表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/17

17話

大会会場に着いた。

想像していたよりも広く、観客席も多い。

俺らが戦うのは観客席よりも広いところで一面コンクリート、

そこを見下ろすように構造で言うと二階席のような感じで囲うようにできている。

ルールはいくつかある。

相手の命を奪わないこと。

度を超えた怪我を負わせるようなことはしないこと。

相手と自身の力量を判断し、棄権することもできること。

そして、優勝者は歴代最強の剣士と試合ができること。

その剣士の名前は凛と言うらしい。

どんな人なんだろうか。


観客もほぼ満席のようで、どうやらこの大会は名物らしい。

出場者はここの地区を代表する一族や団体が多いらしく、観客の中にもその関係者と思しき人がたくさんいる。

おそらくそれぞれの一族や団体の代表戦のような意味合いもあるのだろう。

おまけで外の地区からきた人の力もどんなものか見ているようだ。



「さあそれでは、大会の始まりです!」

いよいよ大会が始まる。ランダムなトーナメント制で俺は最初だ。

「まず初めは両者とも外の地区からの参加者です!蒼さんと武さんの試合です!」

会場は拍手と歓声で溢れる。どこかで月姫さんと光も見ているだろう。

俺と相手の武が中央で向かい合う。相手の武器は刀。

「せっかくの相手が同じ余所者かよ!」

相手はどうやらここの地区の人たちとの試合を望んできたらしい。

見てわかる。最近戦ってきた奴らには及ばない。

「それでは、試合開始です!」

歓声がさらに大きくなる。でも長々とこいつとやり合うつもりは無い。


バチイッ!

俺は雷の能力で一瞬で相手に詰め寄り刀を奪い、腹に蹴りを入れる。ダメージを最小限に抑えるため、蹴りは能力無しだ。

武は吹っ飛び、何度か地面にバウンドしながら壁に転がり、そのまま気を失った。

会場は静まり帰った後、先ほどよりも大きい歓声が上がる。

「一瞬の出来事で見えませんでしたが、勝者は蒼さんです!

この大会史上に残る強者の予感がします!」

会場は大盛り上がり。だが、俺はそんなに気分が上がらない。

どうせならこの地区の強いやつと戦ってみたい。

それに、凛が気になる。歴代最強の剣士。そのレベルに俺はどこまで通用するだろうか。


大会は進んで行き、俺の二回目の試合が始まる。

一応これが準決勝。相手の武器は銃で能力が備わっているようだ。

さっきの試合ではさまざまな能力の弾が出ていた。本人の能力は不明だ。

「それでは準決勝、蒼さん対健さんの試合スタート!」

俺は一旦様子を見る。こいつも余所者らしい。

「悪いけど、余所者のやつに用はねえんだよ!」

健がそう言い、銃を放つ。

この弾は炎。攻撃範囲は広いが、威力はお粗末だ。

俺は少し体を捻り躱わす。ただの炎。武器は悪くないが、

本当に強いやつの能力に比べたらおもちゃも良いとこだ。

「なら、当ててみろよ。」

俺はそう言い、相手の攻撃を待つ。二回連続で瞬殺じゃ観客もつまらないだろう。

「調子のんなガキが!」

相手は銃をいじり、また攻撃してくる。

ゴウッ!

おんなじ炎の攻撃だが、さっきよりも威力は増している。

弾か銃そのものか、威力を調整できるようだ。

それでも。


ドオオーン!

俺は右足に炎を溜め、飛んできた相手の炎の銃弾を蹴り上げる。

健が放った炎は空へ方向を変え、空中で散る。

会場には歓声が湧き上がる。

いろんなやつと戦ってきたからわかる。

能力の威力や重みのようなものはその人の実力で変わる。

これは一紫さんも言っていたが、能力を扱う熟練度やその人のエネルギー量によって

様々だ。実践経験が浅かったり、一定の能力のみを付与され、成長のしない道具では

熟練の能力者のものより弱い。

健の武器は確かに強力だが、それは武器の範疇に過ぎない。


「もう終わりか?」

そういう俺を見る健は、怒りと驚きの入り混じった表情をしている。

「舐めんじゃねえ!!」

健は上着の陰からもう一つ銃を取り出す。

「ぶっ殺してやる!」

ドオオーン!ドオオオーン!

健は銃を乱射している。

俺はその攻撃を交わしながら、ステージを飛び回る。

さっきまでと違い、炎のみでは無く、水や氷、土や風といった様々な攻撃が飛んでくる。攻撃範囲が広く、能力のバリエーションも多いからそれなりに他所では通用するだろう。便利な道具だ。

絶え間なく攻撃が飛んでくるせいで、ステージは煙や砂埃で視界が悪い。


俺はステージの中央上空へ飛ぶ。

ここから真下に攻撃を放てば観客にも被害は無く、健に当てられる。

瞬間、電気が走ってくる。

俺は雷の能力で瞬時に交わす。

バリイイイ!

今までの攻撃で一番でかい攻撃が飛んできた。

雷の弾。雷の特性までちゃんと持ち合わせており、一瞬でステージから空に向かって

雷の柱が現れた。


あぶねえ。

他の属性には無い雷の強みである圧倒的速さ。敵が使うとやはり脅威だ。

そろそろ決めるか。


俺は右腕に雷を溜める。

バチバチイ!

「蒼雷の柱。(ブルーストライク)」

俺は真下にあるステージに向かって雷を放つ。

さっきの健の雷よりも速く、大きく、強力な一撃。

ドオオーーーーーーン!!!

雷がステージに到達した後、遅れて衝撃と音が届く。


俺の放った雷が散り、ステージがあらわになる。

そこには健が倒れていた。

俺は雷の能力で下に移動し、ステージに降りる。

健は死んではいない。気を失っているようだ。

静まり返っていた会場はここで大きな歓声を上げる。

「蒼さん対健さん。勝者は、蒼さんです!!!』

ワアーーーーーーーーー!!!

なかなか派手な戦いだった。一応観客席に被害が及ばないようにバリアを張っているそうだが、観てる側はヒヤヒヤだったろう。

それでもこの試合はどうやら見応えがあったらしい。

俺は右の拳を空に掲げ、パフォーマンスをする。

観客はそれを見てさらに歓声を上げる。結構この大会は本当に人気なんだな。


一通り盛り上がった後、俺は控え室に戻った。

次は決勝。余所者に当たったからか、思ったより手応えがない。もっと強い奴がいると思ったのに。

俺はこの会場の裏口に周り、タバコを吸う。

まあ目的はここで戦うことじゃない。ここにいる歴代最強の剣士に会い、どうにか協力関係を築くことだ。

ここに来てからちゃんとここの剣士に会っていないし、戦ってもいない。どれほどの実力だろうか。俺自身、警察学校で基本的な剣術しか習っていない。

その時の講師が言っていた。

その道を極めた剣士に斬れないものは無く、斬りたくないものは斬らないというらしい。それに、足捌きや洗練された動きのキレ、一振りの重みは半端じゃないらしく、

相対すればわかるらしい。

正直、興味はある。戦うものとして、そして人としても、何かを極めた人は素直に敬意を示す。体感して、話してみたい。どんな人生を送り、どんな想いで生きて来たのか。

そんなことを考えながら、俺はタバコを踏んで消し、控え室へ戻った。


決勝戦、俺は三度ステージに立つ。観客席を見ると、さっきよりも人が多く、満席の上、立ちで観戦している人もたくさんいる。それだけこの大会が、この地区では意味のあるものなんだろう。

だが、気のせいか、少しおかしい。俺がステージに立ってから全然相手が来ない。まあ気のせいか、段取りでもあるのか。


ファーーーン!

アナウンスの音が響く。耳を突く不快な音だ。

「ええ、ここでお知らせがあります!」

その声を聞いて、ざわついていた会場が静まりかえる。

「先ほどの準決勝Bブロックですが、両者引き分けとなり、さらにダメージと疲労も積み重なり、両者棄権との申し出がありました。」

そのアナウンスを聞き、静まり返っていた会場がざわつきだす。

そういえば、俺もタバコを吸ったりして全然試合状況を見ていなかった。そんなに良い試合だったのか。

「なので、今大会の優勝は蒼さん!そして、ここから優勝者のみ権利が与えられる、エキシビジョンマッチに入ります!!」

なんだ。まあ優勝はいいことだが、後味が悪いな。不戦勝で優勝なんて初めてだ。

「それでは特別に参加していただきます!歴代最強との呼び声の高い剣士!」

そのアナウンスと共に、どこからか桜の花びらが舞う。

そして、目の前に一瞬でその剣士が現れる。とても静かで全然分からなかった。

それだけでこの人が相当な腕なのは分かる。

桜の花びらが似合うその人。だが、次第に俺は感じた。

嫌な予感。つい最近出会った、また会いたいと思っていた人。

だが、こんなところで会いたくなかった。予想もしてなかった。

「歴代最強の剣士、桜花凛さんです!!!」

会場には今日一番の歓声が響き渡る。あまりのデカさに揺れを感じる。

だが、表情は優れない。俺も、今目の前にいる凛も。

そこにはこの間の夜出会った女の子がいた。

「どうして。」

俺は思わず溢す。凛の表情を見ても分かる。あの夜、笑って別れた子が、今目の前で

また辛そうな顔をしている。

直接聞かなくても、言葉を交わさなくても分かる。

なぜか分からないが、俺にはたまにそういうことがある。

俺は拳をギュッと握り、ギリギリと歯を食いしばる。


「降参だ。」

俺は両手を上げ、そう宣言する。

「え?」

凛はいっそう、困った顔をしている。

それに、会場も先ほどまでの熱があっという間に冷めるのを感じる。

どういうことだ、なんなんだあいつは、というような声が聞こえる。

それはそうだ。この大会の目玉は歴代最強の剣士が戦うこの試合だろう。

それを始めるまでもなく降参宣言。そりゃあキレる。

でも、そんなことどうだっていい。凛は戦うことを拒んでいる。それが伝わってくる。表情で感じる以上に。本当はここに降りてくるのも嫌だったはずだ。


「ええーっと、まだ試合は始まっていないのですが、蒼さんは降参でいいんでしょうか?」

司会もどうするべきか迷っている。

「ああ。降参だ。」

俺がそう言い、司会も悩んだ末にそれを告げようとする。

だが、そこで聞いたことのない声が会場に響く。

「この大会は代々続く伝統のあるものだ。それに、この特別な試合はこの地区にとって大変意味のあるものである。」

声からして凄みがある。きっとこの地区の偉い人だろう。

「なので、この試合は始まる前の棄権は不可とする。蒼選手の棄権はこれからの戦闘中、こちら運営で必要と判断した場合、試合を止めさせてもらう。」

そうきたか。どうしてもこの試合をやらせる気か。

俺は凛を見る、凛と一瞬目が合うが、すぐに凛は目を逸らす。その目が潤んでいるのが俺には見えた。


「ふざけっ!」

「それでは、試合開始です!!!」

俺の声を遮るように司会のアナウンスが会場に響き、試合が開始されてしまった。

抗議をしようにも会場の歓声が大きすぎて声が通らない。

それに、凛の様子を見るにこの試合は止めることができないように感じる。

くそ!どうすればいい。

相手は女の子。訓練の組み手ならまだしも、そもそもやり合う気がない女の子に手なんか出せない。

凛の手が震えているのが分かる。凛は会場のどこかに視線を向け、何かを感じたのか、震える手に力を込める。

「ごめんなさい。」

凛はそう言い、腰に刺した刀に触れる。凛は覚悟を決めたようだ。

攻撃が来る。歴代最強の剣士の技はどんなものなんだ?

そう考えながら凛の刀を注視する。刀身のほんの一部が見えた瞬間、俺は身構える。

だがその時にはすでに俺は斬られていた。


なんだ?何が起きた?

胸の辺りがズキズキと痛む。

凛のいる場所は変わっていない。

斬撃が飛んできたのか?全く見えなかった。


俺は少し後ろに飛び、距離を取る。

傷が浅いのは凛が手加減してくれたからだろう。

そうでなければ死んでいただろう。

会場は俺が攻撃を喰らったことに歓声をあげている。

そうか。こいつらが見たかったのは凛の活躍。それまでの試合で盛り上がっていたのは余興として楽しんでいただけ。

何も知らずによくそんな盛り上がれるな。凛がどんな想いで今戦っているか知らねえだろうに!

どうにか凛を戦闘不能にするしかない。刀を奪うか、不意をついて気を失わせるしかない。

俺も覚悟を決めなくては。でも、凛の顔を見ると、決意が揺らいでしまう。

俺は別に良い。でも、なんで凛がこんな思いを、こんな経験をしなくちゃいけないんだ。まだ子供なのに。周りの大人は何も感じないのか?


俺は凛の方へ雷の能力で詰め寄る。だが同時に凛も移動し、距離を維持する。

そこで一つ分かった。凛も俺と同じ雷の能力を持っていることに。

雷の能力による高速移動、そしてさっきの斬撃も雷の能力による高速の斬撃か?

凛の表情がどんどん曇る。それを見ると俺の胸の奥が痛む。

これはさっき喰らった斬撃の痛みでは無いのは確かだ。

「大丈夫、凛。」

俺は凛に話しかける。

凛はなんのことかわからず、困惑しているままだ。

「凛は何も悪くない。だから、これからどうなろうと気にしなくていいから。」

その俺の言葉を聞いた凛の目から、涙が溢れ、下を向く。

観客からは見えないだろう。みんな好き放題騒いでいる。内情を知らないから仕方はないが、知っているやつも少なからずいるはずだ。どういうつもりだほんとに。

凛は下を向いたままだが、斬撃がまばらに飛んでくる。何発か喰らったが、

さっきのよりも威力は無い。

ここで、取る。

俺は全力で凛に駆け寄り、凛の刀に手をかける。

このまま刀を奪って試合を続行不可にする。

瞬間、さっきまでとは比べ物にならない威力の斬撃が無数に飛んできた。

ゼロ距離でさっきよりも早い凶悪な斬撃。駆け寄る時にも何発か喰らったため、

流石にこれはやばい。

だが、凛の手は動いていない。刀そのものから飛んできたような感じだ。

「蒼さん!」

凛が駆け寄ってくる。

「大丈夫ですか!?」

観客は何をしているのかわからず困惑しているようだ。

「大丈夫。気にすんな。それより、凛は?」

凛は悪く無い。何か戦わずにはいられない理由があるんだろう。

凛は我慢の限界を迎えたのか、動けずにいる。

「凛?」

凛はへたり込み、地面には水滴が落ちては、跡を残している。

俺は凛の頭を撫でる。

「もう大丈夫。よく頑張ったな。」

俺は立ち上がり、観客席を見渡す。

その中で明らかに警備の層が厚いところを見つける。

よく見ると、凛の服と同じ家紋がついた服を着ている。

あいつらか。なんとなく分かる。刺すような、冷たい視線と想いがこちらへ飛んでいることに。


バチイイイイ!

俺は一瞬でその観客席の前まで移動し、右腕に込めた雷を放つ。

他の観客とは離れているが、会場からは悲鳴が飛ぶ。


雷が散り、観客席があらわになる。

そこには太刀のような長い刀を持った男の姿があり、俺の雷はそいつに防がれたようだ。

「どういうつもりだ?」

太刀を持った男が言う。

見ただけで分かる。こいつは相当強い。周りの奴も何かアクシデントがあった際、この男が対処すると思っていたんだろう先ほどまでと全く変わらぬ様子で座っている。

「お前ら、凛の家族か?」

「だったらなんだ?」

「凛を見て、なんとも思わないのか?」

「余所者には関係ないだろう。」

「余所者でも分かるようなことが、身内であるお前らにはわからねえのか?

それとも、わかっている上でこうしてんのか?」

「言っただろう。余所者には関係ないと。」

答える気はないってことか、それとも。

「早く余所へ帰ったらどうだ?貴様じゃ凛には勝てないだろう。」

「無理やり戦わせて、お前らは高みの見物か。それでも剣士かよ。恥ずかしくねえのか?」

座ってる奴らも、誰一人何食わぬ顔しやがって。凛がどんな想いでここに立ってるか考えもしねえのか。家族じゃねえのかよ。

「お前ら、何のために刀振るってきたんだよ!」


キインッ!!!


俺がそう言うと、一瞬で太刀を持った男が突っ込んでくる。

俺は咄嗟に腕から炎を出し、相手の太刀を防ぐ。

今まで何度か剣を使うやつと戦ったことはある。

そいつらの剣技がお遊びに感じるくらい、こいつは次元が違う。

ただの刀の一振りが、斧やハンマーよりも重い。

それに、こいつは能力を使っていないのにこのレベルなのか。


ドオオオーン!


俺は元いたステージに吹き飛ばされた。

太刀の男も静かに降りてくる。

「兄様!」

凛がそう叫ぶ。

こいつ、凛の兄貴なのか?確かに顔立ちの綺麗さは似ている。

「凛、お前はもういい。大会は中止だ。」

兄から凛に向けられるその言葉と眼差しは冷たい。

「でも。」

「この男が大会を荒らした為、大会は中止し、排除にかかる。」

「待ってください!この方は。」

「下がれ。凛。」

感情の無いただの命令。凛が怖がっているのが分かる。

まずい。さっき凛から喰らった傷が思ったよりも深い。

長時間の戦闘は危険すぎる。

それにこの男、俺自身万全じゃないと勝てるか怪しい。

「お前、凛の兄貴なのか。」

「だったら何だ。貴様には関係ないだろう。」

この落ち着き様、隙がない。本物だ。

「凛とちゃんと向き合ってんのか?」

「愚問だ。それに貴様と世間話をするつもりもない。」

「兄貴として、妹を見て何も感じないのか?」

「しつこいぞ。余所者に話すことではない。」

随分硬いやつだ。会場では観客に避難のアナウンスが流れ、ゾロゾロと人が流れている。

なるべく早めに決着をつけるしか無い。

「奥義。」

俺は残りのエネルギーのほとんどを使い、技を仕掛ける。

凛の兄貴は刀を構え、俺の技に備えている。

「蒼月。(ブルームーン)」

上空に蒼い炎を集め、凛の兄貴にぶつける。

今まで攻撃を仕掛けてこないと言うことは、あいつも相当自信があるんだろう。

「夜桜、閃桜。」

俺の巨大な蒼い炎をあいつは連撃で斬る。

長い太刀を綺麗に操り、舞っているような綺麗な剣戟。

まじかよ。強いとは思っていたが、この技をこうもあっさり斬るのか。

「終わりだ。」

俺は残りのエネルギーを絞り出し、雷で迎えようとする。

そこに誰かが飛び込んでくる。


ガキイイイン!


俺とあいつの間に現れたのは凛だった。

俺とあいつは理由もわからず、一旦距離をとる。

「どういうつもりだ、凛。」

あいつが言う。

「申し訳ありません。でも、この方は決して悪い人では無いです。」

俺とあいつはそのまま凛の言葉を聞く。

「今回の大会は私の未熟さが原因です。もう同じ失態は起こしません。」

何の話だ?この二人は何を話している?

「つまり、何だ?」

兄貴が凛に問いかける。

凛は少しの間を置き、口を開く。

「ちゃんと私の立場を受け入れます。覚悟はできました。なので、どうかこの方は

この場では見逃してください。」

何の話かよくわからないが、この間凛と話したことと引っかかる。

「待て、凛!」

「本当にいいのだな?」

俺の言葉をかき消すように兄貴が言う。

「はい。」

「そうか。」

俺にはわからないままこの二人の間で話が進んでいく。

ズキンッ!

くそ!傷がさらに痛み出す。

「なら特別にこの場では見逃してやろう。彼も時期、ここを出て帰るだろう。」

「ありがとうございます。」

凛はそう兄貴にお礼を言い、兄貴の方へ歩んでいく。

「待てよ、勝手に決めんなよ。」

だめだ。体が熱く、呼吸も荒くなる。

「いくぞ、凛。」

「はい、お兄様。」


二人はそう言い、この会場から出ていく。

止めたいのに、体が動かない。視界が霞んでいく。

凛がこちらを振り返り、何か言っているのか口が動いているが、

声は聞こえず、読み取ることもできない。

「待てよ、凛。」

俺はそう言いながら、意識を失っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ