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第二章:それぞれの日常
面会終了のベルが鳴ると、彼女は魔法が解けたように走り出す。
鈴鹿駅から乗り込む亀山行きの列車には、もう乗客はほとんどいない。彼女は一人、窓の外の闇を見つめる。亀山で乗り換え、さらに南の高茶屋へ向かう孤独な道程。
(明日、もし彼がいなくなっていたら)
そんな不安を振り払うように、彼女は暗い夜道で『赤とんぼ』の続きを歌う。
その頃、僕は病室に戻り、タカシたちに「作戦成功」の報告をしていた。
「よっしゃ! ちゃんと自分の足で歩いて行けよな」
戦友たちの励ましを受けながら、僕は一人、イヤホンで彼女と聴いた曲を再生する。
一九八五年。僕の日常は、彼女が明日もまた、あの「逆方向の列車」に乗って来てくれることを信じて、ただ呼吸を繋ぐだけの作業だ。窓の外、遠くで貨物列車の音が響いている。瓶コーラの泡のようにいつか消えてしまう恋だとしても、僕たちは今、この瞬間を確かに生きていた。
この作品はAI40%、筆者60%で書きました。
原案100%筆者。
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