カルビ・ロース・たん! 〜炎上上等!、そして伝説の炭火覚醒〜
しいな ここみ様主催の【やきにく短編料理企画】の一品です。
また本作は、多田笑様(清坂正吾様名義)の短編 『歓迎会で焼き肉に連れていってもらったんだけど……』 に登場する、
「カルビ、ロース、タン……好きすぎて『カルビロースたん』ってキャラクターまで作れそうなくらいだ」
という一文を読んだ瞬間、
「ピキーーーンッ!」
と頭の中で三人が歌って踊り始めてしまった結果、生まれた作品です(笑)(*´艸`*)←おひ
原作者様には事前にご相談し、快くご了承をいただいたうえで執筆しております。
原作への敬意と、焼き肉への愛情を、炭火でじっくり焼き上げました。
どうぞ肩の力を抜いて、お召し上がりください。m(_ _)m
──今、軌跡を振り返ろう。
☆第1話「アイドル、網の上に立つ!」
『焼き肉界の3大アイドルユニット!』という華々しいキャッチコピー!!!
…とは裏腹に商店街のライブ。
通りすがる人々はチラリと目を向けるだけで、誰も立ち止まらない。
チラシは配っても風に舞い、楽屋裏で三人は身を寄せ合って泣いた。
コリッとしたクールな瞳に涙を溜めながら、たんたんが二人の手を強く握る。
肉汁は、まだ止まらない。
誰も見ていない路上に、三つの熱だけが確かに灯る。
カルビたんは
「じゅわ〜っ! カルビスマイル」
ロースたんは
「とろけるロース・ハート」
たんたんは
「コリっとたん・スラッシュ」を
どんなに小さな網の上でも、三人は全力だった。
――伝説は、ここから始まった。
☆第7話「レモンは裏切らない」
ライブ帰りの楽屋。
焼肉弁当を前に、カルビたんが何も考えずにレモンを絞ろうとした瞬間、たんたんがその手を止めた。
「信じられない。全部にレモンをかけるつもり? 生焼けにもほどがあるわ。──レモンはただの飾りじゃない。それぞれの脂の融点を、酸味で完璧な黄金比に引き上げる聖水よ。それを無差別に振りかけるなんて、私は認めない。ロースの甘みも、カルビのジューシーな脂の旨味も、一瞬でレモン一色に染まって死んでしまう。このレモンは、私が預かるわ!」
二人と衝突し、飛び出したたんたんだった。
夜の雨に打たれながら、手の中のレモンをじっと見つめる。
「私はただ、みんなの一番美味しい瞬間を守りたいだけ……。タレの濃厚さにも、塩のシンプルさにも埋もれないように、私はずっと酸っぱくて、尖って、クールでいなきゃいけない……だって私は、タンだから。本音を叫ぶための部位だから!」
だが、ライバルユニット「鉄板☆グリドルズ」の猛攻に押される網の上。
カルビたんとロースたんが叫ぶ。
「私たちは、たんたんのレモンの強さが大好きなんだよ!」
差し出された特製レモンに、たんたんの瞳が熱くなる。
「!?……分かったわ。私の酸味は、もう二人を殺すものじゃない。二人の旨味を、限界まで引き上げるブースターとして使う。必殺――
──黄金色のレモン果汁が、一直線に鉄板☆グリドルズを貫く。
「目が!? 目がぁぁぁーーっ!!」
視界を奪われたローラースケートがコリッと急制動をかけられ、
「止まっーー!?」
ガシャーン!!
全員が綺麗に団子になって鉄板へ突っ込み、
「たんたん!」
振り返る間もなく、カルビたんとロースたんが飛びつき、三人はぎゅっと抱き合う。
「……ふふっ」
たんたんは少しだけ照れくさそうに笑い、レモンをそっと掲げた。
「やっぱり、三人で焼くのが一番ね。」
クールな仮面の奥にある、お肉への不器用な愛と優しさが弾けた、伝説の回だった。
☆第12話「カルビスマイルは誰のため?」
『安い肉なんだから』
その一言が、幼いカルビたんの心を何度も焼いた。
だから彼女は誓った。
誰よりも、人を焼き上げると。
「大丈夫、私は脂身だもん。みんなが喜んでくれるなら、溶けるくらいでちょうどいいの!」
安価で誰もが頼める『大衆の味』としての重圧に苦悩し、自身の身を削り、激しい煙を上げて放つ──
──神展開にファンの涙腺が決壊。
円盤売上が3週連続1位を記録。
当時のギャルが一斉にポーズを真似し、大ブレイクとなった、1クールの最高到達点。
★中盤ダイジェスト:網の上の軌跡★
☆第18話「塩か、タレか。それが問題だ」
「高級なサシを持つ私と、みんなのカルビ、引き締まったタン……私たちが交わるタレや塩なんて、最初からなかったのよ! ユニットは、今日で解散よ」
自身のA5ランクという血統ゆえの孤独に苛まれ、静かに引退を告げたロースたん。
しかし、名門『炭火七輪学園』の濁煙に呑まれながらも、メンバーの熱意によって自身の「真の甘み」を解放した涙の──
──輝きに全視聴者が悶絶。
全国の焼き肉店で塩派とタレ派の論争が再燃し、網の下は肉汁の海と化した。
☆第24話「タンは最初か最後か」
「最高のライブは、一曲目で決まる。焼肉も同じ。」
ライブの打順を巡り、先鋒としてのプライドを賭けたたんたんの単独の戦い。
「最初の一枚は、希望の味だと教えてあげる。」
──放送翌日、日本中の焼き肉店からタンが消えた。
☆第33話「ホルモンは噛むほど強くなる」
最終決戦前夜。
過酷な試練を、飲み込まずに耐え忍ぶことで旨味へと変えてきたと語る3人の姿に、視聴者も三十分間、ハンカチを泣きながら噛み続けた。
☆★☆最終(第34)話☆★☆
『いただきます……そして伝説へ』
──あの日々があったから、今がある。
伝統の遠赤外線を重んじる『炭火七輪学園』、圧倒的な熱伝導率でステージを急襲する『鉄板☆グリドルズ』。
幾多の強豪との死闘を、幾度も潜り抜けてきた。
「塩こそ肉本来の味」「タレこそ焼肉の魂」
――決して交わらない二つの信念で、ユニット解散の危機にすら直面した。
噛み切れない苦難を、それでもじっくり噛み締め、旨味に変えて、彼女たちは強くなった。
そして今、彼女たちはついに、国内最大のドーム会場のステージに立っていた。
『焼肉を愛する日本のみんな、本当にありがとう! 私たちがナンバーワンだーーっ!』
三人が叫び、超満員の客席はペンライトで埋め尽くされ、熱気は最高潮に達していた。
『カルビたん! ロースたん! たんたん!』
まさに誰もが認めるトップアイドルの座に君臨した、その瞬間だった。
――ズガァァァンッ!!
演出用の火薬が突如として暴走し、ステージは一瞬にして激しい炎に包まれた。
「みんな、逃げてぇぇぇ!」
カルビたんの声も、激しい炎の轟音にかき消されていく。
ファンの悲鳴が響き渡る。
逃げ遅れた3人を呑み込むように天井が崩落し、彼女たちは炎の壁の向こうへ姿を消した。
──誰もが、彼女たちの命は潰えたと絶望した。
──誰もが、彼女たちの魂は転生したと願った。
──誰もが、あの輝かしいシズルは黒焦げの灰になったと涙した。
「目を覚ましなさいカルビロースたん! 私たちの遠赤外線すら寄せ付けない熱を放ったのは、どこの誰よ! こんな雑な火力で、あなたたちのサシが負けるわけないでしょう!」
まだ予熱を帯びる客席の最前列で、炭火七輪学園の生徒会長『備長まゆ』が、崩れ落ちた瓦礫に向かって叫ぶ。
「そうだ! アタシたちの熱伝導率に喰らいついてきた執念はそんなもんか! 泣くな、肉汁を絞り出せ! 煙の向こう側へ焼き上がってこい!!」
隣で鉄板☆グリドルズのセンター『速火素狄』が、焦げ付くステージを睨みつけ、拳を握りしめる。
静まり返った廃ドームに、再びファンの声が──奇跡が起こる。
黒く焦げた瓦礫の中心から、香ばしく、豊潤で、食欲を根源から揺さぶる「じゅわわわ〜〜〜」という至高の音が響いた。
崩れた瓦礫を激しく吹き飛ばし、立ち上る残炎の中からゆっくりと立ち上がった三つの影。
「私たちは燃え尽きたりなんてしない」
表面は香ばしく。
「炎上上等! 肉は命の輝き!」
中はジューシー。
火に焼かれたからこそ、完成した。
「私たち、私たちのまま完璧に焼き上がったのよ」
その姿は、デビュー当時の初々しい、あの生肉のピンク色ではなかった。
彼女たちの衣装は、本物の最高級肉の繊維でできていた。
真に肉の壁が彼女らの命を救ったのだ。
強火の試練を耐え抜いたからこそ得られた、表面はカリッと美しく香ばしい焼き色。
「みんな、もっと熱くなろう! 焼肉の未来を、私たちのシズルで焦がすんだ!」
そして内側からは絶望を超えた極上の肉汁が溢れ出る、神々しいまでのウェルダンドレス。
『やきにくーーっ!!』
3人が固く拳を掲げ、夜空に向かって叫んだ瞬間、胸の奥から放たれたまばゆい『炭火の光』がドームの天井を突き抜け、一鳴の轟音とともに世界中へ向かって爆発的に拡散していった。
──その光の波は、地球の全土を駆け巡る。
高級老舗店の備長炭から、下町の頑固親父が守るガスロースター、学生たちで賑わう食べ放題店の排気ダクト、さらには家庭で囲むホットプレートに至るまで、世界中の焼き網の下にあるすべての火種が、彼女たちの魂と同調して一斉に黄金色の輝きを放ち始めた。
──彼女たちは歌い始める。
パリのテラス席で肉を乗せた網が、ニューヨークの路地裏のバーベキューグリルが、ソウルのドラム缶ロースターが、彼女たちの歌声と同じ周波数で「じゅわわわ」と激しく鳴動する。
『これが……真の炭火力!!』
肉を焼くすべての火力が完璧な「適温」へと固定され、どんな素人が焼いても焦げ付かず、最高の旨味が引き出されるという、焼肉の歴史における文字通りの『奇跡』が地球規模で現出したのだ。
☆★☆ エピローグ☆★☆
その日以降、世界中の焼き肉店では、あの炎から生還した三人のライブ映像がモニターに流れ続けている。
「カルビ! ロース! たん!」
「カルビ! ロース! たん!」
客たちは誰もが液晶画面を見上げ、手にしたトングをペンライトのように振り回しながら、肉の爆ぜる音に合わせて全力で叫ぶ。
網の上で肉が最高の状態に焼き上がる瞬間、店内の熱気は最高潮に達し、見知らぬ客同士がジョッキをぶつけ合って涙を流する。
彼女たちは単なるアイドルを超え、『お肉の概念そのもの』へと至ったのだ。
世界中の焼き網が今日も赤く灯る。
その炭火のどこかには、きっと彼女たちの歌が宿っている。
カルビを焼く者にも。
ロースを焼く者にも。
タンを焼く者にも。
そして豚肉や鶏肉、焼き豆腐を焼く者にも。
網が熱を帯びる音。
炭が赤く染まる光。
トングは静かに肉を返す。
誰かが笑う。
「人類が生きている限り、私たちは焼き続ける」
――いただきます。
(カルビロースたん・伝説編 完)
【次回予告】
網の主役たちの新たな壁は、一癖も二癖もあるディープな男性アイドルグループが牙を剥く!
次回、新章開幕――
『ホルモンファイブ 〜網の裏の覇者たち〜』
──続かない!!
最後までご賞味いただき、本当にありがとうございました。m(_ _)m
一つのセリフから、ここまで大騒ぎな物語になるとは、書き始めた本人が一番驚いています。(*´∀`*)
改めまして、本作のきっかけとなった素敵な一文を生み出し、本作の執筆を快くご了承くださった、多田笑様(清坂正吾様)に心より感謝申し上げます。
原作をまだ読まれていない方は、ぜひ『歓迎会で焼き肉に連れていってもらったんだけど……』
https://ncode.syosetu.com/n6665mk/
もお楽しみください。
あの一言が生まれた瞬間を知ると、本作がより味わい深くなるかもしれません。(◡ω◡)
そして――
カルビたん、ロースたん、たんたんは、きっと今日もどこかの網の上で歌っています。
ご賞味下さり、ありがとうございました。♡(人≧▽≦)




