4話
ガバッ!
しまった。気を失っていた。
ここは?月姫さんは無事だったのか?あいつらは全員捕えられたのか?
見たことない部屋だ。見た感じ病室のようだ。
周りには誰もいない。
俺は端末を取り出し、月姫さんに電話をかける。
プルルルル、プルルルル。
ガチャッ。
「もしもし?」
「月姫さん!大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ。蒼のほうこそ大丈夫?」
とりあえずよかった。心臓に悪い。
「俺はもう大丈夫です。今どこですか?」
「よかった。私も今ここの支部にいるよ。今ちょうどミーティング終わったからそっちに行くね。」
「わかりました。ありがとうございます。」
「いいえ。じゃあまた後でね。」
「はい。」
よかった。とりあえず月姫さんは無事だった。
俺はベッドに横になり、天井を見上げる。
慌ただしくて頭が回っていなかったが、濃い一日だったな。
無事、奴らのここの拠点は潰せたし、俺の能力も上がった。
第二の覚醒により、物理攻撃は効かないし、能力の使用の幅も広がった。これは大きな進歩だ。最後の技を出した時、想定よりも大きい技が出せた。
一回落ち着いて確認した方がいいな。今の自分の状態をちゃんと確認したい。
ガチャッ。
「お待たせ。」
「月姫さん。」
実際に会ってより安心した。怪我もしてなさそうだ。
「起き上がれる?無理だったら寝てていいからね?」
「もう大丈夫ですよ。この後着替えて俺も動きます。」
「だめ。そんな慌てなくていいの。もうここでの聞き取りも終わったから。」
そうなのか。月姫さんも疲れてるだろうに、呑気に寝てたのが申し訳ない。
「すいません月姫さんばっかりお仕事させて。」
俺がそう言うと、月姫さんは優しい表情で言う。
「そんな事ないよ。蒼が今回頑張ったんだし、役割分担しただけだから。」
それでも、申し訳ない。月姫さんがどこかに行くなら、俺も月姫さんと一緒に居たい。
「それでも、俺は一緒に居たいです。」
月姫さんは少し驚いている。その後、表情を崩す。
「なにー?そんなに一緒がいいの?」
月姫さんはニヤニヤしながら言う。
「いやいや、部下としてですよ。俺だけ休んでるのは嫌ですから。」
ふーん、と月姫さんは理解しているふうだが、まだニヤけている。
「で!ミーティングはどうでした?」
俺が話を戻すと、月姫さんもいつもの顔に戻り、話始める。
話の内容は、今回の件でまずここの支部からお礼を言われたこと、そして、俺ら月班と個別で協力関係としての関係を築けたこと、そして、次の俺らの行く先。
月姫さんが大たちの取り調べをしたらしく、それを元に次の目的地を決めたらしい。
次はここからさらに離れた「西地区」に行くらしい。ちなみに俺らがいるのは東地区だ。そこで今回の薬物を製造しているらしい。ここを潰せば、これ以上この薬物が増えることは無い。俺も賛成だ。
「あと2、3日はここでゆっくりしていくから、慌てなくていいからね。」
「わかりました。月姫さんもゆっくり休んでください。」
「ありがとう。」
そう言って月姫さんは宿に戻り、俺はもう少ししたら検診があるので、ここで休む。
ここまでは順調、でも、気を緩めるわけにはいかない。
今回勝てたのも、たまたま覚醒したからだ。
早く試したい。今の力を。
検診の結果は特に問題なく、俺は病室から出れることになり、宿へ向かう。
月姫さんが宿宿言っていたから、民宿的な感じかと思ったが、しっかりとしたホテルだった。俺は月姫さんに宿についたと連絡し、荷物を整える。
ここの町をまだ俺は知らない。せっかくだから少し観光したいな。
月姫さんに聞いてみるか。
そう思って端末を取ると、ちょうど月姫さんから連絡が来た。
「今夜、空いてるよね?飲みにでも行こうよ。」
月姫さんらしい。仕事が落ち着いたから飲みに行きたいんだろうな。
「もちろん。」
俺はそう返し、シャワーを浴びて支度をした。
「お待たせ。」
月姫さんと合流し、店に向かう。どうやら事前に行きたいところを調べていたらしい。宿もそこに近いところにしたんだとか。こういうところも抜かりない。さすが月姫さんだ。
新明のいつものバーとは違い、シックで落ち着いている。なんとなく入るのにハードルが高そうだと感じるような店だ。
「予約してあるから。今日は祝勝会ってことでたくさん飲むよ。」
「いいですね。」
月姫さんは楽しそうだ。
予約した席へ案内される。見ると、二人には広い席だ。
「あ、言い忘れてた。今日もう一人来るんだけどいいよね?」
「え?誰ですか?」
ここの警察に知り合いでもいるのか?まあ月姫さんが良いならいいけど。
「ここで知り合った子でね。直感で仲間にしたいなあって。」
「俺は良いんですけど、そんな理由で上に通るんですか?」
「蒼、私たちは特殊刑事課だよ?ルールなんて関係ないの。それに、蒼が功績を上げた今なら、わがままも通りやすい。何より今問題になっている事件解決のためだからね。」
なるほど。全部は理解できないが、理解した。確かに、今後のことを考えたら俺と月姫さんの二人じゃきついしな。
話しながら考えていると、扉が開く。新しい仲間が来た。
「失礼します。お待たせしました。」
新しい仲間は俺の想像と違った。
俺と同い年か、年下で金髪のショートカット。背は月姫さんよりは高いが、先頭向きとは思えない体格。まあそれは月姫さんもそうだが、見た感じではただの若い女の子だ。
「改めて初めまして。光です。よろしくお願いします。」
「こちらこそ。私は月姫、こっちは蒼。これからよろしくね。」
「蒼です。よろしくお願いします。」
光はあわあわしている。人見知りなのか?
「まあまあ。とりあえず座って。今日は歓迎会と祝勝会だから。」
「は、はい!お邪魔します!」
光は月姫さんの隣に座る。落ち着かない様子だ。
「光ちゃんはお酒飲める?」
「あ、私、お酒飲めないんです。ごめんなさい。」
年齢的なものか、体質かわからないが、今詳しく聞くのはよそう。
月姫さんも言及せず、光にドリンクを聞き、注文する。
「それじゃあこれからよろしく。かんぱい!」
俺らは乾杯をした。
「で、蒼が炎の能力で、基本戦闘は蒼がするよ。私のは上からの指示でまだ説明できないの。でも必要な時には能力バンバン使うから心配しないで。」
そうだったのか。そういや俺から月姫さんに聞いたこともないし、俺の炎で対処できてたしな。
「わかりました。私の能力は、うまく説明できないん出すけど、光です。でも、全然使いこなせなくて、今できるのは光ることくらいです。」
光の能力。基本属性じゃない。能力自体はかなり貴重だし、可能性は無限大だ。
月姫さんはそこに目をつけたのか?
「素敵な能力だと思うよ。光の能力なんて、本で読んだだけで、実在するなんて思わなかった。これから楽しみだね。」
「は、はい。」
光は嬉しそうにしているが、不安そうだ。能力を使いこなせていないからか。
あるいは、その貴重な能力を生まれ持ってきたことで、周りの期待に悩まされてきたか。
「月姫さんは、光さんの能力を知ってたんですか?」
月姫さんはすでに相当な量の酒を飲んでいる。今日はダメだな。
「ううーん。知らないよ。言ったでしょ?直感だって。」
本気でそれだけの理由なのか?だとしたらすごい人だ。
「なるほど。」
「あ、あの!蒼さんは私がいても迷惑じゃないですか?」
光は心配そうだ。やはり、何か事情があるんだな。
「迷惑なんかじゃない。一緒に来てくれるなら俺も背中を預ける。だから、光さんも俺と月姫さんを信用して頼って欲しい。必ず守るから。」
俺らの班はこれからより危険が伴う。それを理解し、ついて来てくれるなら、
俺は嬉しい。
「ありがとうございます。嬉しいです。」
やっと光のほんとの笑顔が見れた。愛嬌があり、あどけない。可愛いな。
「あ、あと!私のことは呼び捨てて大丈夫です。!」
「わかった。じゃあ、光も俺を呼び捨てで呼んでくれ。」
「それは、これから頑張ります。」
「気遣わないで好きにしてくれて大丈夫だから。」
「ありがとうございます。」
そこから少しずつ、光と話した。
話をしていくと、明るくて純粋で、良い子なのが分かる。一緒に前線に行くのが
勿体無いくらいだ。警察なんて危ない仕事をしなくても良いのに。
月姫さんが寝そうなので、今日は解散にした。
だがそれと同時に、三人の端末が鳴る。
緊急メッセージ。この町で能力を使って暴れているやつがいるとのこと。
少しのヤンチャならここまで大事にはならない。
やつの目撃場所を見て、察した。
おそらく、俺らが追ってる目標のグループだ。ここが潰されたのを知って、
状況を見に来たのか。それとも始末しに来たか。
「緊急メッセージ。」
光は不安そうな顔をしている。俺らは新明の人間だし、光も今勤務時間外。
俺らが強制で出動する指示では無い。でも。
「光、月姫さんを頼む。俺は少し見てくる。」
「え?でも、大丈夫ですか?ここの警察に任せておけば。」
「嫌な予感と、良い予感がするんだ。俺らの目標の手がかりがわかるかも知れない。」
「でも。」
心配なのか?優しい子だ。
俺は光の頭に手を置く。
「終わったらすぐ行く。月姫さんも送らないとだし。心配しないで。」
「わかりました。」
俯いて光が言う。
「じゃあ行ってくる!」
俺は炎で飛んでいく。酒はそんなに飲んでいないから問題ない。
上から見ると、ビルや建物の灯りがきれいだ。そういや、この町には有名なタワーもあるらしい。そこで見る夜景が絶景なんだとか。
やつの目撃情報はこの辺り。一般人は巻き込みたくない。仕方ない。
俺は夜空に向かって炎を放つ。どこまでこっちの情報を掴んでいるかわからないが、
目標にはなるだろう。これでお引き寄せる。
避難勧告は出ている。じきにこの辺の人もいなくなるだろう。
風が吹いている。夜空に浮かぶ雲の動きも早い。
俺は目を閉じ、感覚を研ぎ澄ませる。周りのエレルギーの変化を読む。
来る。
俺は目を開ける。
黒いローブ。フードで顔を隠している。間違いない。やつらの仲間だ。
だがオーラで分かる。あいつじゃない。
「お前、こんなとこで何してんだ?」
そいつが言う。声も違う。だが手がかりにはなる。
「散歩だ。素敵な出会いがある気がしてな。」
「奇遇だな。俺もだ!」
相手が飛び込んでくる。武器は無い。
俺とやつの拳がぶつかる。細身のくせに重いな。
そのまま何発か繰り出してくるが、俺は防御する。
「なんだ?自慢の炎は使わねえのか?」
やはり炎の使い手が関係あると知っていたらしい。そういや、あいつにも炎使ったしな。
「見たきゃ見せてやるよ。」
俺は炎を出す。
「良い色だ。レアだな。」
「よく言われる。」
今度はこっちから仕掛ける。
炎を使って飛んでいく。その勢いのまま、炎を纏った蹴りを繰り出す。
「無駄だ。」
相手は能力を使い、防御する。そう来たか。
相手の能力は水。相性は悪い。
俺の炎は煙になり、消えていく。
「相性が悪い。お前じゃ俺には勝てねえよ。」
「確かにそうだな。でも、俺が普通の炎だったらな。」
この間の戦闘を思い出す。もっと能力の純度を上げろ。相性悪くて勝てないんじゃ、
これから使い物にならない。
「蒼炎解放。」
俺の周りに炎が舞う。ただ体から出すだけよりも戦闘の幅が違う。
舞っている炎をやつに放つ。その後を俺も追う。
放った炎はやつの水に消されていく。でもそれは囮だ。
「無駄だって言ってんだろ!」
相手も攻撃を放つ。相性が悪いのもあるが、やつの攻撃の威力も相当だ。
俺たちはビルを飛び交いながら戦う。なかなか隙はできない。
「水虎。」
やつは一際大きな攻撃を放つ。しかも早い。
「くっ!」
かわそうにも規模がデカすぎて間に合わない。炎を出すが、あっさり消される。
ドゴオーン!!!
大の攻撃より重い。それに、水が高速で回転していて防げなかった。
ちっ。くらっちまった。それにダメージもでかい。
「よく生きてたな。死んだと思ったぜ。」
相手はまだ無傷。大よりも強い。黒いローブを着ている連中は別格か。
「これくらいでくたばるかよ。」
「ヘロヘロじゃねえか!」
炎の能力の強みは火力の高さ。つまり攻撃力の高さだ。炎と雷は他の基本属性より優位と言われている。炎を使いこなせば、全てを燃やし尽くせるという。
それは雷も、水も。相性は関係ない。能力を極めれば、そこまで到達できる可能性が俺にはある。
ふと、光の心配そうな顔と、笑顔が浮かんでくる。
そうだ。光も、月姫さんもいる。これからもみんなを守るんだ。
そのためなら、俺はどれだけ困難でも、強くなってみせる。
みんなの笑顔を守るために。
「蒼炎の奥義。」
俺は前方に炎を放つ。さっきのやつの攻撃よりもでかい。
「おいおい!当たんなきゃ意味ねえぞ!」
これだけ開けたところだから当たらない。
でも、はなから当てるつもりは無い。
「水鋸。」
高速で刃が回転している水の鋸。食らったら死ぬ。
俺は足から炎を出し、間一髪で交わす。そのまま炎を舞わせ、撹乱する。
「隙ができたぞ。」
俺は炎に紛れ、やつの腹に蹴りを入れる。
「ぐわっ!」
そのままやつは飛んでいく。
「まださっきの技は終わってねえぞ。」
さっき俺が放った炎は一つにまとまり、巨大な球体になっている。
来い。
「蒼月。(ブルームーン)」
俺は蒼月を引き寄せる。
やつは俺の蹴りで飛んでいるため、身動きが取れない。
やつは蒼い月に飲み込まれた。
「純度の高い炎だ。お前も防ぎきれねえだろ。」
夜空に浮かぶ蒼い月が、この町を明るく照らす。
騒ぎになるだろうが、仕方がない。
町に被害を出さないように、炎を散らす。
流石に死んだか?思ったよりでかい攻撃になった。やはりまだコントロールが難しい。やつが落ちてくる。
「噂以上にやるな。」
まだ生きていたか。よかった。ボロボロだが、思ったより食らっていない。
「お前もな。水で防いだのか。」
「流石に完全には無理だったがな。」
今は俺の方が優位。捕えるチャンスだ。
「悪いが捕まる気は無い。でもヒントをやろう。」
やつは立ち上がる。
「西地区で待っててやる。そこで俺を倒せばお前らの目標にさらに近づけるぜ。
だがもしお前らが負けたら、全員うちの駒にしてやるよ。」
逃げる気か。そうはさせるか。俺は飛ぶ。
ズキンッ!
やつにやられた傷が痛む。気が緩んだのか、急な動きはきつい。
「じゃあな。蒼。」
やつは大量に水を出し、それに紛れて消えていった。やつも第二の覚醒者か。
こうなっては追うのは困難。
とりあえず撃退できた。一旦、二人のところに戻るか。
俺はタバコを取り出し、火をつけた。




