表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

緑の領域

作者: アルチ

公園で虫がないている



緑に囲まれた公園のベンチ。僕は正直にいうと虫が苦手だ。何年も触れていない。


腕にとまっていた蚊をたたくと赤く滲んだ。手を洗うために立とうとすると、目のまえのトイレから出てきた青年が、空にむかって、なにかを放った。


僕になにかを投げつけてきたのかと思っておどろいた。立ち去った青年は、あとの状況を知らない。ベンチとトイレのあいだに、なにかが落ちてきた。


セミだった。経過からして羽をバタつかせて飛びつづけようとしていたのかもしれない。叶わない夢だったみたいだ。セミはトイレに向かおうとする人に踏みつけられそうになり、僕は思わず声をもらした。


セミを軽くつかむと、セミはないた。あらがう力はないみたいだ。公園で一番大きな木の下におくと、またセミはないた。トイレで手を洗おうとすると蛇口の下に緑のカナブンがいた。目が合うと僕に語りかけてきた。


「正と過りの狭間でなにを得る?残酷と慈悲の狭間でなにを得る?現実と幻想の狭間でなにを得る?そのさきのカナタでなにを得る?……」


僕はないた。目のまえで起きる出来事は、なんて特別なんだろう。仕事が始まるまでのわずかな時間に、そのものに、二度も触れてしまうとは。僕は小さなタオルで手を拭き「……たとえ望まないことであったとしても……」公園をあとにした。汗が頬を伝うほどに、朝から日の光が痛い。



公園で虫が鳴いている





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ