とある公爵令嬢のハッピーエンド〜ハッピー…えっ!?どうした!バグったか?!
「愛しの君、悪いものなんて口にしてないよ。あ、ねえ、お願いがあるんだ。ラフィニアの事、ラフィって呼んでいい?愛称呼びって憧れててさ?まぁ実はこっそり呼んでたんだけど口に出すの恥ずかしくてさ!」
目の前の人はあれですかね、、殿下の影武者とかでしょうか。
それにしては全く似てない。
いや、顔とか声とかはね?本人と一部も違わないんだけど。
ただ、どうしたっても目の前の人が殿下だと思えない。
だってこの人、先週まで私の事毛嫌いしてたんだよ!?
可愛くないとか言っちゃってさ!
「あの…名前の事はわかりました。お好きになさって結構です…が、あの…質問したい事がありまして。いや…本来なら質問など私の立場でおかしいのかも知れませんが…」
「質問?いいよ!なんでも聞いて!もうね、ラフィの質問ならなんでも答えるから!なんでも質問して!そしてもっと俺の事知って仲良くして欲しい!」
「では…僭越ながら―――殿下はその…あの…」
「ん?俺は?」
いつの間にか手を取って私を見つめてくるこの人は一体ダレ!?
…えーい言ってやれ!
「あの、殿下は私の事嫌いでしたよね!?可愛くないとか愛嬌がないとかツルペタだとか散々言ってましたよね!?」
「えっ!?なにそれ!知らないのが混ざってるんだけど!?いや…可愛くないわけないじゃん?まだ10歳なのに《妖精姫》なんて2つ名がある君が可愛くないわけないじゃない。誰だよそんなこと言ったの…って俺だけど…撤回させて!この国一、いや世界一可愛いのは間違いなくラフィだよ!他の人が認めなくても俺はそう思ってるから!とにかくラフィは可愛いの!」
「でっでは…愛嬌がないとは?」
「いや、ほら…妃教育のせいであんまり笑わなくなったでしょ?寂しくってつい…。いや、よく考えたら色んな人がいる前でニコニコ笑われたらそれはそれで俺たぶん嫉妬して、なんで笑顔をふりまくんだ!とか言い出しそうだな?!いい!今のままでいい!あ、でもたまにはでいいから俺の前限定でいいからちょこっと…ほんのちょっぴりでも良いので笑ってくれると嬉しいです!」
え、この人そんなこと思ってたの?
知らなかった…いつも何か言いたそうにした後に可愛くないだのと暴言吐くから毛嫌いしてるものだとばっかり思ってた。
「じゃっ…じゃあ、ツルペタっていう「誰だそんな事言ったやつ!絶対俺じゃない断言出来る!そもそも華奢でホッソリしてて今にも倒れそうな儚い君が大好きだったんだ。壊れちゃいそうで近づくのも怖かったくらいだ。そんな大好きだから躊躇して距離取るくらいの俺が?ナイナイ!絶対言わないね!」
なんだろうこの人…こんな面白い感じの人だっただろうか?
記憶の中の殿下を探すけど、どの殿下もとてもツンケンしていて目の前の人物と合致しない。
私なんかこう、愉快な感じの夢でもみてる?
「俺は変わるんだ!ちょっとこう伝えづらいんだけど色々あって…一皮もふた皮も俺は剥けたんだ!大人の俺に、俺はなる!手始めに恥ずかしさに負けてずっと…ずっと言えなかった事を伝えるとこから始める事にしたんだ。だからね、ラフィ?」
殿下が私の手をとり跪く
「好きだよラフィ。俺の最愛。もっとずっと最初からこう伝えておけばよかったんだ…それだけだったのにね。俺バカだから気が付かなかったんだ…」
そう言うと殿下は私の手に優しく口づけをした。
「殿下…」
なんだろう…複雑な気持ちが込み上げてくる。
「まあ、さ?急に何言ってるんだコイツ?ってなるのわかるんだ。だってラフィの立場になったら、俺多分ムカついて顔引っぱたいてやりたくなると思う。先週と言ってること違うじゃないか!って。でもさ…ほんとの気持ちはこうなんだ。君への気持ちで溢れてるんだ…ってか凄いな?!羞恥心捨てたらなんでも言える様になったぞ!これはいいな!悶々とした日々よさようなら!こんにちは清々しい日々よ!あはははは!」
殿下は私の手を握りながら大きな声で笑い始めた。こんな顔…見た事なかった。
殿下…私の婚約者。
聖クライブ王国の王太子。
アーノルド・クライブ王太子殿下。
17年前私を捨てた婚約者が何故か私を好きだと笑っていた。