とある少年少女の分岐点1
※誤字報告ありがとうございました!!
ヤバいヤバいヤバい!!
明日の俺に懸ける癖が出てしまった!
でも、有効打がスグ思いつかないなら、変なこと言う前に議論を少し先延ばしするのも間違えではないと思う……思いたい!!
あの時、ちょっと考えさせて欲しいと言う一言を何食わぬ顔で捻り出せたのは、この数十年の失敗の最たる成長と言っていい。
(こんなに生きてて?この程度の成長とも言えるが……)
有識者だ……有識者に聞かねばなるまい。
「ーーと言うことで君に会いにきたのさ!ラフィ!!」
「どういう事でしょうか……殿下。訪れるならご連絡頂けるよう以前お伝えしたはずですが?」
「あー!まだ殿下って言う。2人の時は名前で呼んでとお願いしたじゃないか……。そんなに俺の事嫌いか……許せないか……じゃあ許して貰えるよう今日も声高らかに愛を伝えよう!ラフィ!す「アーノルドっ!わかりましたわ!わかってますから、もういいですから!ご用事があったのでしょう?!」
ふぅ満足。しいて言うなら愛称で呼んで欲しかったが、欲張りはよくない。
今日も今日とて俺は元気よく彼女に好意を伝えていた……ってそうじゃない。
有識者……なんてこの世にはいない。
知ってた。
だってこの不思議な現象、誰だって知らないに決まってる。有識者?いるわけない。
ただここで1つ言えるのは、俺が失敗すると彼女が死ぬかも知れないということだ。
俺の死はこの際どうでもいい。
あの2回の死は自業自得だ。
今回もあるのなら甘んじて受けよう。
俺は……それ程酷いことを彼女にしたのだから。
間違えてはいけないのだ。
そんな気持ちが先走って気がついたらここに……君の所に来ていたんだ。
下を向き、言い出そうと顔を上げても、いい言葉なんて出てくるはずもない。
死ぬかもしれないなんて怖がらせるような事を、どうやって核心を逸らし伝えればいい?
言い淀む俺を見ていた彼女が急に「ふふっ」と声を出して笑った。
「いいですよ、どんなお話でも。怒ったりしませんから聞かせて頂けますか?私、隠し事されるの好きでは無いのです。私の事が好きなのならば全て教えてください?」
目の前で笑う彼女――その笑顔は見たことないくらい眩しいものだった。
※※※
えぇええ……嘘でしょ……
殿下から聞かされた話は澄まし顔を危うく崩す程の話だった。
え!?私と同じ夢を見たことあるんですか?!
しかも2回?2回目ってなに?!?
その話が真実ならば…殿下2回亡くなってますよね?
一国の王太子が2回も死を体験するなんて……
私が驚きを隠せず沈黙していると、苦しそうな笑顔を向けてこう言った。
「驚いた?こんな話……信じて貰えないかもしれないが……」
いや、信じますよ。
だって1回目とされている話は……
ワタシモシッテイルカラ。
でも、2回目ってなんだろう?
1回目の話は私のスキル【幸福結末】が作用したんだと思う……んだけれど自信がなくなってきた。
いや、深く考えてはいけないのかもしれない。
スキルの事に振り回されるといい事はない。
殿下も自分の謎のスキルのせいかもしれないが確証はないと言っていた。
詰まることわからないのだから、追求してもしかたがない。それよりも!
「いいえ、信じます。私は……アーノルドの事を信じたいと思います」
「ラフィ!!……ありがとう!」
「それよりも!重要な気がするという、胸騒ぎの元凶となった出来事をお話くださいませ。」
「うん、わかった。俺は1回目の人生の際、どうしても君の気を引きたくて、ある男爵令嬢に恋人役をお願いしたんだ。もちろん、仮初の演技……偽の恋人である事は彼女も了承していた。私は……ちょっとしたヤキモチを君に焼いて欲しかっただけなのに、私の浅はかな考えは……取り返しのつかない結末となってしまった。」
「……」
はい……そのようですね。
知ってます。とても……よく。
「愚かな俺は……それをもう一度繰り返した。最初は夢で見た事が同じように繰り返されていると自信がなかった。このままいくと君との悲劇が繰り返されると確信した時は、もう貴族学校を卒業する年で……俺は毎日どうすればいいのかと悩んでいた。ただ、君が私たちに詰め寄られたあの日を繰り返さなければ大丈夫だと思ったんだ。それなのに……君は卒業パーティの前に自ら罪を認めて驚くほどあっさりと学園を去った。直ぐに追いかけたけど間に合わなくて……2回目の際、俺は君の死を聞いていないから、北部で本当に亡くなったのかわからない……賢い君の事だから、俺たちの碌でもない三文芝居の事を聞きつけて、安全な場所に避難したのかもしれない。1回目と2回目の大きな違いは、君が卒業パーティで断罪されなかった事だ」
殿下の話に出てくる、私の知らない2回目の悲劇は知らないはずなのに、体験したことがあるようなお話でした。
たぶん…おそらく、私は2回目の際、死んでなかったのではないでしょうか?
なんだかフォスター兄妹に頼み込んで匿って貰ってた気がします。
現に私はあの夢を見た後に、要らない貴金属などを売り払ってフォスター領辺りに隠れ家を作ろうかな?と計画していましたから……
でも今は、その計画は一時凍結中である。
「アーノルドは何がいけなかったとお考えになってますの?」
「……2回も失敗して俺も学んだ。間違えだったのは君にヤキモチを焼いて欲しいなんて浅はかな事を考えたからだと。だから俺は今回は回りくどい事をせずに、恥ずかしさを捨てて素直に気持ちを伝える事にしたんだ。だからもうあのような事は起こるまいと思うのだが……雲行きが怪しい。こんなに違う行動をしているのに、彼女が……俺の周りにまた現れそうなんだ……」
彼女……よーく覚えてますよ。
私をイヤな笑顔で見つめていたあの人のことですね。
リリィティア・コルビー男爵令嬢。
私にありもしない罪を着せて断罪劇を仕込んだ張本人でしょう?