とある王子のラストチャンス〜ハッピーエンドになる為に⑤
「ノルド様〜見てください!噴水です!あ!!お花も咲いてるー綺麗です〜」
昼休みの一時を学校の裏庭で皆とゆっくり過ごそうーそんな話だったはずなのに、ゆっくりと過ごすってなんだっけ?って位に俺の心臓は早鐘のように鼓動してる。
腕にまとわりつきながらキャッキャとはしゃぐはリリィティア・コルビー男爵令嬢。
なれない貴族社会を教えるとの話で紹介を受けたが……今になって思うけど慣れてないってレベルではないと思う。
過去の俺は彼女の奔放な態度も演技だと思ってたから、こんなはしたない態度をとらせてしまい申し訳ないと心の中で懺悔していた。
彼女の10分の1でもラフィに肩の力を抜いて欲しかったから。
俺がこの自由奔放娘を許しているのだからラフィも少しは力を抜いていいんだよ?を遠回しに伝えていた――つもりでいた。
あぁ死んだほうがいいな俺……。
いや、話はそれたが!今の俺はラフィとの仲は良好。
リリィティア嬢は演技をする必要は皆無……って事はこの失礼極まりないはしゃぎっぷりは素ってことなのか――すごいな……。
婚約者がいる異性の腕に許可なく触れ、愛称で呼び(無論無許可)大声ではしゃぎまくる……大丈夫か?コルビー男爵家は。
学校に入る前に学ぶ時間も少しはあっただろうに、それなのにこの出来栄えか。ありえない。
あぁ……リリィティア嬢、過去2回も君は俺と似たようなシチュエーションを繰り返したが、望んでない3回目にして……やっと本来の目標を達成したよ。
俺は今、後ろを振り向けない。後ろにいるはずのラフィの目は見えていないのに……何故かな?絶対零度の波動を感じるんだ。
多分今振り返ったら、俺は冷気で死ぬかもしれない。いや?ラフィの冷気で死ぬなら本望か?
悩む……悩むが……今は死ねぬので振り返るのは止めておこう。
学校に入学して早2週間。最初のうちは顔合わせやら授業の事やらで忙しかったが、落ち着いてきたと思ったら途端に始まったのがリリィティア嬢からの「教えて攻撃」だった。
事ある毎に
「あのぉ、教えて欲しいんです!」
と何故か俺の所にくる。
最初は何故俺に聞く?君、ラフィに教えて貰う予定じゃなかった??と疑問でいっぱいだったがーー無下にもできず。
都度都度対応していたら今のような状態になっていた。
ラフィは最初のうちだけ
「リリィティア嬢、異性との適切な距離をもって接する事をお勧めいたしますわ」
「この学校の殿方には婚約者がいらっしゃる肩もおられます。必要以上に親しげにすると勘違いされ、いらぬ問題を起こしたりしますわよ?」
と言葉を噛み砕いて説明もしていたが、一向に従う気がない彼女に匙を投げたようでそれ以降何も言わなくなった――
「違うからね!俺はラフィ一筋だからね!勘違いとかしてないよね!?俺は嫌だよ!もう沢山だから!君に勘違いでサヨナラを告げられるのはもう耐えられないからね!」
「……ふふっ」
「なに今の間は!?わかってる?わかってるんだよね?!」
「わかってますわ。アーノルドは心配性ですね」
週末、俺はワガママ王子の特権を活かしていきなり彼女の邸に行った。もう、ほんと急な訪問なんてマナー違反だとは思うのだけど我慢が出来なくて。
どうしても会いたかったんだと謝ったら、
「来ると思ってましたわ。」と笑われた。
そして弁明大会となったのだ。
「繰り返すかもしれないけど、俺は愛称で呼ぶのも許してないし、むやみに触るのも許可してないし、なんなら異性の俺ではなく同性であるラフィに聞いてはどうか?と促したりもした!」
「はい、わかっておりますわ。ふふっ何度も仰られなくても、きちんと伝わっておりますから。」
俺は慌てふためいてるというのに……この婚約者は余裕である。なんなら俺の慌てっぷりを見て楽しそうでもある……なんで!?
「殿下がこんなに可愛い人だなんて……私知らなかったものですから、ほんともったいない事をしてましたわね私は。」
意味深に笑う彼女は可愛くてそしてとても綺麗だ。
この見慣れぬ表情にドキドキしているのも多分見抜かれているのだろうな。




