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第33話 立太子の儀式と契約の指輪

「王都に着くまでに、クリスに儀式のことを説明しておくよ。まず朝に神殿で儀式がある。儀式が終われば私は王太子となり、夜に王宮で舞踏会が開かれ正式に発表される。その時にクリスと私は契約の指輪を授けられる。この契約魔法を破れば私は廃嫡されることになる」

「契約の指輪?」

「簡単に言えば、浮気防止の魔道具だよ」

「浮気防止?」

「王族も元々は妻が二人だったことは知っているよね?」

「はい、200年前に王族絶滅の危機があったと習いました」

「そう、妻同士が争った結果、継承権を持つ子供たちが次々に惨殺された…それから王は王妃一人のみ、王太子になる者も婚約者一人だけだ。それを守らせるため作られたのが契約の指輪だ。この指輪は結婚指輪としても使われるけど、王族の血統が浮気をすれば黒く染まり指輪は壊れる。そうなれば、廃嫡され王族ではいられなくなるんだよ」

「それは少し怖いですね…」

「私はクリス以外愛する気はないから、特に怖くはないよ」

 そっと手を取られ、左手の薬指に優しくキスを落とされる。手が心臓になった様にドキドキと胸が高鳴った。久しぶりに会えて、それだけでもいっぱいいっぱいなのに、甘い雰囲気に心が持っていかれて倒れそうだ。

「可愛い私のクリス、君も浮気は駄目だよ。もしそんな男が現れたら、氷漬けにしてファイアドラゴンの餌にしてしまうかもしれないからね」

 冗談ではないと、アルバート様の顔には書いてあるような気がして、私はこくこくと首を縦に振った。いつの間にか、アルバート様の頭上には【溺愛】の文字が増えていた。


 途中の町で1泊して、馬車は王都の王宮まで戻って来た。私はスコット侯爵邸には帰らず、ここで3日後の王太子お披露目舞踏会の準備をするそうだ。王太子の婚約者として正式に発表されるため、こちらもある程度ドレスや小物も気合を入れた装いにする必要があるそうだ。

「準備は全て整えられているから、念のため試着して不具合があれば手直しさせるからね」

 アルバート様はそう言ってから、自身の準備のため部屋を出ていった。私が通されたのは王太子妃が住まうための部屋で、初めは普通の客間がいいと断ったのだが、案内した侍女が困った顔をしていたので、仕方なく入室した。隣の部屋はアルバート様の部屋で、余計に緊張してしまうのだが、アルバート様は上機嫌で準備に出かけたのでとりあえずここでいいようだ……

「さあ、お嬢様、まずは入浴されますか?」

「そうね、移動で疲れたわ。まずは入浴して、それから試着に向かいましょう。ベス、手伝ってもらえる」

「はい、勿論です。その後に試着できるよう手配しますので、少々お待ちください。お嬢様のお気に入りのお茶を用意していますよ」

 王宮に着くと、そこには私の侍女のベスが待っていた。王宮で泊まるのは初めてなので、少し緊張していたが、ベスがいてくれてホッとした。アルバート王子殿下の配慮ですよ、とベスが微笑ましそうに教えてくれた。

 入浴後、豪華なドレスに緊張しながら袖を通し、お針子が手早く微調整をするのを眺めていた。王太子の婚約者だと言われて、あまり実感がわかなかったけれど、こうして準備をしていたらじわじわと実感がわいてきた。

 はっきり言って逃げたい…でもアルバート様とこの先の未来を望むのなら、このようなことに慣れていかなければいけないのだ。ベスの入れてくれた香り高い紅茶を飲みながら、私は王太子妃になる自分を想像して溜息をついた。


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