虐げられ子、助けようと計画を練っていた婚約者よりもイモをくれた使用人と結婚した件
「やあ、アーデル探したよ」
「ソレイド様?一体何?」
私はアーデル、今は王都の下町で洗濯物をしている。
ソレイド様は元婚約者かしら・・・
「今まで何をしていたのかしら?」
「うん。君を助けようと一生懸命に調整をしていたのだ」
少し、イラッと来たわ。何故、腹が立ったのか記憶を探る。
☆回想
良くある事かもしれない。
私の家はハイド家、中堅の伯爵家、だけど王宮にも出仕する家柄だわ。ある日、義母が来て義妹が生まれてから私の総領娘としての立場が無くなったわ。
だけど度を超していたわ。
「お義母様、お食事は?」
「罰として無しよ」
「一体何故・・・」
理不尽に罰を下されたわ。その時、一生懸命に婚約者に手紙を出したわ。
だけど、『少し待て』の一点張りだったわ。
・・・・・・・・・・・・・
「仕方ないだろう。貴族の屋敷は治外法権だ。勝手に連れ出すこと何て出来ない。慎重に計画を立てていたのだよ。
さあ、もう終わったことだし。結婚しよう」
ソレイドはニッコリ笑って手を出したわ。
私は振り払った。
「な。何で、貴族に返り咲くには私を迎えるしかないぞ。バラ園の変法も僕が尽力したのだ」
「嘘・・・」
ソレイド様は嘘を言っている。それはソレイド様とは全く関係のない話だ。
・・・・・・・
私があの家で生き残れたのは、ケビンのおかげだ。ケビンとは使用人、執事見習いだった。
「お嬢様、ヌイグルミでございます」
「ケビン・・・取り返してくれて有難う・・」
「お母様との大事な思い出での品ございましょう」
カゲで助けてくれた。
「お嬢様、おイモでございます。こちらでお食べ下さい」
「ありがとう・・」
今で思えば異常な話だ。後で聞いたら社交界で私は偏食で贅沢な物しか口にしない。極度にやせていると吹聴した。
「これ、アーデル、指を出しなさい」
「はい・・・」
これはケビンに言われたように鳥の骨を出した。袖口で隠す。顔はローブで覆う。
「まあ、やせているわね」
「はい、お義母様」
それからもひっきりなしに、婚約者に手紙を書いた。
やれ、父上が婚姻前の娘を迎えるとは・・・反対している。とか何とか。
そんな返信ばっかりだった。
「お嬢様、ソレイド様の返事は?」
「グスン、芳しくないわ。ケビン、ごめんなさい。いつも手紙のやり取りをお願いして・・・」
「良いのですよ。それよりも今日は鳥肉が手に入りました」
楽しい毎日だった。
だけど、ある日、ケビンは血相を変えてきたわ。
「大変でございます。ソレイド様のお父様が、馬鹿正直に、アーデル様を虐待しているのかと問う手紙を出しています。後、数分で旦那様達が来られます」
「ケビン・・・グスン、もう、いいわ」
「ごめん!」
私を抱きかかえて二階から飛び降りたわ。
「ケビン大丈夫?」
「ええ、少し、腰を打ちましたが大丈夫です。逃げましょう」
何とか逃げられた。
後で聞いたら、お義母様は熱した火鉢棒を持っていたそうだわ。
それからね。ケビンと一緒に住んだのよ。
「お嬢様、申訳ございません。この後の手立てを全く考えておりません」
「まあ、私も・・・刺繍しか出来ないわ」
2人でなんとか生計を立てたわ。ケビンは行商、私はハンカチに刺繍をする。
今でもケビンが助けてくれたことを感謝していますわ。
だって、あの後、宮廷でのデビュタントで私がいないことを陛下と王妃殿下が訝しんだのだから。
バラ園の変法は全くの偶然ですわ。
「何だと、いない・・・あのマリーンズの娘だぞ」
「私の親友の娘ですわ。この日を楽しみにしていたのに」
「えっ、お言葉ですが、マリーンズはただの女騎士ですよね」
「馬鹿者!詳しく話せないが忠義者だ!」
お母様は女騎士だった。賊に襲われた王妃殿下の部屋の前で決死で食い止めて。味方が来るまで耐え忍んだ。
その時の姿は剣を口でくわえ。オーガの形相で刺客たちを睨み付けていた。
腕を負傷し、それでも守り抜いた姿に感動した王妃殿下は友情を感じ。
刺客は王族に関するものだった。今はその家は誅殺されているが、これは極秘とされた。
お母様の活躍をしる者はごく少数だ。
陛下は王宮に役職のあるハイド伯爵の子息の婚約者に指定した。
夫婦そろって王宮に顔を出して欲しいとの処置だった。
しかし、私を産んだ後、流行病にかかってなくなったわ。
それでもお父様は馬鹿正直にお義母様の言っていることを繰り返した。
「アーデルは我が儘で偏食です。それでデビュタントに出せなくて」
陛下と王妃殿下は激怒したわ。
「ええい、それが本当なら王家の養子にして治療するぞ!とにかく姿を見ないことにはどうしようもない」
「そうよ。アーデルは私の大事な友人の娘、そのような言い草は聞きたく無いですわ」
それから、バラ園の変法という改革が行われた。養子縁組の子が跡を継ぐのを原則禁止。総領息子、総領娘の地位を強固にした。
貴族は家が途絶える事を嫌う。
お父様は、周りの貴族から疎まれ。爵位を喪失し、王宮で従者をしているそうだわ。
・・・・・・・・・・・・・
私がここまで話したら、ソレイド様はしてやったりと顔を決めた。
「父上がハイド伯爵にお伺いの手紙を出したから、君は家を出たのだ。結果として僕のおかげじゃないか?」
もう、無理ね。ソレイド様との婚約は王命だったわ。必死なのね。
「それに君は何故王宮の動きを知っているのだ?それは憶測じゃないか?僕の父上が尽力したに違いない」
「ソレイド様、それはね・・・」
馬車が来たわ。パカパカと止る。ケビンが顔を出す。
「アーデル、どうした?」
「まあ、ケビン、昔の婚約者が来ましたわ」
「そうか・・・後でゆっくり話を聞こう。今日も王宮に呼ばれているよ」
「はい」
王宮や私が出た後の屋敷の動きを知っているのは、陛下と王妃殿下にお会いしたからだ。
カゲが調べた調査報告書と王宮でのやり取りを教えて頂いた。
まるで私を友人の娘として扱ってくれたわ。
あの後、ケビンは成功した。実直な商品説明が気に入られたらしい。店舗を持つまでに至った。
実は今日も王妃殿下に呼ばれたのだわ。
ソレイド様を尻目に王宮に向かう。おそらく、ソレイド様の家は当主交代になるであろうと王妃殿下のお話だわ。
お父様はピエロみたいな服装で勤務している。しかし、もう二度と見たくないわ。
義母と義妹は・・・・私が受けた以上の罰を受けている。
閉じ込められて絶食だわ。
女の印も止ったそうだ。
もし、あのときケビンが助けてくれなかったら、考え無しでも動いてくれたから助かったのだ。
これからどうなるかわからないが、ケビンの素晴らしさを王妃殿下は分かって頂けると思う。
私がケビンに守られたのだ。今度は妻として旦那様として支えようと思う。
最後までお読み頂き有難うございました。




