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9話

目を覚ます。

しまった。また気を失っていた。

毎回戦闘が終わった後、気を失うのはだめだ。

どこだここは。

不思議と、危機感は無い。

北欧風の部屋。茶色い木材に、黄色い明かりはなんだか落ち着く。

冬だったら、ここであったかいシチューでも食べたいな。

「起きたか。」

部屋の入口に誰かいる。ここの家主か。

「お兄さん、体は大丈夫か?」

とても優しそうな人だ。体はごついが。経験上危害を

加えてくる人じゃない。オーラでわかる。

「はい。ありがとうございます。」

「そりゃよかった。」

おじさんはそう言うと、俺に飲み物を差し出してくる。

俺は受け取り、お礼を言う。

「君があいつらを倒したのか?」

「あいつら?」

「銃を使うバイク乗りの集団がいただろう。」

あいつらも倒れたままだたのか。あいつらはどうなったんだ?

「はい。砂を使うやつには苦戦しましたけど。」

「そうか。」

おじさんは飲み物を置く。

「あいつらはこの郊外を仕切っていた悪党だ。みんな困っていた。

だから礼を言う。」

おじさんは頭を下げる。俺は何がなんだかわからない。

「いえ、たまたまですから。礼には及びません。」

おじさんは顔を上げる。

それから事情を聞いた。

もともとこの郊外は人が住んでいて、小さな名所だったらしい。

よくバイク乗りの人や車好きな人がドライブに来ていて、

飲食店も多くあってにぎわっていたらしい。

数年前、あいつらがここにきて、ここを支配したらしい。

観光客から金目の物を奪うにはちょうどいいとのことだった。

そして、町でその金をばらまく。

この郊外はよそから来た人はみんなが通る道。

またそいつらから金目の物を奪い、町で豪遊する。

それの繰り返し。最低なやつらだ。

「私は事情があってあまり人前に出れない。だが、もともとここにいた人たちから奴らのことを頼まれてね。迷っていたんだ。」

何か事情があるらしい。

おそらく、この人は相当強い。

その年でも鍛え抜かれた肉体、エネルギーの落ち着き様、そして、痛々しく刻まれた大きな顔の傷。

「俺はよそから来た警察です。事情があってここに来ました。」

人のことを聞くときは、自分のことから話すべきだ。

俺がそう言うと、おじさんは目を見開いて驚いている。

「君も、か。」

君も、と言うことは、このおじさんもか。

「あなたもですか?」

「そうだ。もうやめてしまったがね。」

「そうですか。お疲れ様でした。」

気の利いた言葉は出てこない。年的なのもあるのだろう。

「理由は聞かないのか?」

おじさんが言う。

「俺からは聞きません。興味はありますけど。」

「そうか。」

ははっと笑う。おじさんは一口飲み物を飲み、口を開く。

「聞いてくれるか?ここで出会ったのも何かの縁だ。それに、君には他の人とは違う何かを感じる。」

その目は鋭い。悪意はないのだろうが、何か見透かされそうな感じだ。

「さっきの件もそうだが、数年前にこの西地区は大きく変わってしまってね。実は私は元々西の支部の責任者だったんだ。昔は賑やかだけど人情溢れるいいところでね。

喧嘩なんかは日常茶飯事だったが、大概そういう奴らは熱いやつで、みんな終わったらお互い仲良しになるんだ。なんだかんだ、私はこの町が大好きだった。」

西地区はそんなイメージだ。ここは揉め事は多いが、愉快な人も多いらしい。なんだかんだいいところだって聞いている。まあこの人が警察の頭だったからっていうのも

あるだろう。頭によって、そこにいる人たちの雰囲気も変わる。

「だが、ある時から変わってしまった。その違和感に気づいていたんだが、思い切れず、あんなことに。」




ある時、北地区からわざわざここに事業を始めようと数名の青年が来た。

なんでもあるサプリを開発して、この西地区にも工場を構えて全国により届けたいとのことだった。そのサプリは人間に必要な栄養素全てが詰まっており、それを一日一粒飲めば、健康を維持できるとのこと。これを飲めば、病気になるリスクも下がり、すでに患っている人にも効果が期待できると。

私を含め、みんな賛同した。こんな若い子が、人々に貢献できるものを自分たちで頑張って作ったことを、とても尊敬した。

西地区総出で彼らのサポートをした。あっという間に彼らの工場は完成し、彼らもすぐにフル稼働で製品を世に広めていった。気づいたら、この地区の自慢にもなった。


だが、私は知ってしまった。彼らがそこで隠れて何をしているのかを。



夜間の製造はしていなかったその工場が、気づいたらいつも絶えず稼働していた。

気づいたら工場を頻繁に工事し、どんどん拡大され、当初の倍以上の敷地を

有していた。

そして、古くからある周りの企業が、そこに買収されていき、必要以上に規模が

大きくなっていっていた。


ある時、古くからの知人から相談を受けた。

彼らの工場で働いている親戚が、亡くなってしまったと。

死因は自殺。だが、そんなことをする性格でも、精神状況でも無かったということ。

だが、工事側は自殺との一点張り。しかも、海へ自ら飛び込んでとのこと。

そして、その海はサメなどの危険な生物が多く、遺体は原型を留めていなかった。

不審に思い、私は内密に工場を調べた。そこで明らかにおかしな工場の一部を見た。

だが、そこで黒いローブを着た男に襲われた。

西地区最強と言われた私でも歯が立たなかった。

やつは全ての能力、攻撃を無力化することができた。

証拠を押さえたかったが、それは叶わなかった。私はなんとか逃げたが、

後日、私の家族、直属の仲間の命を奪われた。全て事故死。

そんなことありえない。

明らかに不可解だった。

だが、私はそこで折れてしまった。

大切な人を失い、この仕事をする意味も見失い、生きる意味を失った。

仇を取りたいが、やつに恐怖してしまい、私は立ち向かえなくなってしまった。

私はそのまま警察をやめ、ここで隠居することにした。

何も感じず、ただ生きている。そんな日々が永遠に感じた。



おじさんは俺に話してくれた。辛いだろう過去を。

もし俺が逆の立場だったら?

きっと絶えられないだろう。

でも、このおじさんはきっといろんなものを背負って必死に戦ってきたんだ。

「すまない。初めてでこんな話をしてしまって。」

謝ることじゃない。そんな思いをしたんだ。誰かに縋るべきだ。でないと、本当に心が壊れてしまう。

「いえ。話してくれてありがとうございます。」

俺は頭を下げる。

「どうしてだか、君には何か特別なものを感じてね。なぜか話たくなってしまった。」

「老後は占い師とかにでもなりましょうかね。」

俺がそう言うと、おじさんは笑う。ウケたようだ。

「君はそんな冗談も言うんだね。面白い男だ。」

「初めて言われました。」

おじさんの笑いは徐々に引いていった。今度は、俺が話す番だ。


「実は俺、そいつらを捕えるためにここに来たんです。

すげえ偶然で驚いてますが。」

「そうか。やはりそれほどまでに奴らは今、全国で脅威なのか。」

「はい。でも、負ける気はありません。」


「私でも歯が立たなかったんだぞ?」

「なら、あなたを超えます。俺の方が若いですし。」


おじさんは眉をぴくりと動かす。怒りか、警告なのか、

あまりいい感情では無さそうだ。


「それに、俺には仲間がいます。尊敬できて、とても大切な。」


「私にもいたよ。」


「そして、」


あなたと違うところがもう一つある。


「俺にはあなたがいる。」


おじさんは何を言っているのか理解できていなそうだ。真顔で俺を見ている。


「俺は、人の一番大切なものは、想いだと思うんです。あなたとのこの出会いは運命だ。あなたの想いを俺が受け継ぐ。あなただけじゃない。俺は出会ったみんなの想いを背負ってやつらと戦います。想いは人を強くすると信じています。

だから、俺が奪い返しますよ。みんなのこれからの幸せを。」


俺がそういうと、おじさんは傷のない方の目から涙を流す。


「そうか。」


「はい。」


おじさんは俯き、片方の腕で頭を押さえている。

「君は、いい人だな。」

いい人。そういえば、最近になってちょくちょく言われるな。

「最近ちょこちょこ言われます。」

「ちょこちょこなのか。」

また少しおじさんが笑う。

「応援しているよ。陰ながらだが。」

「十分です。ここでこうして会えたんですから。」




「そういえば、今何時ですか。」

起きた時からこの人の雰囲気に飲まれていて考えもしていなかった。二人が待っている。

「今は昼の一〇時だ。」

待て。一〇時?俺らがここに着いたのは午後だ。

「今夜ですよね?」

「いや、君を拾ってから二日経っている。」

「二日!?」

まずい。何も連絡していない。てか寝すぎだろ、俺。

端末を取り出す、が、端末は壊れていた。結構頑丈なんだが、まあ仕方ない。

「すいません、俺いきます。」

「そうか。傷は癒えたか?」

まだ痛むが、そんなこと言っている場合ではない。

「大丈夫です。ありがとうございました。」

俺はそう言って起き上がる。

だが、そのまま倒れる。

「大丈夫か?」

これは怪我だけじゃない。なんだ?

「すいません、力が抜けて。」

おじさんは俺をまじまじと見る。

「君、能力は?」

「炎です。あ、あと雷がこの間目覚めました。」

それが原因か?この体の以上は。

おじさんは何か考え事をしている。

「初めて聞いたよ。二つの能力わ使えるなんて。」

「俺もなぜかはわかんないんですけどね。」

やはり、これは特殊なのか?

「戦闘経験は?」

急におじさんが質問してくる。

「訓練を除いたら、まだ数ヶ月です。」

「この間倒れていたが、俺はたまたまか?」

なんだ?

「いえ、強い奴と戦うとよくなります。」

「なるほど。」

うーん、とおじさんは何か考えている。

そうか。引退したとは言え、この人は元西地区最強。

何か学べるかもしれない。

でも、二人は?

無事なのか?

心配しているはずだ。

特に、光は。

でも、今のままじゃまた心配かけてしまうかもしれない。

守るためには、もっと強くならないと。

「おじさんの能力はなんだったんですか?」

「偶然だが、私は雷だ。」

ちょうどいい。最強の人から学べる機会なんてそう無い。

やはりこれは運命だ。

「おじさん、頼みがあります。」

「なんだ?」


「俺を鍛えてください。」

俺は頭を下げる。助けてもらってなお、無理なお願いなのはわかっている。


でも俺は強くなりたい。


「ダメだ。」

だめか。まあ、そりゃそうか。

「私の名前を覚えてからなら、いいだろう。」


「ありがとうございます!」

気のせいか、おじさんが嬉しそうに見えた。

「あの、お名前は?」

「一紫だ。君の名前は?」

そういや、俺も言ってなかった。

「蒼です。」

「蒼、か。」

おじさんは俺を真っ直ぐ見る。

「いい名だ。とても似合っている。」

「一紫さんもですよ。」

一紫さんは暖かく笑う。その笑顔でなんとなくわかる。

この人の懐の深さ、そして、みんなを包んできただろう暖かさが。

「これからよろしくお願いします。」

「やるからには、俺を超えるんだぞ?」

「もちろんです。」

俺と一紫さんは笑った。

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