とある✕✕はヒロインを掠め取りたい
あの日出会った俺の『妖精』は遠い手の届かない所にいた。
可愛いあの子は王子様の婚約者で……俺の事なんて覚えてもいないだろう。
欲しくても手に入れることが出来ない、欲しいと言うことも出来ない苦しさは俺の中に黒い染みを作り、それは年々膨らんでいった。
ーーどうにかして手に入れたいーー
何かいい手はないだろうかと、ジクジクと考えていた時だった。
アイツに出会ったのは。
アイツは頭を揺らしたらカラコロと音がなるだろうと思われる程のバカだった。
もうすぐ貴族学校に入ると言うのに、未だに幼子が読むような小説を胸に抱き、
「王子様が迎えにきてくれるの!」
なんて途方もないことを平然と言ってのける。
これをバカと言わずして何と言うーそんな奴だった。
学校に入ったら王子様がいるかしら?
私の王子様は私に気がついてくれるかしら?
なんてそんな事ばかりいうアイツの相手をするのに程々疲れてきた時にーーふっと思ったのだ。
コイツ……使えるかも知れないと。
いろんなことが駆け巡った。コイツを使えばもしかして……そう考えたら沢山の結末が頭の中で駆け巡ったのだ。
「なぁリリ、お前の王子様について良いことを教えてやろうか?」
俺はコイツを使ってやることにした。
なぁリリ?おバカなリリ?
王子様に会いたいのだろう?
じゃあ頑張ろうか……王子様とハッピーエンドをむかえたいのだろう?
なら俺が手助けをしてやろう。
王子様をきちんと射止めろよ?
お前がソレをやり遂げたなら……零れた雫を拭うように、俺があの子を掠め取ってやるのさ。
俺はいつでもあの子に優しくあろう。
あの王子と反対に。
王子は数年前から思春期を拗らせて彼女と上手く行ってないなんて噂もある……最近は何だか王子が変わって彼女にベッタリだという話も聞いたが……まぁそこは情報収集して補おう。
どういった様子でもかまわない。
俺はあの二人に亀裂を入れたいんだ。
小さい亀裂が入っているのならその亀裂を力でこじ開け大きくしよう。
亀裂が無いのなら出来るように力を振るおう。
あぁごめん、愛しい君。
君は俺がこれからする事で傷つくだろう。
もしかしたら陰で泣くかも知れない。
でも許して欲しい。
これは必要なことなんだ。
君と俺とのハッピーエンドの為にどうしても越えなきゃいけない壁なんだ。
辛いのは君だけじゃない!
俺だって君を傷つけることで苦しく辛いんだ……だからお互い様だと許してくれないだろうか?
過程がどうであれ、結末さえ綺麗なら……それは完璧だったと言えるだろう?
ハッピーエンドであればいい、俺と君との幸せな結末を書くよ。
見ててね、俺の愛しい『妖精姫』




