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花岡夫妻の余生。最期は円満に。①

 うちのケアハウスは2人部屋もあるので夫婦で入居している人たちも多い。


 その中で花岡さんという夫妻がいる。3年前に入居した。


 旦那さんの勝之さんは88歳。性格は寡黙で「ザ!亭主関白!」って感じ。


 奥さんの祥子さん85歳。いつも穏やかでニコニコしていて職員にも他の入居者の人たちにも優しい。


 勝之さんのわがままにも「はいはい」と言いながらいつもわがままを聞いていた。


 でも祥子さんには入居した時から少し認知症が入っていたが、日常生活を送るうえでではほとんど支障はなかった。


 けれど最近は、朝食が終わり、職員が下膳していると祥子さんが食堂に来て


「あのー、朝ごはん食べてないんだけど。」と言い、さっき食べたことも忘れてしまうようになったり、


 30分前に話した内容を忘れてしまうこともあった。


 ある日勝之さんが事務所に来て


「祥子はやっぱりおかしい。昨日の夜中も夜ご飯を食べてなかったと言って部屋を出て行ったりするし、

 わしと話したことを何回も話したり・・・やっぱり認知症が進んでるんだろうか」


 たまたま事務所にいた看護師が


「そうなんですか・・・それは心配ですね。もし気になるなら病院に受診するのはどうですか?」と聞くと、


 少し沈黙になって


「・・・まぁ、考えてみるわ、昨日も宿直の人に迷惑かけてしもうて、今日も迷惑かけてしまうかもしれん。すんません、おおきに」と言って事務所を出ていった。


 その日の夜も夜中に祥子さんが部屋を出て館内を徘徊していたり、ご飯食べてないって言って宿直者の手間をとらせていた。


 そんな祥子さんに勝之さんはイライラし始めていた。


 祥子さんが忘れるたびに怒鳴り声が聞こえたり、ロビーでほかの入居者さんに愚痴ったりしていた。


 看護師と館長が相談した結果、祥子さんは勝之さんと病院に行くことになった。


 付き添いが自分だけじゃ不安だと言うので看護師も一緒に付き添いで行った。


 病院受診の朝、私は笑顔で祥子さんと勝之さんに「行ってらっしゃい」と言うと、


 祥子さんは病院に行くとわかっていないのだろう、笑顔で頷き、勝之さんは不安そうな顔で「行ってきます」と小声で返した。


 私も二人が病院から帰ってくるまで仕事しながら気になっていた。


 祥子さんは本当に優しい人で私と話している時は本当に認知症なの?と疑ってしまうくらいしっかりしているように見えて


 得意なカギ編みのコースターをくれたり、食器洗う用の毛糸スポンジをくれたりしていた。


「編んでると気持ちも落ち着くし、なんせ暇だからね^^もらってくれてありがとう」とニコニコ笑顔で私の肩をポンポンと叩いた。


 そんなことを思い出しながら祥子さんと勝之さんが帰ってくるのを待った。

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