角と翼 ―ツノとツバサ―
最新エピソード掲載日:2026/03/08
中学二年生の木崎小春(きざきこはる)が、自分の身体の「変調」を自覚したのは、小学五年生の、ひどく蒸し暑い夏の日だった。
最初は、ただの湿疹だと思っていた。背中の肩甲骨のあたりが、むず痒くて仕方がない。鏡を覗き込んでも、そこには赤みを帯びた小さな突起があるだけで、母に見せれば「あせもじゃない?」と一蹴される程度のものだった。
しかし、その突起は日を追うごとに硬さを増し、形を変えていった。そしてある朝、彼女が目を覚ますと、枕元に小さな、黒い産毛のようなものが落ちていた。鏡に向かい、必死に背中を反らせて確認した小春は、その場で凍りついた。
そこには、蝙蝠(こうもり)のそれを思わせる、湿った質感の小さな翼が生えていた。
同時に、前髪で隠れた額の左右にも、指先ほどの硬い「しこり」ができていた。それは成長するにつれ、ゆるやかにカーブを描く漆黒の「ツノ」へと姿を変えた。
「――どうして、私が」
鏡の中の自分は、まごうことなき「怪物」の兆しを宿していた。
それから三年間、小春の日常は徹底した「隠蔽」によって構築されることになった。
最初は、ただの湿疹だと思っていた。背中の肩甲骨のあたりが、むず痒くて仕方がない。鏡を覗き込んでも、そこには赤みを帯びた小さな突起があるだけで、母に見せれば「あせもじゃない?」と一蹴される程度のものだった。
しかし、その突起は日を追うごとに硬さを増し、形を変えていった。そしてある朝、彼女が目を覚ますと、枕元に小さな、黒い産毛のようなものが落ちていた。鏡に向かい、必死に背中を反らせて確認した小春は、その場で凍りついた。
そこには、蝙蝠(こうもり)のそれを思わせる、湿った質感の小さな翼が生えていた。
同時に、前髪で隠れた額の左右にも、指先ほどの硬い「しこり」ができていた。それは成長するにつれ、ゆるやかにカーブを描く漆黒の「ツノ」へと姿を変えた。
「――どうして、私が」
鏡の中の自分は、まごうことなき「怪物」の兆しを宿していた。
それから三年間、小春の日常は徹底した「隠蔽」によって構築されることになった。