とある少年少女の分岐点2
俺は、全ての悲劇を話してしまった。
目の前にいる彼女は、悩んだ顔のまま止まってしまっている。
俺の話を信じるとは言っていたがこんな突拍子もない話、本当に信じてくれたのだろうか。
悩む彼女を見ながら……悩んでる姿も可愛いな!
なんて俺はひたすらアホな事を考えていた。
ラフィは悩んでる姿ですら可愛いのに……
俺の胸騒ぎの原因であるリリィティア・コルビー男爵令嬢は、市井育ちの愛嬌のある女の子だった。
元気ハツラツで、いつも笑顔。たまにプク〜とむくれたりして表情のコロコロ変わる、そんな女の子。
ラオルは仕切りに可愛い、可愛いと彼女を褒めていたが…確かにその仕草などは可愛らしいものがあっただろう。
ハニーブラウンの緩やかなウェーブする髪を、日差しの下で煌めかせながらはしゃぐ彼女は、貴族学校の中でも目立つ存在だった。その異質さを物珍しがって《可愛い》という者は確かにいた。
そう、所詮……愛玩動物としての可愛いなのだ。
それに、彼女の可愛いはこう、作り物のようで苦手だった気がする。
本物の可愛いはなラフィの為にある!
俺が愛を告げる時に困る顔も、俺が見つめると冷たい顰め面で横を向き……でも耳が真っ赤になってる所も!
可愛い!可愛い!もう全部が可愛い!
可愛いのはラフィただ1人であって俺の全可愛いはラフィだけにある言葉だった。
……だから演技とは故、ラフィに向けて
「可愛げのない、彼女を見習ったらどうだ?」
なんて言わなきゃならなかった時は自室に帰ってから自己嫌悪と、それでも自分を見て欲しいと言う浅ましい気持ちとで胸が苦しくて仕方なかった。
――思い出すだけで救いようがない。
こんなにも愚かな男がいるだろうか……いや俺だ。殺してくれ……2回も死んだけど……2回死んだくらいで許されるのか?この俺の罪は……
いやいやいや、俺の断罪は甘んじて受けるが全て終わった後にして欲しい。とりあえずは学校を卒業したいんだ!……まだ入学もしてないが。
とりあえず、この胸騒ぎをどうにかしたい……
※※※
イヤな顔で笑ったあの女……忘れる訳がない。
殿下に撓垂れ掛かり潤ませた目で
「あの時は……こわっっ怖かった……怖かったんです……」
なんて震える声で言い、さも自分は一番の被害者です!なんて感じで。
はいはい、可哀想ですねー。そうですねー。
って気分でいっぱいだった。
制服が引き裂かれた?教科書が捨てられた?
もう1ミリも身に覚えがない。
ちょっとでも身に覚えがあったなら、まだ気持ちよく自白したのに。
制服が破かれたのも教科書が捨てられたのも嘘だなんて言わないけれど、私はやってない。
そもそもする必要がない。
彼女を虐める理由なんて私にはなかった。
あの夢の私は殿下の事なんてこれっぽっちも好きじゃなかったんだから。
繰り返される殿下と彼女のイチャイチャを学校内で見ても「ふーん、青春してますねぇ」くらいの気持ちしかなかった。
逃げられぬ政略結婚を直前に控えてるのに、足掻こうとしている殿下にちょっとした尊敬すらしていた。
私なんてそんな情熱すらなく流されるまま生きていたから。
そんな状態だったのに、まさか私にヤキモチを焼かせたい!なんていうクダラナイ発想からくる三文芝居だったなんて驚きだった。
ごめん殿下!私その芝居に興味すらなかった!!
ただ、そんな三文芝居が悲劇へと繋がったのかと思うと……私の死はなんだったのかと思う。
言い表せない気持ちで胸の中が掻き回されたようだった。
1つ言えるのは許されるようなことではない、それだけだ。
だけど……嘘か誠かわからないが
え、この人私の訃報聞いて後追いしちゃったの?!しかも2回も?愛が……愛が重い。
自業自得と指さして笑う私もいる。
でもこの数年間、私にしつこく『好き』を言い続ける彼に絆された所もある。
許せない……けっして許せないけど……
話し終わり真っ青な顔で
「許されるような行いではなかった。王族として……いや人として踏み越えてはいけない線を越えてしまった」
そう謝る殿下を見たら、この顔が見れた事でとりあえず今は良しとしてやるかと思えてしまった。
許してないので!ここ重要ですよ!
たまにこの話を蒸し返してションボリ顔を見ることを彼への罰としたい所存である。
うん!決めた!
「アーノルド、そのお話受けてください」




