1 プロローグ
私、日比野愛依には三人の親友がいる。
一人は士崎怜子。黒のロングが美しく、アニメや漫画、ゲームの知識が豊富な頭のいい子。
「愛依ちゃん……今日は愛依ちゃんが読みたいって言ってた漫画持ってきたの……今凄い人気のやつ……え? いいよ気にしなくて……愛依ちゃんがわたしの好きなものを好きになってくれるの、わたしも嬉しいから……!」
ささやかな笑みがとてもかわいらしい。
もう一人は御園茉莉。赤のセミロングで、綺麗なプロポーションをしているスポーツ女子。
「ははっ! 愛依ったらもうヘバったのかぁ? しょうがねぇなぁ、ペース合わせて一緒に走ってやるよ! なーに、気にすんな。アタシは愛依と一緒に走りたいから走ってんだ、それがズレちゃあ楽しくないだろ? 運動は楽しくないとな!」
ニカっとした笑いはまるで太陽のようだ。
そして最後に、櫻田ユミナ。金のウェーブでとてもかわいらしく、周りを和ませるムードメーカー。
「やっほー愛依っちー。元気ー? うちは元気だよー! え? それはいつものことだって? そだねー! あははー! でもねー、うちは愛依っちと一緒のときだといつもよりずっと元気になれるんだよねーにはは!」
まるで小動物のようでとてもキュートな笑い方をする。
三人とも、私の大切な友人達だ。
私と彼女らはいつも一緒で、この友情は絶対だと思っていた。
思っていたのに……。
「め、愛依ちゃんはわたしと一緒に行くの……! 二人は、休んでていいから……!」
「は? アタシと一緒に行くに決まってんだろ? 愛依を守れんのはアタシだけだからな」
「うーん、いっそのこと、外に行くのは怜子っちと茉莉っちだけでいいと思うんだよねー。んで、うちと愛依っちが二人で待ってるの。それならいいじゃん?」
三人と物凄い険悪な雰囲気でお互いを牽制している。
しかも、その渦の中心は私だ。
更に、おかしいのは雰囲気ではない。怜子は黒のローブ、茉莉は銀の鎧、ユミナは緑の軽装をしている。まるでコスプレのような、派手な姿。
おかしな格好という意味では、私も例外ではない。
私は白いローブをまとい、そこからポニーテールを垂らしている。
一見すれば仮装集団だが、私達がしているのは決してコスプレではない。この格好はここの――いや、この世界では当然の格好なのだ。
私達四人が今いるのは日本でも、世界中のどこの国でもない。
地球とは違う世界――異世界だ。
なぜ私達が異世界にいるのか。そして、その異世界でどうして私は友人達のいがみ合いを目の当たりにしているのか。
それを説明するには、少し時を遡らねばならない。
「どうしてこうなった……」