3話
能力を使いすぎたか、体が思うように動かない。少しだけ休んで行こう。
俺は上着の内ポケットからタバコを取り出す。
キーンッ。
ジポッ。
ふー。
何かやり遂げた後のタバコはうまい。あんまり月姫さんの前じゃ吸えないけど。
戦闘中は無意識だったが、俺の能力に変化が起きている。
感覚的に言うと、能力を使う時に今までにないイメージが自然と湧いてくる。それを自然にコントロールできるようになった。今まで戦闘は何回かあったが、今回と、新明でのあいつとの戦闘経験が大きいのか?
本気で命の危険を感じるような経験は、この二回しか無い。
強くなるには、強い相手と戦うのが一番早いのかもな。
俺はタバコを踏み潰して消す。
ザザッ。
通信が入る。
「蒼、大丈夫?」
聞こえてはいるが、ノイズがすごい。結構地下に進んだからか。
「大丈夫です。お待たせしました。ここにいる全員は制圧し、麻酔で寝ています。」
「よかった。蒼のGPSの付近に今いるんだけど、上は大広場なの。地下への入り口がなかなか見つからなくて。」
そうなのか。奥まで来すぎて全然位置の予想ができない。端末の現在地もフラフラしている。もしかしたら、入り口はないのかもしれない。
「こっちでも探してみます。ちょっと待っててください。」
「了解。」
俺は出口を探す。残ってるエネルギーを温存しながら炎で飛びまわる。
結構見たが、それらしきところは見当たらない。しくじった。大か、それか誰かしらから聞き出しとくべきだった。どうするか。
何人か起こそうと思ったが、起きない。困った。
自力で探すしかない。俺は目を閉じ、感覚を研ぎ澄ませる。
もっと、もっと集中しろ。自然のエネルギーを感じろ。
この世界にはエネルギーが満ちている。人が能力を使えるのは、この自然のエネルギーがなんらかの作用をしていると言われている。中には、その自然エネルギーを使って自身の能力のエネルギーにできる人もいるらしい。
ぼんやりとだが、この空間のエネルギーを感じる。その中で、エネルギーに動きがあるところを探す。俺が入ってきた扉だったり、空間の堺はエネルギーの揺らぎが大きい。その中で感じるのは、ここの天井の中央だ。そこがやつらが使ってた入り口だとは思えない。でも、最短で脱出に使えるのはそこしかなさそうだ。
「月姫さん、俺のGPSまだ不安定ですか?」
「だいぶ安定してきてるよ。やっぱり広場の地下みたいだね。」
「なるほど。ちなみにそこに人はいますか?」
「今は誰もいないよ。少し前に規制したから。」
さすが月姫さん。先を見て動く力が俺とは違いすぎる。
「了解です。すぐに出れるところがそこしかありません。強硬手段にでます。」
「仕方ないね。寝ている人たちの確保もそんなに時間が無いし。フォローは任せて。」
「ありがとうございます。」
ふう。
俺の残りのエネルギーが足りるか、そもそもいけるかわかんねえけどやるしかねえな。
あとは月姫さんに頼もう。
「蒼炎、解放。」
2回目の覚醒をしたからか、能力の可能性が広がる。
俺の全身から溢れ出た炎が、俺の周りを囲うように立ち上がる。
それに這うようにさらに炎が湧き出る。
自分でも不思議だ。こんな状態なのに、炎が今までに無いくらい溢れてくる。
「蒼炎龍。」
俺は天井に向かって両腕で炎を放つ。
届け。月姫さんの元まで。
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「きた。」
大広場の地下から音がする。だんだん大きくなる。
蒼だ。
私は空へ身を投げ出す。おそらくこの辺りだ。
私は構える。
ボゴオッ!
大きな音と同時に蒼の炎が湧き出してくる。
あれ?また炎の色が澄んでる。それに、こんな大きい炎出せたっけ?
また今回で成長したのかな。私も上司として喜ばしいな。
青暗い夜に、海のような澄んだ水色の炎が浮かぶ。
綺麗だなあ。
思わず見惚れてしまう。
念の為被害を抑えるべく用意してたけど、吹き飛んだ瓦礫は蒼の炎で無くなってるし、炎は空中で散っていなくなっている。
これなら私の能力は必要ないか。
私はそのまま広場に降りる。
「これより、反抗グループの確保。蒼の保護は私が行います。」
『はいっ!』
事前に呼んでいたここの警察が、対処にあたる。
私も紛れて下に降りる。
蒼は疲れたのか、仰向けで倒れている。
「お疲れ様です。月姫さん。」
「お疲れ様。怪我は?大丈夫?」
無傷とは言えないけど、思っていたより外傷は少ない。
「致命傷は無いです。少し休めば動けます。月姫さんは?」
「私は大丈夫。敵はほとんど地下にいたから、上は安全だったよ。」
「よかった。色々動いてくれてありがとうございました。」
蒼が笑顔になる。全く。人の心配ばっかりして。現場にいた蒼の方が心配なのに。
「こちらこそだよ。本当に。よく頑張ったね。」
「頭撫でないでください。子供じゃありませんから。」
蒼はそう言うが、抵抗しない。動けないのかな。
「数日ここで聞き取りとかあるから、ゆっくり休もうね。」
「はい。月姫さんも。」
そう言うと、蒼は眠りについた。頑張ったもんね。みんなが来て、安心したのかな。
今回の一連の事件の一つの拠点を押さえられた。これは大きな意味がある。基地のみんな、それに、警察全体にもいいニュースとしてすぐ広がる。
まだ入って間もないのに、すごいよ。本当に。
「ありがとうね。」
私は寝ている蒼にそう呟いた。
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