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第五章:二十歳の境界線
一九八七年。僕たちが二十歳になった年。
彼女が病室に来る回数が、少しずつ減っていった。
ある日、彼女は瓶コーラを買わずに、待合室のベンチで僕の隣に座った。ポータブルラジカセからは、あの日のリサイタルで聴いた曲が、少し伸びたテープ特有の頼りない音で流れていた。
「私、結婚するの」
静かな告白だった。相手は、彼女と同じ「未来」を歩ける健康な人なのだろう。 僕は、彼女の指先を見つめた。そこにはもう、僕と繋ぐための熱は残っていないように見えた。
「おめでとう」
その言葉を絞り出すのが、僕にできる最後のアカペラだった。
彼女は泣かなかった。僕も泣かなかった。ただ、五時過ぎの無人の待合室に、古いポップスだけが空しく響いていた。
この作品はAI40%、筆者60%で書きました。
原案100%筆者。
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