彼の病気
雪太が入院してきて、一週間が経った。
雪太は毎日のように私の病室に遊びに来た。
「陽子!おはよっ!」
「おはよう。雪太君、あのさ、雪太君きてから、勉強が出来ないんだけど!」
「ごめんねぇ。でもオレ、退屈でさぁ!初めにこの病院で話したの陽子だからさ。」
「あたし以外にも、入院してる子たくさんいるじゃん。その子たちとお喋りすればいいじゃん」
「だってオレより年下ばっかだもん!同い年は陽子しかいないし。それにオレもうすぐ、治療がきつくなるらしいしさ!」
少し雪太の顔が暗くなったような気がした。
「ねぇ、陽子の病気って何?」
「あたしの病気は...心臓の病気なんだって。だから、いつになっても治らないんだ。」
「...やっとちゃんとしゃべってくれた!」
雪太がいきなり笑顔になって、大きな声を出したから、少し驚いた。
「何!?いきなり!あたしの話まともに聞いてないじゃん!」
「ごめん、ごめん!だっていつも、そう..とかうん..とか、ひどい時はごめん今話かけないでくれる?とかしか言ってくれないからさ!」
「ぁあ、そっか。ごめん。今日が最初で最後かもねぇ。」「そんなこと言わないでよっ!陽子チン♪」
そういうと雪太は変顔をして、私を笑わせた。
「ふっ、っふふ。」
「やっと笑ってくれたぁ!陽子ちゃん全然笑ってくれなかったもん。俺超うれしぃ♪でもぉ..陽子の笑い方ってちょっとぎこちないね!」
「...あっそ!ぢゃぁ、一生あんたの前では笑わないから!!」
「ごめん、ごめん!ちょっとからかってみただけだよ!本気でそんなこと思ってないからね♪」
雪太の明るさは、私の気持ちに太陽があたってるような感じがした。今まで同い年の子と話していたことはあるが、ほとんどの子は無理矢理元気なふりして、不自然で、私はこんな無理矢理なことはしないとずっと思っていた。
「雪太の病気は何?」
「俺の病気?
俺まだわかんないんだぁ。これから検査するらしいけど、それがかなりきついらしいよ!まいっちゃうよな!」
「そう...まぁ、頑張って。」
「何?それだけぇ??俺もっと心配されてぇなぁ。」
「病気もわかんないのに心配するわけないでしょ。」
それから、少したって雪太の検査が終わり、雪太自身も自分がなんの病気かを知ってもいいころなのに、雪太は病気を知らなかった。
「こんにちはぁ♪陽子チン!」
「おはよ。って、あんたあたしの病室来ていいの?病気もわかって、治療も始まってるんじゃない?」
「始まってるけど、きついんだよなぁ、治療。昨日なんかゲボしちゃったよ!」
「...そう。」
「何?心配してんの?
大丈夫だよ!俺どんな治療でも頑張るし、まだ病気はわかんないけど、とにかく治してみせるよ。やりたいこといっぱいあるし!」
『陽子、あたし絶対病気治してみせる。陽子一緒に頑張ろ。そしたら、一緒の中学行こ。』
なぜだか、アッコの言葉を思い出した。
「わかんない病気になに強気になってるの?完璧治るなんて、言いきれない。
あたし見てみなよ!いつになっても治らないじゃん!!
頑張ったとしても、治らないもんは治らないよ...。」
「...。そう、じゃぁ、陽子ちゃんはずっとこの病院にいればいいじゃん。俺は治すから。陽子ちゃんに病気が治らないって決めつけないでほしいなぁ。陽子ちゃんみたいな弱虫に!俺は治すからな!」
初めて見た雪太。
怒ってる雪太。
「...ごめん。」
「あっ、別に誤らなくてもいいよ!ちょっと強く言いすぎたね。俺こそ、ごめんね!
...ぢゃぁ俺気持ち悪くなってきたからゲボ吐いてきまぁす♪」
いつもの雪太に戻って、自分の病室に戻って行った。
さっき、雪太に言った言葉を揉み消したい。弱虫な自分を潰したい。そんなことを思ったら、止まらず涙が溢れてきた。
悔しくて、自分がすごく嫌で。
それから、一週間後、雪太の病気がわかった。
アッコと同じ病気だった...。