とある『少年・少女』の…?
「ほら?言ってごらんなさい?」
あぁ、なんて綺麗に笑うんだろう。
悩んでいる事も、言い難い事も、彼女の笑みを見たらどんな人も素直に話してしまうだろう
――そんな笑顔だった。
「――――に…言われたんだ…完璧な君と一緒に居ると息がつまるだろうと。そんなこと思った事もないのに。だから、リリィティア嬢との交流で息抜きしては?とそう…言われたんだ」
僕が彼の名前を告げたあとも
彼女はやっぱりねって顔で俺に微笑み続けた。
※※※
思い出します。
あの時は、殿下のことなんて何とも思っておりませんでしたから?『ご親切な方』からのお優しいご忠告なんて聞こえていても右から左へ流れておりました。
えぇ、お二人が仲良くしているなんて、わざわざご報告頂かなくても見ればわかりますもの。
教室で、学食で、裏庭で―――ありとあらゆる所で繰り広げられるお二人の仲睦まじい様子。
親密であるなんて、見てればわかる事でした。
あの時も私にわざわざご忠告してくれた優しい方は貴方でしたね?
ふふふ?どういう意図かはわかりませんが何かが見えてくるようですわ。
えぇ、見えて無かった何かが。
よぉおく見えてくるようです。
※※※
幼い頃からお姫様になりたかった。
負けない元気な女の子が紆余曲折あってお姫様になる――そんなお話が大好きだったの!
虐められた女の子はどんなに苦しくてもけっしてめげないで、困難に立ち向かい王子様と心を通わすのよ!
王子様は王子という立場から自由に憧れていて、女の子の瞳に自由を見て彼女の事を愛するようになるの!素敵!!
でも現実はどうしても上手く行かなくて。
私は下町の小さな長屋に住む貧乏な女の子だったし、お母さんは毎日朝から晩まで泥々になりながら働いても裕福にならない
―――無間地獄のような毎日だった。
王子様なんて夢のまた夢で小説は小説でしかなくてひたすら襲いかかる現実は辛い以外のなんでもなかった。
そんな辛い毎日を送っていた私に、追い討ちをかけるように――お母さんが死んだ。
え?私はどうしたらいいの?
これからどうやって生きればいい?
お母さんは私を特別な子と言って
「いつか貴方には迎えがくるから…」って意味深な事言ってたから、私いつかお姫様になってここから出られると思ってたのに!
お母さん!私どうしたらいいの?
このままじゃお姫様になれない!
私の王子様は?!いつ会えるの!!
王子様!王子様!王子!
迎えにきてよ!
私…私これからどうしたらいいの!!!
※※※
俺が初めて彼女に会ったのは、8歳の時だ。
出不精の母親に連れられて、何処かのガーデンパーティに参加した。
そこには似たような歳の子供が何人かいて、子供たちは好きに遊びなさい?と庭に放たれた。
最初は近い歳の男の子と遊んでたんだけど、よく見ると誰とも混ざることなく、1人でいる女の子が居ることに気がついた。
彼女の周りには近寄り難い、澄んだ空気が流れていた。伏し目がちな目はこぼれ落ちてしまうんではと心配するくらい大きくて綺麗。
流れる髪は銀糸のようでキラキラしていて
―――絵本から出てきた妖精かと思った。
俺は勇気を出してその妖精に声をかけたんだ。
「ねえ、なんで1人でいるの?」
「……別に好きで1人なわけではないわ。誰も私とお話してくれないから1人でいるだけよ」
「でも、君は――」
あの子の特別な子なのだろう?なんで?
君はあの子と一緒に居るべきなのに?
「笑わない私の事など嫌いなのですって。私、笑ったのよ?お母様に褒められた『完璧な笑顔』で笑ってあげたのに…笑えと言うから笑ったのに。じゃあ――どうしろっていうのよ」
最後の声は投げやりで…消え入りそうだった。
その時思ったんだ。
この綺麗な妖精が欲しいと。
傷付いている彼女はこの世の中のどんなモノより綺麗だった。綺麗だと思ったんだ!
他には何も要らないんだ。
この子が欲しいこの子だけが…俺の妖精…
俺の妖精――俺だけの妖精だと。
異なる4人の視点からのお話でした。
1人はポンコツ王子
1人は公爵令嬢
1人はお姫様希望者
もう1人は………?




