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とある王子のラストチャンス〜ハッピーエンドになる為に④

あれから俺はありとあらゆる研鑽を積みながら彼女との仲を深めていった。


南に彼女の気配があれば、駆けつけてお茶に誘い

「あの…王宮に来る度駆けつけて来なくても結構ですが?」

と困惑気味に言われたがニコリと交わし一緒の時間を楽しんだ。


東に彼女の気配があれば馬車で追いかけバカンスのお供をした。

彼女からは

「あの、従兄妹との夏季休暇に殿下のお時間を頂くわけにはいきません!」

といわれたが彼女と親交深いフォスター伯爵家のジェイドとシェイナ嬢にはきちんと挨拶し俺の改心を知ってもらいたかったから許して欲しい。

ラフィがもし、もしも何かあって俺から消えたら徹底的に探す際に力になって貰いたいとい下心もある。


……前回必死に色んな修道院を探したが、俺は何となくこの従兄妹達が彼女を匿って居たのでは?とも感じている。


フォスター兄妹からは

「殿下、お久しぶりでございます。口ではこんな感じで言っておりますが心では殿下と共に夏を過ごせる事が嬉しいのでしょう。末永く仲睦まじくして頂きとう思います」


「殿下、ラフィニア姉様はとても聡明でお淑やかな淑女の鑑でございます。完璧であるが故に、姉様は辛いと言えぬことがあるやもしれません。そのような時は殿下の御心で姉様を包んであげて頂きとう思います。」


―仲睦まじく―

―辛いと言えない―


耳が痛いな。

この従兄妹達は俺の過去の所業を知っていて、忠告してくれているのだな。

怒られているうちが華だ。

しっかりと胸に刻んで

「心得た。俺はラフィ一筋、今も昔も、これから先もそれは変わらない。私のせいで自由を奪われている彼女を守って行くと誓おう。安心して見守って欲しい。」

2人の笑顔と――ラフィの照れた顔は宝物としよう!


スキルのせいなのか彼女が離れて行きそうな時は心がざわめいた。

追いかけて、見つけて、「好きだよ」と伝えると心のざわめきが落ち着いていった。

付きまとわれるラフィは困った顔をしていたが……許して欲しい。

俺はもう二度とあんな結末を迎えたくはないから。


そうやって過ごして行くうちに、季節は巡り貴族学校の入学が目の前に迫ってきた。


「殿下、今までご多忙の為に中々お傍に居る事叶いませんでしたが、学校入学に伴い私達も殿下のお傍にて共に学び研鑽したいと考えております。よろしくお願いいたします。」

シルベスターが深々と頭を下げながらそう言った。

前回もその前も俺はラフィと仲良く出来なかったから、この臣下候補達とばかり一緒にいた。

一緒に居すぎたが故に俺のアホな悩みを聞き……そしてあの馬鹿げた三文芝居に発展して取り返しのつかない事態になったのだ。

でも今回は違う。

俺がベッタリと一緒に居たのは愛しのラフィだし、アホな悩みは解消されて今は何の問題もない。だからあんな事態にはなりようがない。ないはずなのに……


※※※


「殿下、お願いがあるんです!スカーレット公爵令嬢とは性格真反対の明るくて元気なタイプの男爵令嬢がいるんですが、つい最近まで市井で暮らしていたみたいで、貴族の事が勉強不足なんだと言うんですよ。だから、淑女の鑑《妖精姫》の名を持つスカーレット公爵令嬢の御学友にしてあげてくれませんか?そしたら彼女だってあのお転婆がなおるかも知れないし、あの態度も改めるかもしれない!」


んん?!ラオルの台詞が変化した……

のになんか雲行きが……


「確かに、彼女のお転婆過ぎる態度は目にあまります。少し見本を見せてみるのもいいかもしれませんね。」

これを言ったのは、シルベスター……。


「ちゃんと趣旨を説明してさ!協力してもらうんだよ。貴族としての勉強が進んでない子がいるからお手本になってくれませんかー?って。そうすれば変な勘違いもないし?」

ラオルがさもいい事閃いた!との顔で俺に提案してきて…


「…勘違いなされると婚約に支障をきたしますからね」

そうそう、ちょっと引き気味ではあったけどテオドールも反対はしなかった。


ってえ??なんで?!

なんでちょっと展開違うけど結果同じ見たいな感じになってるの?


「ね、殿下!良いと思いません?スカーレット公爵令嬢にもいい刺激になると思うんです!いい刺激として少しでも伝わったら……可愛く見つめてくれるかも知れませんよ?」


「……。」


なんだろう、ここが分岐点な気がする。

何とは言えないが、こう、ほんとここで発する俺の一言でバットエンドが諸手を挙げて近寄ってきそうな……そんな予感がビンビンとする。


どうする……どうする俺!


間違えたら試合終了になる――そんな天下わけめの戦いの火蓋がこの一言にかかっている。


俺は……


「ちょっと考えさせて欲しい。俺の一存で決められないからな」


ポンコツ王子らしく結論を後回しにした。

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