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開始された計画

西暦2501年、世界は不老不死とタイムマシンに夢中だった。

夢中というよりは、これ以上研究していく必要性があるもので、注目を集める物がそれくらいしかないだけなのかもしれない。

そんな中、1人の高校生、暁翔は普通に高校生活を送っていた。

否、普通に見える生活を送っていただけだ。

彼が抱えた底なしの野望、復讐心は、決して露呈しない。

数年前、あの時からそれは変わっていない。

天才は、この世界にとっての天災になるかもしれないのだ━━━━━



朝、目が覚めるとすぐにアラームが鳴り響いた。目を開けると、天井がぼんやりと見える。ああ、またか、と呟いて、僕は布団を押しのけて起き上がる。時間は7時半。学校が始まるのは8時20分だから、いつも通りに慌ただしい時間だ。

「だるいな…。」

少しぼんやりとした頭で、着替えを済ませ、軽く朝食をとる。母親が用意してくれた食事は、昨日と変わらずごく普通のものだ。

「いってらっしゃい。」8時ぴったり、僕へではない人間に向けられた言葉に、

「いってきます。」と答えていつものように家を出る。

僕は普通の高校生だ。ただ、他の誰と同じように、ただの日常を送っているに過ぎない。誰もが思っているだろう。暁翔はただの普通の高校生。何も特別なことなどない、ただ、与えられた時間を過ごしているだけだ。

でも、そんな風に思っているのは周りだけで、僕は違う。僕には、他の人には見えない大きな目的がある。ただし、それを口にすることは決してない。今はまだ、その時ではないからだ。




「おはよう、翔!」

教室に入る前、斎藤亜美が僕を見つけて声をかけてきた。亜美は明るくて社交的な女の子だ。誰とでもすぐに打ち解けて、笑顔を絶やさない。

「おはよう、亜美。」僕は軽く笑顔を見せながら、亜美に返事をした。

「今日は学園祭の準備だね!どうせ忙しくなるだろうけど、翔も手伝ってくれるよね?」亜美は、あくまでも笑顔を崩さずに言う。

「もちろん!なんでも手伝うよ。」そう答えながら、僕は心の中で計画を練る。

亜美が言う通り、学園祭の準備が始まるのは今日からだ。学校全体で協力して何かを作り上げるという、このイベントは、表面上「普通の学生」としての信頼を築くために絶好のチャンスだ。それと同時に、数ヶ月の間築き上げてきた信頼関係をさらに強いものに変えるチャンスでもある。これを有効に活用しない手はない。



「翔、今日は学園祭の打ち合わせだよね?」

クラスの人気者で、頭の良い山田悠斗が声をかけてきた。悠斗は優秀で、周囲から一目置かれる存在だ。誰からも信頼され、尊敬されている。僕は彼のようなタイプには少し苦手意識を持っているが、それでも今は仲良くしておく必要がある。

「うん、もちろん。今日も手伝ってくるよ。」僕は軽く答えて、すぐに他の生徒と会話を始めた。

悠斗は「翔、頼んだぞ」と一言だけ言って、周りの人たちと話し始める。その後ろ姿を見送りながら、僕はふと考えた。

彼には、僕が持っていないものがある。仲間たちからの尊敬や信頼。あの温かい雰囲気は、そこまで簡単に手に入れられるものではない。だが、これからそれを手に入れるための計画を着々と進めていくつもりだ。すでに、その計画はスタートしているのだが。

僕がしなければならないことは、大きく目立たず、同時に周囲に「信頼される翔」を印象づけることだ。これを達成することで、後々大きな動きができるようになる。



昼休み、僕は食堂に向かって歩いていた。

普段なら、仲の良い友達と一緒に食事をするのだが、今日は少しだけ時間を取って一人で過ごすことにした。座る場所は、いつもより奥の方のテーブル。あまり目立たず、人の少ないところだ。

しばらくすると、亜美がやってきて、「座るね。」と言って僕の前に座った。

「翔、今日も一人で食べるの?さみしいよ~。」亜美は笑顔で言ったが、その笑顔の裏には少しだけ心配そうな気配が見える。

「ん?別に大丈夫だよ。」僕は軽く答えて、弁当を食べる。

亜美はしばらく黙っていたが、やがて小さくため息をついて言った。

「翔って、ほんとに何考えてるのか分からないんだよね。クールすぎて、あんまり自分を見せないし。」

その言葉に僕は軽く笑いながら答える。

「それは、普通に生きてるだけだよ。無理に人に合わせるのも疲れるし、余計なことは言いたくないんだ。」

亜美は少し驚いた表情をしてから、すぐに笑顔を取り戻す。

「でも、翔って意外と面倒見がいいよね。みんなに頼まれると、絶対に断らないし。」

その一言に、僕は思わず小さく笑った。確かに、僕は面倒を見ているつもりはなくても、頼まれたことを断らない。なぜなら、それは式の答えを書くために、途中式を書いているに過ぎない。途中式があった方が、教師からの受けがいいのと同じだ。

「まぁ、頼まれたら、ね。」僕は少しだけ意味深に答え、亜美の反応を見た。

亜美はその言葉に少しだけ戸惑いを感じたようだが、それをすぐに笑顔に変えて言った。

「やっぱり翔って面白いよね。クールだけど、なんかどこか気になるんだよなぁ。いつも周りに気を配ってばっかりだしさ。自分のこともちゃんと考えれてるかなぁって。」

その言葉に、僕は小さく頷きながら心の中で冷静に考える。亜美は、僕を「ちょっとお人好しの普通の学生」としてしか見ていない。しかし、彼女が言うように、僕の言動に気を引かれている。これは無駄ではない。むしろ、彼女に少しずつ近づいていくことが、後々僕にとって有利になるのだ。

「別に、普通に感謝してるだけだよ。みんなから助けてもらってる分、僕もお礼をしないとね。」僕は軽く笑いながら言った。

亜美はその言葉に満足そうな顔をして、また話を別の方向に向ける。

「じゃあ、今日は放課後も学園祭の準備だね!翔も手伝ってくれる?」

「もちろん。じゃあ、放課後、会場でね。」僕は軽く返事をして、昼休みの食事を終わらせた。




放課後、教室の後片付けを終えた僕は、学園祭の準備へ向かうために急いでロッカーから必要な道具を取り出し、廊下を歩いていた。周囲には、学園祭の準備に励む学生たちが何人かいて、賑やかな雰囲気が広がっている。

「翔、こっちだよ!」亜美が手を振りながら僕を呼んだ。彼女は他の仲間たちと一緒に、学園祭の会場設営をしている。目立つ場所にいる亜美は、当然のように周りの注目を集めていた。

「お疲れ様。」僕は軽く声をかけると、亜美はすぐに僕に近づいてきた。

「翔、今日は何するの?」亜美が笑顔で尋ねる。

「今日は飾り付けとか、細かい準備を手伝おうかな。」僕は適当な理由をつけて、亜美の笑顔を見つめる。彼女は僕の言葉に安心したように頷いた。

「そうだね、細かい作業も大切だし、翔が手伝ってくれるならみんな助かるよ!」亜美は嬉しそうに言う。

僕はその言葉を受けて、内心で少しだけ満足感を覚える。このように、僕がどんな小さなことでも積極的に手伝う姿を見せることで、周りの人々は僕を「信頼できる存在」として認識するようになる。それこそが、後々僕の計画を有利に進めるための第一歩なのだ。




会場では、他のクラスメイトたちも忙しく作業をしていた。僕はその中で、特に目立たないようにしつつも、手際よく作業を進めていく。時折、他のクラスメイトが何か頼んできたら、笑顔で快く応じて手伝う。

「翔、これ持ってくれないか?」田村真琴が少し困った顔をしながら、重い箱を僕に渡してきた。真琴は学年でもちょっとしたお調子者で、女子でありながら少し男っぽいところがある。口調や目つきなど、ボーイッシュな要素が強いのだ。そしてどこか抜けているところもあるが、悪気はない。

「うん、いいよ。」僕はさっと箱を受け取り、彼女が言った通りに指定の場所へと運ぶ。

「ありがとう、翔!やっぱり頼りになるな!」真琴は無邪気に笑い、僕を見上げた。その笑顔に、僕は内心で微かな冷笑を浮かべた。彼女の言葉も、後々僕が必要な信頼を集めるための材料に過ぎない。

それでも、僕はその場では軽く微笑み、答える。

「気にしないで。助け合いだよ。」

周囲から見れば、僕は普通の高校生の一員として、自然に振る舞っている。手伝ってくれる、頼りになる、そんな姿が、少しずつ僕を「普通の学生」として浸透させていく。



作業がひと段落ついた頃、亜美と一緒に休憩を取ることになった。僕たちは、会場の隅にあるベンチに腰を下ろして、休息を取ることにした。

「翔、こうやって手伝ってると、やっぱり頼りにされてるって実感するね。」亜美は目を輝かせながら言った。

「そうか?」僕は軽く肩をすくめて答える。

「うん、だって翔ってさ、みんなに頼まれても、絶対にイヤな顔しないじゃん。それが、すごく良いところだと思う。」亜美は少し顔を赤らめながら、言葉を続けた。

「まあ、頼まれたらやるだけだよ。」僕は何気ない言葉で返す。その間に、僕は内心で考えている。亜美の言葉に感謝するべきか、それとも冷徹に計算すべきか。しかし、今はまだその言葉を受け止めるふりをしておく。少しでも彼女との関係を深めておくことが、後々の計画に繋がるからだ。

「でも、やっぱり翔って結構クールだよね。みんなが言うには、いつも冷静で、何を考えてるか分からないって。でも、それが逆にカッコいいんだよね。」亜美は笑いながら言った。

食堂でも言われた、クールという単語。別にそこまでこだわっているわけではないけど、僕にとってはちょうどいい印象だろう。

しかし、その彼女からの言葉の一部に、僕はほんの少しだけ胸の奥が反応する。冷静で、何を考えているか分からない──まさにその通りだ。僕は、他人に自分の思考を読まれないように、常に冷静でいる。しかし、その冷静さが、彼女にとっては「カッコいい」と映るのか。

「ありがとう。」僕は少しだけ目を細めて言った。亜美の言葉が予想以上に嬉しかったのは、ほんの少しだけだが、確かに感じた。



日が沈みかけ、学園祭の準備が一段落した頃、僕は亜美たちと別れて帰路に就くことになった。外に出ると、空気はひんやりとしていて、秋の気配を感じる。

「明日もまた手伝ってくれるよね、翔?」亜美が元気よく声をかけてきた。

「もちろん。」僕は振り返り、軽く手を挙げる。

その言葉を残し、僕は歩きながら思う。今日の一日も、無駄にはならなかった。計画通り、少しずつ周囲との信頼を築き、亜美や真琴、そしてクラスの人々に「翔」という存在を印象づけることができた。この小さな一歩一歩が、後々の大きな動きに繋がるのだ。

どうもこんにちは、羽鳥雪です。

当初はこの作品を連載させるというつもりはなかったのですが、構想を固めていくにつれ「あれ?単発作品にすると長くなりすぎるのでは?」と感じたので連載作品となりました。

いつもメインで書いている最なれとは全然ストーリーが違うので、書き分けに手こずったり、更新が遅くなったりすることもあるとは思いますが、ゆっくりと見ていっていただけると嬉しいです。

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