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第37話 目覚めは突然に

 朝の光が眩しい……

 カーテンを閉めずに寝たかしら?

 ぼんやりと意識が浮上する感覚がして、ゆっくりと瞼を開ける。何故か目を開けるのも辛い。身体も固まっているような、血液がずっと止まっていたような、変な違和感にパッと目を見開いた。

「……」

 天井に豪華な天蓋が見える。ここは確か昨日まで寝ていた王太子妃の部屋?昨日??確か王太子になったアルバート様の舞踏会で…私は、そう、黒魔術……あれ、私は……

「クリス……?」

「……ア…」

 声を出そうとするが、喉がカラカラで声が出ない。

「クリス、クリス…ああ、神よ、私にクリスを返していただき感謝します」

 視線を動かして声のする方をしっかり見る。茶色の髪にアイスブルーの瞳、私の記憶するアルバート様とは違うずっと大人になったアルバート様だ。大人になっても相変わらず格好いい姿に、胸はとくとくと騒がしい。

「……」

「そうだ、水を飲むか?ずっと眠り続けていたから、何も飲んでいない。時が止まっていると言っていたが、私のことが分かるか?」

 私は無言でこくこくと首を縦に動かし微笑んだ。

「可愛いクリス、さあ、水を飲もうか」

 ゆっくりと私の体を支えながら、アルバート様はコップに注いだ水を私の口元に持ってきてくれた。私は口に水を含んで、恐る恐る飲み込んだ。多分10年ぶりの水だ、体がどう反応するか怖かった。冷たい水は、スッと喉を通っていった。それから夢中で水を飲み切った。

「ふぅ。美味し…かった…です」

 まだ少し喉に違和感はあるが、何とか声は出た。

「クリス、体は問題ないか?それと、ゆっくりでいいからあの時のことを教えてくれるかな?」

 私は出来るだけ詳しく、あの時の状況を話した。アルバート様にとっては10年前の出来事、私は昨日のことのような感覚で100年眠る黒魔術を書き換えた経緯や理由を話した。

「そうか、やはりミリアンナ妃の言う通りだったな…」

「ミリアンナ、妃??」

「ああ、5年前隣国の王太子と結婚して、ミリアンナ嬢は王太子妃になったんだ。クリスが倒れたと聞いて、すぐにオリバー殿下と一緒に駆けつけてきて、黒魔術の内容を教えてくれたのは彼女だ」

「ミリアンナ様が…そうですか。それで、10年眠ると分かったのですか?」

「ああ、君の手首にイバラの痣ができていて、その棘の数が10個あったんだ。王宮の魔術師は黒魔術に詳しい者が少なくて、ミリアンナ妃は誰も知らなかった貴重な情報を沢山持っていた」

 それはもしや、情報源は乙女ゲームの知識から来たものでは??それならば、この黒魔術の一件はゲーム内のイベントだった可能性もある…念のための黒魔術理論の授業は、一応役に立ったということなのか…

 早急にミリアンナ様に会って、いろいろと聞きたいところである。

「10年、待っていてくれたの、ですか?」

「ああ、当たり前だ。私の唯一、愛する婚約者はクリスだけだ」

 ハッとして、アルバート様の左手薬指を見た。そこには契約の指輪が嵌まっていた。そして、あの時外したはずの契約の指輪が、私の左手の薬指にも嵌まっていた。


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