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6話

「よし。それじゃあ行こうか。」

『はい!』

俺、月姫さん、光は合流し、西地区に向かう。

空は晴れ、雲一つない。風もちょうどいい。

「光、寂しくない?」

「大丈夫です!お別れじゃありませんから。」

やっぱり、光はこういう時しっかりしている。普段はあたふたしているのに。

「強いな。俺らもいる。何かあったらすぐ言えよ。」

「はい!ありがとうございます!」

月姫さんも微笑んでいる。心配してくれていたんだろう。


西地区まではここから新幹線で三時間。こう見るとあっという間だが、

距離で言うと八〇〇キロ離れている。他の交通手段なら倍以上の時間がかかる。

俺らは向かい合わせに座る。

「なんだか旅行みたいだね。」

「まあ、遠出という意味では一緒ですからね。」

光が席の前で戸惑っている。

「どうした?」

「いや、その、どっちに座ろうかなと。」

そんなこと気にしてなかった。今まで二人だったからな。

「蒼の隣じゃ狭いと思うから、こっちでいいよ。これからもね。」

「何かあった時、俺が動きやすい方がいいですしね。」

「わかりました!」

新幹線。何もないと思うが、今では状況が違う。俺のことはやつらに知られている可能性が高い。どこで敵が襲ってくるかわからない。

常に備えた方がいい。先頭になったら、俺がこの二人を守るんだ。一般人は二人がケアしてくれるだろう。

意識を集中させる。目を瞑ったら二人に寝てると思われるから目は瞑れないけど。

周辺にエネルギーの乱れは無い。だが、能力者では無い武装した者もいるかもしれない。気は抜けない。

「俺、起きてるんで二人眠かったら寝ててください。」

「私は大丈夫です!」

「それじゃあ遠慮なく。着いたら起こしてね。」

真逆だ。光も驚いている。

月姫さんは本音しか言わないし、変な気は遣わない。でも、俺は月姫さんのそこが好きだ。信頼できる。

月姫さんは持ってきたアイマスクにブランケットとフル装備で寝始めた。

日頃から各所にいろいろ連絡を取ったりしているから疲れているんだろう。

光は窓の外を眺めている。なんだか楽しそうだ。

「楽しい?」

ん?と光は俺の方を向く。

「はい!遠出するのが久しぶりなので。でも気を引き締めないとですけど。」

子供っぽいところもあるんだな。

「ずっと気張ってたら疲れるだろ。基本俺が警戒しておくから大丈夫だよ。」

「いえいえ!そうはいきませんよ!」

「いいんだよ。俺はやりたくてそうしてんだから。光には別のことで頼りにするから。」

「ありがとうございます。やっぱり、優しいですね。」

ん?そうか?みんなそんなもんだろう。でも、お世辞じゃなく、本音で言ってるのがわかる。

「ありがとう。光も優しいけどね。」

「そんなことないですよ。私は。」

どこか悲しそうな顔になる。ちょいちょい自分を卑下するんだよな。光は。

「俺には優しいよ。これは俺にしかわからないし、俺はそう思ってるから。

だからまあ、そんな否定すんなよ。」

いい子なんだから勿体無い。いいところいっぱいあるんだしな。

「ありがとうございます。」

少しの沈黙が流れる。無理に話す必要もないと思い、特に話題を振らない。

俺は窓の外を眺める。

「あのお。」

光が俺に話かける。

「ん?」

またモジモジしている。

「無理に話さなくてもいいよ?」

「いえ。蒼さんには聞いて欲しくて。」

「そっか。じゃあ俺も聞きたい。」

「はい。」

そこから光は自身の話を始めた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


私は基本属性には無い、希少な光の能力を持っている。小さい頃に覚醒した。

それがわかると、周りはみんな私を特別視するようになった。

まあどうしたってそういう人はいる。能力に目覚める人自体、人口の半分もいない。

それがそんな希少な能力なら尚更だ。親や先生は期待を。友達は羨ましがったり、嫉妬したり。でも、全然能力を使いこなせなかった。みんなよりも勉強して、特訓もして、この力を誰かのために使えるように。何日も、何年も。

でも、一向に変わらなかった。少し光を出せるだけ。例えると、灯りの代わりにしかならない。図鑑によると、昔この力で災害や悪い人から人々を守った人がいたらしい。とても強くて、優しい人だったって。同じ能力なのに、同じにできない。

次第にみんな私に呆れていった。ひどい時は、直接暴言も吐かれた。親はそんな私を見て、無理しなくていい、ありのままで良いと言ってくれた。

その言葉のおかげで私は救われた。無理に頑張るのはやめよう。

私なりにみんなの力になろうって。そう思って警察になった。今、毎日が楽しい。

でも、心のどこかでモヤモヤがずっとある。

過去の体験が、私を蝕む。自分に自信が持てない。こんな能力があるのに、

申し訳ないって。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


光は自身の過去の話をしてくれた。

話すのも少し辛そうだった。話す必要は無い。それでも話してくれたんだ。

なんだか嬉しい。


「でも、お二人に誘ってもらえて、本当に嬉しかったんです。少しでも、何か私が力になれるのかなって。」

胸が熱くなる。

こんな優しい子が幸せになれず、理不尽な悪意に遭うなんて間違っている。

「話してくれてありがとう。辛かったよな。」

「いえ!もう大丈夫ですから。」

気遣うな。弱音はきたきゃ吐いていいんだ。俺らは仲間なんだから。

「でも、そんな辛い目に遭っても、変わらず優しくいられたんだ。光は偉いよ。俺だったらグレてる。」

「いえいえ。流石にグレはしませんけど。」

「それに、辛いのは人それぞれだ。他人と比べる必要もない。それでも、光は前を向いて今日まで頑張ってきたんだ。俺は偉いと思う。」

「はい。」

否定するかと思ったが、光は頷いた。下を向いているから表情はわからない。

「よく頑張ったね。」

「うん。」

床に滴が落ちる。俺は光の頭を撫でる。

「じゃあ一緒にこの旅でいろんな人の力になって、胸張って帰ろうな。」

光は声に出さず、頷いている。これ以上、言葉はいらないか。

俺は上着を脱ぎ、光に掛ける。

「まだ時間かかるから、少し休みな。俺がいるから。」

ありがとう、と小さな声だが俺に届いた。

大丈夫。一緒に帰って、みんなを見返そう。



新幹線では特に何も無く、無事西地区に着いた。ここからさらに車で一時間。

それで一旦あっちの支部に挨拶に行く。

二人はずっと寝ていて、まだ寝ぼけている。

俺が運転をし、支部に向かう。二人は後ろで寝て起きてを繰り返していた。


あと二十分。開けたところを進む。海外映画に出てくるカウボーイの町みたいで砂漠みたいになっている。周りに何も無く、車通りも無い。

嫌な予感がする。車の中だと外のエネルギーの様子もわからない。

ん?

前方の岩陰から何かが光っている。

嫌な予感が的中した。

「起きてください。二人とも。」

俺は車を飛ばし、ドリフトをしながら別の岩陰に隠れる。

「どうしたの?」

「敵です。おそらく複数。このままだと、まず車をやられます。

この岩陰から飛ばせばここは突破できます。

この先は町に入るんで周りの警察もフォローに来やすい。」

「なるほど。」

月姫さんは俺が何をいうかわかっているようだ。光は頑張って状況を整理している。

「俺がここで敵を引きつけます。もし二人に危害が及そうなら、俺が守ります。」

月姫さんはやはりわかっている。光は心配そうな顔をしている。

「二人は先に行ってください。俺も必ず後から合流します。何かあったら連絡しますし、お二人も連絡してください。」

「ええっ。」

「了解。くれぐれも、無茶はしないでね。」

「了解。」

俺はシートベルトを外し、ドアを開ける。

「蒼さん!待ってますから!必ず無事来てくださいね!」

目が潤んでいる。でも、きっと頑張って堪えているんだろう。

「ああ。約束だ。必ず行くから。気をつけてな。」

「はい!」

俺は二人に合図し、車を出る。すぐに月姫さんが運転席に移動する。

「蒼炎、解放。」

二人をまずはここから逃す。

「蒼炎、無月。」

俺は中身の無い蒼い炎の球体を出し、広げていく。これはただの目眩しだ。

「今です。」

「了解。」

車は全速力で進んでいく。

振り返らない。

集中。新幹線での意味があったのか、周りの様子がいつもよりわかる。

攻撃が飛んでくる。させるか。

無月の炎をその攻撃に向かって放つ。

前はできなかったが、こういうコントロールもできるのか。第二の覚醒のおかげだ。

相手はおそらく四人。機動力はあるのか?ただの手荒い歓迎な気もするが。

そうだ。端末にバイクが登録してある。俺はそれを転送し、それで移動する。

まずはこっち側の敵から。岩陰に回り込む。いた。二人。

だが、相手が何かのスイッチを押す。同時に、砂漠が爆発し、砂煙が舞う。

くそ。目隠しか。めんどくせえ。ちゃんと備えてやがる。俺はアクセルを回し、

その中を突破する。すれ違う。相手はここには二人。

パアンッ!パアンッ!

やはり武器は銃。

俺はバイクを回し、後を追う。相手は銃を撃ち混んでくる。

能力が付与された武器。これは俺にも効く。

中、遠距離は不利だ。

俺のバイクに施された特別な機能。俺の炎を生かし、高速移動ができる。

ブオオーーン!

一気に並ぶ。

相手は反応できていない。

炎を相手二人のバイクのタイヤに放つ。

一瞬でタイヤは燃え、走行不能になり投げ出される。

「くっ!」

この二人は能力無しか。あったらここまでに何かしら使用しているはずだ。

「蒼炎砲。」

俺はそれぞれに炎を放つ。二人はこれで戦闘不能。念の為銃も壊しておく。

あと二人。

距離は離れている。ここで倒せば月姫さんと光は大丈夫だろう。

俺はバイクを飛ばす。

岩陰から動いていない。気付いてないと思っているのか。

こっちから仕掛ける。

俺はドリフトでバイクを傾け、下から炎を放つ。

二人はこっちを向いている。流石に見られていたか。

でもこの角度からの攻撃は想定していねえな。

「蒼炎砲。」

一人には命中。一人は逃した。

俺はアクセルを回し、バイクを起こす。そのまま俺の炎で高速移動。

バイクでそのまま的に突進する。

ガキンッ!

俺のバイクは警察の特注。そんなすぐには壊れない。

相手のバイクは破損。もうバイクはいらない。

「転送。」

バイクは一瞬で端末で転送される。そのまま空中で体を捻り、二発蹴りを入れる。

「ガハッ!」

相手は飛んでいく。離れた距離を再び炎の勢いで詰める。

拳に炎を纏い、腹へぶち込む。

相手は気を失った。

大したことなかったな。遠距離部隊か。当たらなかったが、銃の腕は確かだったのかもしれない。

二人の後を追うか。一旦タバコを吸って。

タバコを咥える。火をつけようとしたが、何かがタバコに当たった。

下を見る。

弾丸だ。まだ誰かいるのか?四人しかいなかったはず。

殺気。上からだ。だが反応が遅れた。

俺は炎を纏い、回転して防御する。

あぶねえ。ギリだったな。

「なかなかいい反応だ。」

相手が降りてきている。

銃を二丁。こいつがここのボスか。

「お前ら、何が目的だ?」

俺は言う。やつは銃をくるくる回している。

「俺はこの郊外の頭だ。お前ら、他所から来ただろ?」

「だったら?」

にやりと笑う。

「荷物を置いてけ。通行料だ。」

「てめえで働いて稼げよ。」

「これが俺の仕事だ。」

「そうか。悪いな。無職かと思ったよ。」

相手が銃を放つ。

早いし音が小さい。俺は屈んで躱す。迷わず頭を狙ってきてるな。それに正確だ。

俺は炎で飛ぶ。近距離なら銃は不利だろ。

そのまま蹴り。当たった。でも感触が変だ。

見ると、砂が立ち上っている。こいつ、能力者か?

「死ね!」

足が砂から抜けねえ。弾が来ている。まずい。

俺は無意識に体を炎に変えた。

的が変わり、弾は外れる。

「そうか。第二の覚醒者だったな。」

こいつ、俺を知ってる。ってことは。

「お前、奴らの仲間か。」

「さあ、何のことか。」

笑っている。あいつらの仲間じゃなきゃそんな情報は知らないはずだ。

「まあいい。捕らえて吐かせてやるよ。」

「お前じゃ無理だな。」

相手は銃を置き、砂を操る。すげえ量をコントロールしている。

俺は炎を放ち、応戦する。だが、相性が悪い。砂には炎は効かない。

息つく暇もなく砂が向かってくる。防ぐのが精一杯だ。

「砂縛。」

足元の砂が俺を包み、動きを封じる。流石に体の半分を能力で封じられると

炎になれない。

「はっ!噂ほど大したことねえな!」

相手が近づいてくる。

「このまま砂で潰してもいいが、せっかくだ。全部くれてやるよ。」

相手は銃を拾い、構える。

「砂崩。」

あたり一面の砂が上空に舞い、雪崩のように俺に向かってくる。

「ヘッドショット。」

おまけに銃を放ってきた。これは死ぬ。どうする?

ここで死ぬわけにはいかない。俺は記憶を辿る。何か方法は無いか。


ドオオオオオン!!!




「へっ。ガキが。」

手ぶらだったから何も持ってねえだろう。

それに、こんだけ能力使ったんだ。全部ぺちゃんこだ。

あいつら起こしてアジトで説教だな。

俺は砂に波を起こし、その波で移動する。この場なら、俺は最強だ。

ふと、視界に何かが入る。

気付いた時には、俺は後ろに飛んでいた。腹には激痛が走る。

俺は地面に投げ出される。

なんだ?新手か?

前を見ると、また何かがいる。

そいつはさっき俺が殺したガキだった。

また腹に激痛が走る。まずい!意識が飛ぶ!

「ガハア!」

だめだ。起き上がれない。

何だ?

殺したはずだ。

あの状態で回避できるわけがねえのに。




「礼を言うよ。おっさん。」

自分でもどうしてかわからない。それに、複数の能力を使えるなんて

聞いたこともない。

俺の能力は炎。

だが、なぜか今は雷も使える。

さっき、砂に囚われた足で思い切り炎を放った。

それと同時に、雷が頭に浮かんだ。雷の強みの一つにスピードがある。

これは磨けば磨くほど、本当の稲妻のように早くすることができるらしい。

まあそこまでいくのは稀だが。

そして気付いたら俺の体は雷になっていた。

それで拘束と弾は回避できた。流石に上から降ってきた砂はかなり食らったが。

でも今はいい。

俺は生きていて、炎と雷の両方が使える。

おまけに、体もどちらにも変えられる。

これなら、負ける気がしない。今は誰にも。


相手は震えている。

それはそうだろう。俺だってこんな敵がいたら正直ビビる。

「お前、なんで。」

「お前のおかげでさらに強くなれたよ。ありがとう。」

殺しはしない。ただ、しばらく動けないようにする。

「蒼雷。」

体を雷そのものにする。疾い。目でなんか追えないほどに。

相手の上に飛ぶ。一瞬だ。

「蒼雷閃。」

俺は右腕から雷を放つ。全てが疾い。

相手は気を失う。

「確保。」

俺は手錠をする。

人を転送するには限度がある。今登録してるのは新明の基地。

ここから人を牢に転送はできない。

まあ、これだけダメージ負わせりゃ逃げられねえだろう。


俺はバイクに乗り、そのままここを後にする。

新しい力。早く二人に伝えたい。喜んでくれるかな。

郊外を抜ける。後少し。

くそ。頭がふらつく。

少し休むか。

俺はバイクを転送し、町の入り口の階段に腰掛ける。

二人は大丈夫だったかな。

端末を見る。

よかった。

無事、到着のメッセージが来てる。

俺はほっとし、そのまま気を失った。

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