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好きな人  作者: 千里
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浅田雪太

赤ちゃんの頃からずっと病院で育ってきた。

先天性の病気で、かなりの重い病気らしい。

保育園に行ったことがあるのは、指で数えられるくらい。

当然、友達はいなかった。

だったら、初めから通んなきゃいいのにって、母親と父親に対してして小さいながらずっと感じていた。

そんな母親と父親は、私に太陽のように元気で明るい子になってほしいと、陽子という名前をつけた。

名前と反対の状態で産まれてきてしまったのが、凄く苦しかった。

病院でずっといたので、ナース全員の名前も医者全員の名前も知っていた。

自分と一緒で産まれつき病気にかかっている子供がいた。

友達といったら、その子たちくらいだ。 この病院を去る子といったら、完璧完治して退院していく子か、大人になれず、自分の夢が叶わず生きていくことができなかった子のどちらかだ。 その中で私は、早く元気になりたいとか、素敵なお嫁さんになりたいとかいう夢をもつことができなかった。 彼がこの病院にきたのは、私が小学校4年生の頃だった。 その頃の私は、学校に行けなかった毎日がとても退屈で、退屈で...それでとても苦しかった。 「母さん、凄くきもちわるいんだケド。」

「またそんなウソをつく!いつもそんな弱音みたいなこと言ってると、いつになっても治らないわよ。」

母さんは私の病気が治ると信じている。いつ治るかもわからない、死ぬかもしれない病気なのに...。 「じゃぁ、アッコはなんであんなに強気でいたのに、死んだの?」

「...アッコちゃんは頑張ったのよ!あんたとは違って、頑張ってたわ!アッコちゃんは...」

「でも、アッコは死んだ...」

アッコは小さい頃からの友達で、私と同じくらい重い病気だった。とても明るくて、看護師になる夢を持っていた。アッコが死んだのは去年の冬頃だった。 「アッコちゃんは頑張ったんだから、あんたアッコちゃんの分まで生きなさい。」

そういうと母さんは悲しそうな顔をして、ベッドのとなりの花瓶の水を取り替えに行った。 「カワムラヨウコちゃん?」

病室の入口に背の高い、年上くらいの男の子が立っていた。 「誰ですか?」

「あっ、ごめん!いきなり声かけて驚くよね。俺、今日から入院する浅田雪太。変な名前だけど、よろしくね♪」

そう言いながら、変な顔をした。 なぜだか、私はアッコを思い出した。 「ユキタくん?ごめん、あたし今母さんと喧嘩して機嫌悪いんだ。だから...」

「あっ、母さんってさっき花瓶持っていった人?挨拶してこよっと!」

そう言うと、雪太は小走りで母さんのいるところに行った。 しばらくすると、母さんと雪太と雪太のお母さんらしき人が病室に入ってきた。 「陽子、雪太君とはもう挨拶したんだよね?あんた、仲良くしなさいよ、同い年なんだから。ねっ?雪太君」

「あっ、はい!よろしくね陽子ちゃん♪」

雪太はまた変な顔をしながら私に挨拶をした。 雪太はどこかアッコに似た、明るい人だった。

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