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ヘルメットじいちゃん

 入社二日目。

 出勤するとまたじいちゃんばあちゃん達は朝食待ちのためロビーに集まって

 朝のニュースを見ていた。

 すれ違うじいちゃんばあちゃん達に昨日よりは元気な声で挨拶した。

 するとでかい声で

 「月城さん!!おはよー!!!!」と少し離れたソファーで座っているじいちゃんが手を上げながら私に挨拶してきた。

 私は驚いた。でかい声で挨拶したことにも圧倒されたけど、何よりこのじいちゃん、迷彩柄のヘルメットかぶっていた。

「えぇ・・・なんでヘルメット・・・」

 私はびっくりしながらも軽く頭を下げながら挨拶を返した。

 ヘルメットじいちゃんは昨日は会ったことないじいちゃんだった。

 新入社員の私のことがもう一日で噂で広がったみたいだ。


 朝礼を済まして自分の仕事を進めた。

 支払い業務したり、電話対応したり、コアラさんからの仕事の引き継ぎを受けたりとなかなか忙しくて

 午前中はあっという間に過ぎて昼時になった。

 昼食前になるとまたじいちゃんばあちゃんたちはロビーに集まってきた。

 するとまたでかい声が聞こえた。


 「ゴルァ!そこはワシの席じゃ!!どけぇ!!」

 

 びっくりした。

 他の職員さん達は聞き慣れているのか「あー、まただわ」みたいな感じで呆れた感じだった。

 私は気になってロビーの様子を見に行った。

 すると食堂前に置かれている白い立派なソファーのど真ん中に腕を組んだヘルメットじいちゃんが座っていた。

 口はへの字になり、少し離れたテレビで流れていたニュースを見ている様子だった。

 事務所にいる職員にヘルメットじいちゃんのことを聞くと


 ・名前は「後藤さん」、5年前に奥さんを亡くし、一人で生活は不安なので2年前に入居。

 ・前に転倒した時に頭を打ち何針か塗ったことがあるため、また転倒した時に頭を守るためにヘルメットをかぶっている。

 ・ここの入居者の中のボス的存在。(誰も逆らえないらしい)

 ・食堂前の白いソファー(3人がけ)は後藤さんの特等席。

 ・めちゃくちゃ頑固。看護師さんからの処置も自分が納得しないと処置を受けない。


 なかなか難しそうなじいちゃんがいるんだなぁ。と思った。


 入居者さん達の昼食が配膳され、続々と食堂へ入っていき昼食が始まった。

 入居者さん達の昼食が始まると私たちの昼休みも始まる。

 昼休み中でも電話が鳴るので昼食は事務所の自分のデスクで食べる。


 食堂から昼食を終えた後藤さんが出てきた。

 目が合った。後藤さんは私に向かってニコッと微笑んだ。

 私はニコッとして軽く頭を下げた。

 すると後藤さんは事務所を覗き「月城さん!今日の昼ごはんはまずかったでー!ガハハハハ!!!!」と笑って消えていった。

「謎・・・」と思いながら私は昼食を終えた。


 入居者さんたちは遅くても13時には昼食を終える。昼食を終えた人たちは各々自分の部屋へ戻って昼寝をしたりする。

 14時ごろになると後藤さんが事務所にきた。


「月城さんはおるかね?」


「はい!どうしました?」と私が答える。


「あんた!べっぴんさん!!一生独身でおりなさい!!」


 私は思わず「は?」と言葉が出た。しかも私は独身じゃない。

 夫がいて、子供もいる。


「ガハハハ!!あんたみたいなべっぴん、なかなかおらん!!!ワシがあと30歳若かったらあんたを嫁にもらう!」


 すると他の職員の内田さんが

「ほらほら!後藤さん!月城さんが困ってる!口説かない!!」

 事務所内にいた職員がみんな笑っていた。


 私はどう答えるのが正解なのか分からずとりあえず笑って流した。


「ほんならな!月城さん!ワシはあんたに一目惚れしたんや!ワシが死んだらあんたに全財産を譲る!」


 このじいちゃん正気か?


「いや、結構です。」と答えた私がウケたのか事務所内の職員は爆笑していた。


「なんでや!ワシは子供もおらん!嫁ももう死んだ!金なら山ほどある!この施設におったら使い道もない!金が増える一方なんじゃ。」と後藤さんはヒートアップしていった。


「はいはい、後藤さん。そんなに詰め寄ると月城さんから嫌われるよ。」と言うと

 後藤さんは「ひえー、じゃぁ今日はこの辺で!さいなら!」と言って、食堂前の特等席のソファーに座った。


「月城さん、後藤さんから目つけられたね〜。頑固なだけあってだいぶしつこいよ〜。」


「えー、そうなんですか・・・。どうゆう対応したらいいか分からないです。」


「もう適当に流してたらいいよ。若い女の子入ってくるたびにこの感じだから。」と呆れながらも職員の内田さんが教えてくれた。


 あまり関わらない方が良さそうだな・・・。


 この日から後藤さんからのアプローチは続いた・・・。

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