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序章:再会の合図
一九八五年の秋。鈴鹿の療養病棟に夕食の準備の匂いが漂い始める頃、僕の心臓は少しだけ速く脈打ち始める。
午後四時半。病室の重いドアが静かに開き、亀山高校の制服を着た彼女が姿を見せた。
「ただいま」
彼女は真っ先に、僕のベッドの横へ駆け寄る。亀山から逆方向の列車に乗り、駅から走ってきたのだろう。少し乱れた呼吸と、雨の日の湿り気を帯びた彼女の匂いが、死線に停滞していた僕の時間を鮮やかに動かした。
「おかえり」
僕が答えるより先に、隣のベッドのタカシが「よっ、お姫様のお出ましだ」と茶化す。四人部屋の仲間たちは、彼女が来るのを僕と同じくらい楽しみにしていた。彼女が持ち込む外の世界の空気こそが、この病室の唯一の救いだったからだ。
「さあ、行ってきなよ」
仲間の温かい視線に背中を押され、僕はゆっくりと立ち上がる。まだ自分の足で歩ける。そのことが、彼女を安心させる唯一の贈り物だった。
この作品はAI40%、筆者60%で書きました。
原案100%筆者。
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