ヘルメットじいちゃん②
次の日も後藤さん(ヘルメットじいちゃん)は私が朝出勤すると食堂前のソファーから
「月城さんよーい!!!おはよう!!!」と声をかけてきた。
私は普通のテンションで挨拶を返すと後藤さんはニコッと微笑んだ。
後藤さんは朝食が終わるとその足で私がいる事務所に来た。
「月城さんはおるかい?」
「はい〜」と私が返事をすると。
「おー!おったおった!今日の朝飯はまあまあじゃったわい!!そや!あんたに見てもらいたいものがあるんや」と言って
自分の上着のポケットから写真を数枚取り出した。
私はその写真を受け取り、写真を見ると若い頃の後藤さんと奥さんだった。
二人で旅行に行った時のだろうか、旅館の前で二人並び、奥さんは微笑んだ顔だったが、後藤さんは今と変わらぬ「へ」の時をした口でしかめっ面だった。
「えー!若いですね!奥さんもべっぴんさん!」
「そやろ!!わし男前やろ!!惚れたかぁ?」とニヤニヤした顔で私の顔を見た。
「あはは!!」と笑って流していたら後藤さんが
「嫁さんはなぁ、先に逝ってしまった。わしは仕事ばかりだったから嫁さんにはずいぶん寂しい思いをさせてしまった。子供もいなかったからなぁ」と
少し寂しそうな顔で写真に映る奥さんの顔を見ていた。
「そのツケが回ってきたんじゃろうな、嫁さんが死んだ後は今度はわしが寂しい。一人でおる時間がこんなに寂しいなんて思ってなかったわい」
「うんうん、そうですよね、寂しいですよね」と私が言うと
「でもなぁ!!月城さんがここに来てくれたから、もう!寂しくない!!わしの毎日が輝き出した!!」
ずいぶん大袈裟に言うじいさんだ。
そろそろ仕事に戻らなきゃと思っていた時、デイケアの職員が来て後藤さんをデイケアに連れて行った。
自分のデスクに戻るとコアラさんから
「後藤さん、いい人なんだけどねー、多分本当しつこくなるだろうね。まぁ適当に流してたらいいよ。自分の仕事も進まないしねー」と言われた。
この日は一日後藤さんはデイケアを利用していたので、朝以来、事務所に顔を出すことはなかった。




