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DTのまま40を超えた僕が魔法使いから○○になった話  作者: 矢車 兎月(矢の字)
第三章

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望まぬ再会

 翌日僕達は朝から全員で冒険者ギルドへと向かった。その理由はもちろんダンジョン城攻略クリアの報告をする為だ。

 冒険者ギルドはいつものように賑わっている、けれど今日はオロチは楽園の方で留守番なのでそこまで目立つ事はない。

 やっぱりオロチって目立つんだよな、身長も周りに比べると頭一つ分抜けているし、見た目も見るからに亜人という姿なのだから当然と言えば当然なのだろうけど。

 ルーファウスがいつものようにギルドマスターを呼び出している間、僕が何とはなしに壁に張られている依頼書を眺めていたら「少年、ちょうどいい所に来たな、おはよう」と、涼やかに声をかけられた。その声は女性の声で、この街に女性の知り合いなんてほとんどいない僕は慌てて振り返る。


「あ、マチルダさん、おはようございます」


 僕に声をかけてきたのは従魔師ギルドの支部長の奥さんであるマチルダさんだ、相変らずお美しいな。そしてそんな彼女の横には彼女の従魔と思われる犬(?)がびしっとお座りしてこちらを見ていた。


「それにしてもこんな所で会うなんて、マチルダさんも冒険者だったんですか?」

「いや、私は冒険者ではないよ。今日はある要人の護衛でね」


 そう言って彼女は彼女の傍らに座る真っ白な犬を撫でた。その犬の体長はとても大きい、恐らく身長は僕と同じくらいはあるだろう、犬種で言えばグレート・ピレニーズのような感じだ。


「もしかしてこの子って……」

「ああ、私の従魔のフェンリルだ」


 ああ、やっぱり! めっちゃ可愛いし格好いい! しかもモフモフだ!! いいな、いいな、フェンリル、もふもふ!


「あの、少しもふらせていただいても……?」


 僕の言葉にマチルダさんは傍らのフェンリルを見やったのだが、フェンリルは、ツン! と横を向いてしまったので、どうやら僕は振られたみたいだ。残念。


「君の従魔は今日はいないのかい?」

「ライムはいますよ、オロチは家で留守番です」


 僕はライムを懐から取り出して、フェンリルの前で「仲良くしてやってね」と、声をかけると、フェンリルはライムには多少興味があるようで、視線をこちらへと向け鼻先をライムへと寄せた。けれど、しばらく匂いを嗅いだ後、やはりまたツン、と横を向いてしまう。少し気難しい子なのかな?


「そういえば、マチルダさんは護衛の為にきているんですよね? 僕なんかと話してていいんですか?」

「彼女は今ギルドマスターと面会していてね、私は待機中さ」


 なるほど。それにギルドマスターも面会中となると、こちらもその面会が終わるまでは待ちぼうけという事か。


「君達は今日は何か依頼を受けに?」

「いえ、逆ですね。依頼を終えたのでギルドマスターに報告に来たんですよ」

「依頼の報告を直接ギルドマスターに報告するの? 受付じゃ駄目なのかい?」

「ギルドマスターからの直接依頼なので報告も直接なんですよ」

「へぇ、ちなみにその依頼内容を聞いても?」


 マチルダさんのその言葉に僕は瞬間逡巡したのだけど、どのみちダンジョン城完全攻略の話は遅かれ早かれ街中に知れ渡るのだろうし、いいかと思って僕はダンジョン城を攻略した事を彼女に告げた。


「え、ダンジョン城? あそこを攻略したの?」

「はい、ダンジョン核も封印して完全攻略です。あ! でも誤解しないでくださいね、僕がダンジョンを攻略した訳じゃなくて、僕の師匠のルーファウスとアランが頑張ったんです、僕は少しお手伝いをしただけなんで」


 マチルダさんは「へぇ」と一言唸るように言って「まさかとは思っていたけど、本当だったんだ」とそう言った。彼女が言わんとしている言葉の意味が分からず僕は首を傾げる。

 その時だ、何やら慌ただしい足音が響いてきて、僕達はそちらへと視線を向けた。足音の主は少し厳つい感じの男性で、何故かその後ろをギルドマスターが追ってくる。男性の着る衣装は真っ白で、裾も袖も長く動きずらそうに見えるのに彼はそんな事は微塵も感じさせず、ギルド内をぐるりと見渡した。


「何かあったんですかね? あの人、誰……」

「おおい、こっちこっち」


 僕がマチルダさんに問いかけようとしたら、逆に彼女は手を挙げて男性に声をかける。この人、マチルダさんの知り合い? あ、要人ってもしかしてこの人のこと? でも、さっきマチルダさんは『彼女』はギルドマスターと面会していると言っていたように思うのだけど……

 男性はマチルダさんに呼ばれると、厳つい顔をそのままに僕達の方へとやって来ようとするのだが、そんな彼の身に付けるローブを引っ張るようにして「彼は違いますから!」とギルドマスターが進行の邪魔をしている。

 あれ? 何だかこれ、凄く嫌な予感がする……


「タケル!」


 僕を後ろに庇うようにして僕の前に滑り込んできたロイド、厳つい男性の後ろにはルーファウスとアランの姿も見える。けれどそんな事はお構いなしで男性はマチルダさんの前へやって来て「その少年が……?」と彼女に問うた。


「ドラゴンを従える従魔師という意味なら、そうだよ」


 男性はロイドの背後に隠れる僕を無遠慮に睨み付けるような視線で眺め回し「こんな子供が」とぽつりと零した。

 何なの? なんだよ! 僕は何も悪い事なんてしてないぞ!


「貴方、一体何なのですか? 彼は私の愛弟子です、どういう用件か知りませんが彼に用があるのなら私を通していただきたい」


 今度はルーファウスが僕達と男の間に割って入ってくる。


「白銀のハーフエルフ、貴方がAランク冒険者の魔術師ルーファウスか」

「だったら何だというのですか!」

「私の部下達をずいぶん虚仮こけにしてくれたと聞いているけれど?」


 男は僕から視線を逸らし、今度はルーファウスを睨み付けた。


「何の事だか分かりませんね、私は貴方の部下になんて心当たりはありませんし、用もない」

「そちらに無くてもこちらにはある、だが貴方がここに居るという事は、彼女の探し人はその少年で間違いないのでしょう」


 探し人……ああ、嫌な予感が現実のものとなろうとしている。

 男の纏う真っ白なローブは聖職者の着る祭服に似ている気がする、少なくともこんな汚れやすく動きずらそうな服を着た冒険者なんて僕は見た事がないのだ、彼は確実に冒険者ではないと思う。

 僕はロイドの後ろから恐る恐る周りを見渡すと、彼の後ろにギルドマスターと、もう一人見知った顔がある事に気が付いた。

 最近の僕はすっかり油断していたのだ、何事もなく3年間、平和に呑気な生活を送れていたから、もう大丈夫だと思ってしまっていた。だから従魔師ギルドの誰一人にも僕が僕である事を口止めさえしていなかった。

 でもさ、だけどさ、そんな所にまで手が回っているなんて普通思わないだろう?


「ようやく見付けましたわ」


 僕を見付けた彼女は綺麗に微笑む。僕は全く会いたくなかったのだけど、向こうはそうは思っていなかったようで、僕の前まで歩いて来ると、すっと膝を折りドレスの裾を摘まみ上げると彼女は僕に頭を下げた。


「お迎えに参りました、聖者様」


 僕の前に現れたその女性はもう見間違えようもなく、僕が現在この世界で一番会いたくなかった人物、聖女エリシア・グランデ様だった。



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