコは死んだよ。」

「...じゃぁ、俺がアッコちゃんっていう人の代わりになるよ!そうすれば普通の明るい陽子になる♪」

「あんたがアッコの代わりなんてできない。」

「それほど大切だったんだ。」

「大切だったよ...。」


雪太は少しずっとだけど私の中に入ろうとしていた。無理矢理ではなくて、気づくことのない。


それから3日後雪太が私の病室にこなくなった。

なんとなく心配になったので、初めて雪太の病室に行ってみた。

雪太の病室には雪太の小学校の友達が5、6人ほどいた。


「あら!陽子ちゃん、入口にいないで入りなさいよ。」


ポンと私の肩を叩いて、雪太とそっくりな笑顔でいた雪太のお母さん。

「あっ、別にいいです。ただしばらく私のとこきてなかったので、ちょっと様子見たかっただけです。

でも、元気みたいですね!」

「まぁ、今小学校の友達が来てるみたいだから。そっか、雪太の友達たくさんいるから、行きにくいか?」

「別に全然大丈夫です!元気そうで良かったです。」

「そう?じゃぁ、また後で来てちょうだい!ユキ喜ぶから!」

「来れたら来ます。」

雪太のお母さんは雪太にそっくりだ。喋り方とか、笑い顔とか。


「じゃぁ、私戻ります。」

「はぁい!後で来るんだよ!」

「あっ、はい。」


自分の病室に戻り、学校から出された学習プリントをしていたら、雪太のお母さんがきた。


「陽子ちゃん、ちょっといい?」

「あっ、はい...。」

「ごめんね!いきなり来ちゃって。

あっ!勉強してた?ごめんね!」

「あっ、別に大丈夫ですけど。なんかありました?」

「ごめんね、いきなりぃ!

えっとねぇ..その、雪太の病気のことなんだけどね。」

「...はい。」

「その、雪太、陽子ちゃんのこと好きみたいだし、陽子ちゃんには雪太の病気言わなくちゃいけないと思ってね!」

「....はい。」

「雪太の病気ね、白血病っていう病気なの。...結構大変な病気なんだけど、あの子なりに頑張ってるし、もしかしたら治るかもしれない!だから、陽子ちゃんには雪太と仲良くしてほしいの!雪太、陽子ちゃんを初めてみた時から、俺早く元気になって、陽子ちゃんに俺のかっこいいところみせるんだ!!って言っていたから。」

「...ごめんなさい。雪太君の病気は治らないかもしれないですよ。私の友達が雪太君と一緒の病気で死んでますから。」

「陽子ちゃんはこれから、そのことをいわないでほしいの!

おばさん、ユキを信じてるし、陽子ちゃんにもユキのこと信じてほしいの!お願い!」

雪太のお母さんの言葉の一つ一つが重く感じた。


「...できればします。」

「ありがとう!!

これからもユキをよろしくね!」

そういうと雪太のお母さんは出て行った。

『陽子,将来何になりたい?』


とりあえず、この病院を早くでたい...。


『そうだね!それが一番だね♪

あたしね、陽子と一緒の中学行って、一緒の部活入って、一緒に頑張りたいんだ!!

ソフトボールやるの!』


ちょっと勝手に決めないでよ。


『だって、あたしがそう言わないと何もしなそうなんだもん!』


アッコに言われなくても、やりたいことくらいあるわよ。


『何やりたい?』


絵描きたい。

美術部に入って、たくさんの絵を描いて、賞たくさんもらたうの。

『そっか。良かった!じゃぁ、あたしが校庭の外でソフトの練習してるところを、陽子はあたしの姿を絵にするの♪』



それがアッコとまともに話した、会話だった。


台風が近づいてきた、8月中旬。

雪太は今日も私のところに来てない。


「...雪太?」


しょうがなく、私は雪太の病室に行ってみた。


「おぅっ!

陽子ちゃん、おはよう。」


雪太は青いキャラクターのバンダナをしていた。

雪太の髪の毛はなくなっていた。


「最近こないけど、大丈夫?」

「心配?」

「正直心配...。」

「ありがとう。

陽子、俺の頭なんとも思わない?」

「バンダナが似合う。」

「そっか!

ありがとう。俺こんな姿、陽子に見られたら余計嫌われちゃうような気がして、陽子の病室行けなかった。」

「...そんなの気にしないで。」


元気な雪太が細く弱まっていた。


「ねぇ、陽子。

アッコちゃんってどんな病気だった?」

「なんで?」

「俺、アッコちゃんと同じ病気かなって、なんとなく思って。」

「だとしたら?」

「...俺それでも、そんなこと関係なく、とにかく治すから。」

「うん。」


雪太の病気を治すという気持ちだけは衰えていなかった。

ただ凄く、かっこよくみえた。


「雨すごくなってきたみたいだね?」

「そうだね...。」

「テルテル坊主つくろっか!二人で!」

「作ったって、外でないでしょ。」

「俺、雨より晴れが好きだもん!

ねっ!作ろ!」

「しょうがないねぇ。」


それから二人して、ティッシュのテルテル坊主を作った。

雪太の作ったテルテル坊主は、頭だけでかくて、顔いっぱいの笑顔のテルテル坊主を作っていた。


「変なテルテル坊主。」

「別にいいじゃんかっ!かっこいいだろ!俺のテルテルちゃん♪」

それから、雪太の病室の窓に頭のでかいテルテル坊主と頭と体も小さいテルテル坊主をぶらさげた。

仲良く肩を並べたテルテル坊主。


「陽子ちゃん、

俺陽子ちゃんが好きだよ。初めて見たときから。」

「うん...ありがとう。」


私も雪太のことが好きだった。

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