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14話

支部についた。

半数程の警察官が今日のこの任務に参加してくれたので、支部には全然人がいないらしい。そしてその多くの人が今では治療を受けている。

なので、今日は結果の報告を月姫さんを中心にした。

それでも俺らの地区より全然警察官が多い。それだけの人員が必要なほど、

日々大小様々な事件が起きているのだろう。

俺は行方不明になっていた事を謝罪した。俺からなんの連絡もしなかったのは

本当に至らなかった。でも、ここの人はみんな優しい。見つかったなら良かったと

そこまで詰められなかった。

西地区の支部はこの国でもトップレベルにでかい。建物は新宿の倍以上はある。

新明も大きい方だが、おそらくここの方がでかい。

ここのトップの人に挨拶に行った。

その部屋には、歴代のトップの人の写真が飾ってあった。

一紫さんの写真もあった。気のせいか、今より随分怖そうな顔をしていた。

この時に会ってたら、また違った関係だったんだろうな。

一紫さんにも伝えたい。

一紫さんのおかげで勝てた。きっと一紫さんの修行がなかったら、

俺は役に立てず、今回の戦いの結果も違っていただろう。

どんな顔するかな、一紫さん。

喜んでくれるだろうか。



報告もほどほどにし、俺たちは宿に帰ってきた。思っていたのと違く、

普通の高級ホテルみたいなところだった。ここを何日も押さえてくれたのか。

経費すごいだろうな。

「色々ありがとうございました。二人ともゆっくり休んでください。」

俺はそういい、各自の部屋に戻ろうとするが、月姫さんに止められる。

「せっかくだし、みんな一緒に休もうよ。」

まあ確かに久しぶりの再会だしそれでもいいが、一応男女な訳だし、

逆にいいのか?

「いや、でも一応俺は男ですし、光と一緒に休むんでいいんじゃないですか?」

「今更そんなの気にしないでしょ。光ちゃんも一緒がいいよね?」

「はい!やっと会えたんですから!」

光は乗り気だ。まあ光は確かにこういう性格か。

「でも、俺多分すぐに寝ちゃいますよ?」

「それはそれでいいよ。私たちもそんな夜更かしするつもりも元気もないし。」

「私も早めに寝ます!」

なんでそんな二人ともノリノリなんだ?まあ、ここまで言われて断るのも悪いか。

「じゃあ、そうしますか。」

「はい、決まりね。」

「やったー!」

二人はなんだか嬉しそうだ。光はまだしも月姫さんがこうなのは珍しい。

月姫さんと光の後に続いて部屋に入る。

綺麗な部屋。少しだけ私物で彩られているのがなんだか微笑ましい。

中を見ると、思ったより広い。高層階で窓からはこの街が一望できる。

観光名所並みに夜景が綺麗に見れるいい部屋だ。

だが、おかしい。

聞いた話によると、もともと一人一部屋のはず。

だが、ベッドが三つ並んで用意されている。

「あれ、ベッドこれ元々ですか?」

俺が聞くと、光は気まずそうな顔をしている。

月姫さんは特に気にしてなさそうで、普段通りだ。

「あのー、これは。」

光がもじもじしながら口を開く。

「元々じゃないよ。これはお願いして移動してもらったの。光ちゃんが三人一緒がいいって。」

「ちょっとー!全部言わないでくださいよー!」

光は月姫さんの肩を掴んで揺らしている。月姫さんは笑顔で揺られている。

この二人、結構打ち解けたんだな。良かった。

「光は寂しがりなのか?」

俺が聞くと、光は手を止める。

揺られていた月姫さんも止まる。

「そういうわけじゃないです。ただ、せっかくなら、みんなで一緒がいいなって。」

そう言う光の顔を見ると、どこか胸の奥がグッとなる。

光は実家から急に出てここに来たんだ。そりゃ寂しかったり、一人じゃ辛い時もあるだろう。それに、一緒に居たいって思ってくれるくらい俺らに心を開いて、信頼してくれているのかな。なんだか嬉しい。施設に居た時も、その後の訓練とかでも、誰かにそう思ってもらえることが無かったから。いつも一人で、ずっと一人で居たから。

「ありがとう、光。」

俺がそう言うと、月姫さんは微笑む。

「な、なんでお礼を言うんですか!?私の方こそですよ!」

「俺もどうせなら一緒がいいから。」

光は目を見開いた後、へにゃっと笑う。

「良かったです!改めて、おかえりなさい!」

「おかえり。蒼。」

久しぶり、いや、施設でも数回言われたかどうかもわからないその言葉。

なんだか家族ができたみたいで嬉しい。一人で別に平気だった。

でも、二人とこうやって居られるのは、心があったかくなる。

「ただいま。」

俺は無意識に、笑顔でそう答えていた。


順番に風呂に入ることにし、じゃんけんで勝った月姫さんから入ることになった。

「私長いけど、遅かったら呼ぶか先寝ててね。」

「はーい!」

「ごゆっくり。」

俺と光は答える。なんか旅行みたいだ。

「蒼。」

「どうしました?」

「のぞいちゃダメだよ。」

「のぞきませんよ!何言ってんですか!」

「蒼さん、そういう人だったんですか?」

月姫さんのせいで変な誤解が生まれた。光は本当に疑っていた。


俺はベッドに横になる。光は何やら作業をしていたが、俺の隣のベッドに来た。

「蒼さん!何か飲みますか?」

光はお酒を持ってきた。他にもおつまみのチョコなども持っている。

わざわざ持ってきてくれたのか。気が利くなあ。

「ありがとう。光は飲めないんだっけ?」

「よく覚えてますね!本当は飲めなくはないんですけど、お酒弱くて。」

そうだったのか。まあ女性は特にそういう人も多いしな。

「そうなんだ。年齢的なことかと思った。」

「違いますよー!まあ年齢は今年から飲める年なんですけどね。」

俺らの国では19歳からお酒が飲める。ということは光は19歳なのか。

「光、俺の一個下なんだな。」

俺がそう言うと、光はポカンとした顔をしている。

「蒼さん、20歳なんですか?」

「そうだよ。もっと上かと思った?」

「いえいえ!ただ大人っぽいので、もう少し上かと!」

光は両手をバタバタ振りながら言う。そんな否定しなくてもいいのに。

「俺は逆に光はもう少し下かと思ったよ。」

「ああ!蒼さん、私のこと子供だと思ってますね?」

「いや見た目は子供っぽくないけど、話し方がちょっと。」

「ああー!」

「ああー!ってなんだよ。」

光のリアクションに俺は笑ってしまう。

それに釣られて、光も笑っている。

光が以前より心を開いて素で話してくれている気がする。喜怒哀楽がはっきりしていて俺は好きだ。

「でもせっかくなんで、今日は私も飲みます。蒼さんと乾杯したくて弱いお酒買ってきてたんです。」

光は笑顔で言う。他意はないかもしれないが、俺がいない間も俺のことをたまには

考えてくれてたのがなんだか嬉しい。

俺と光は静かに乾杯する。久しぶりに飲む酒は、いつにも増してうまく感じる。

光も意外と飲めているようで、楽しそうな顔をしている。

光の笑顔を見ていると、なんだかこっちまで嬉しくなる。

「美味しい?」

「はい!美味しいです!」

ほんのり顔が赤い気がする。本当にお酒弱いんだな。

「一口飲みますか?」

光が俺に自分の飲み物を差し出す。いやいや、一応男女だからそのまま貰うわけにもいかない。多分光は特に気にしてないんだろう、上目遣いで俺を見てくる。

「いや、いいよ。光のなんだから。俺のもあるし。」

「そんなー!遠慮しなくていいのに!」

光が少し頬を膨らませている。随分人懐っこいな。こんな感じだったっけ?

「今度同じの貰うよ。」

「ぶー。」

もしかして酔っ払ってるのか?いや、普段からこんなこと言いそうではあるから

なんとも言えない。そもそもずっと一紫さんと二人だったし、その前も基本月姫さんと二人だったからなんとなく女の子と話すのが照れる。

よく考えたら、月姫さん意外とお酒飲んだり二人でいるのは光が初めてだ。

気のせいか、俺の顔が熱く感じる。

落ち着け俺。相手は光だぞ。これからも一緒にいる仲間なんだから変に気にするな。

「じゃあ蒼さんの一口ください。」

「え?」

俺がそう言うと、光は何も言わず俺の手ごと酒を掴み、自分の口に運ぶ。

そのままグビッグビッと飲む。一口じゃねえ。それに、珍しく強引だ。

ぷはー、と光は一息ついている。

「蒼さんの、苦いです。」

「まあ、そういうのだから。」

「でも、蒼さんの好みが知れて良かったです。」

光はまた笑顔になっている。

なんだ?月姫さんとの時は特にそんな意識したこと無いのに光だと変に意識してしまう。月姫さんはいつもクールで淡々としているからか?

俺が何も話せずにいると、光が口を開く。

「私、蒼さんと月姫さんと出会えて幸せです。」

光は俺のほうを見ずに、テーブルに置かれた酒やおつまみを見ながら言う。

「月姫さんも、蒼さんも優しくてかっこよくて。この前まで一人ぼっちだった私に

お姉ちゃんとお兄ちゃんができたみたいで、お二人といると楽しくて、幸せで、胸がいっぱいになるんです。私にとっても大切な人で、お二人もそう思ってくれているのが伝わって、心があったかくなるんです。」

光は俺の方を向く。気のせいか、酒のせいか、目が潤んでいる。

「それに、今日蒼さんとやっと会えて、しかも私のことを助けてくれて、

本当に言葉にできないほど嬉しかったし、かっこよかったです。私、今日のこと

ずっと忘れません。忘れられません。」

光の大きな瞳が真っ直ぐ俺を見つめる。

誰かにこうして感謝されて、想いを伝えられたのは初めてかも知れない。

誰かの心に残るようなことができた。そう思うと、俺の胸も熱くなる。

今までのことが無駄じゃ無かった。ずっと一人だったけど、歩き続けたことに

ちゃんと意味があったんだ。

「俺も忘れない。それに、これからだって光になんかあったらいつでも

俺が助けに行く。一緒に帰って、みんなを見返すって約束したからな。」

失いたくない。光も、月姫さんも。ずっと一緒に居たい。

初めてそう思えた。

光の瞳から涙が溢れると同時に、俺に突っ込んできた。

「痛え。」

「今だけゆるしてください。」

光は俺の胸に顔を埋め、俺はその頭を撫でる。

今日は随分と甘えるんだな。でも、一人で我慢するくらいなら誰かに甘えたほうが

ずっといい。俺ならいつでも居るし。




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