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新たな住人との出会い

 冒険者ギルドから歩くこと数分の場所にその建物はあった。そこは冒険者用の宿屋で、現代風に言えば冒険者たちのシェアハウスだった。

 基本的に冒険者と言うのはひとつの街に定住せず、世界を周り冒険する。もちろん家庭を持って定住し、その街を拠点にして働く者も大勢いるのだが『冒険者』というものは冒険をするのが生業であるので、特に若い冒険者は住まいを定めていない者が多いのだそうだ。

 その街への滞在が短ければ宿をとる事もあるそうなのだが、一ヵ月以上滞在するようであれば宿をとるよりこういったシェアハウスに部屋を借りる方が割安になる、なのでアランとルーファウスは現在ここで暮らしているのだそうだ。


「あれ? アラン、何その子? アランの子?」


 玄関を入ってすぐの広間は多目的ホールのようになっているようで、そこでは冒険者たちが思い思いにたむろっていた。アランに抱かれた僕を目敏く見つけた若い女性冒険者達が色めき立って僕達に寄ってくる。


「わぁ、可愛い。僕、お名前は?」

「た、タケルです」

「何処の子? アランの隠し子? 耳はないみたいだけど……」


 アランの腕から攫われて髪の毛をわしゃわしゃと掻き回されて抱き潰される。お姉さん、胸があたってますよ! しかもすごく良い匂いする!

 は! これはいよいよもってモテキ到来!? 魅了スキルが発動されてしまっているのか!?

 三人の若い女性冒険者からもみくちゃにされながらの質問攻め、アランは「少しの間その子見といて」と僕を置いて何処かへ行ってしまった。


「私の名前はラナ、こっちがルミナで向こうがアリサよ、よろしくね、タケル」


 僕を抱き膝に乗せて撫で回しているラナと名乗った女性はアランと同じ半獣人だった。頭の上には長いウサギ耳が立っていてとても可愛らしい。

 右隣のルミナさんはルーファウスと同じような長いローブを纏っているので恐らく魔術師だと思う。とてもセクシーなお姉さんだ。

 左隣のアリサさんは人族かな? この三人の中では少し印象が地味なのだが落ち着いた雰囲気の美人さんだ。


「タケルは何処から来たの? アランとはどういう関係?」


 矢継ぎばやな質問に僕は今日あった出来事を彼女たちに話して聞かせる。するとあからさまにホッとしたような表情を見せたラナさんが、またしても僕を撫で回す。


「あら、アランの隠し子じゃなかったのね」

「アランにそんな器用な事できる訳ないじゃん、それに耳だってないんだから人族だよ」

「でも、半獣人と人族のハーフは半分の割合で人族になるのよ」


 僕がアランの子供ではないと分かってホッとした様子のラナさんに、畳みかけるルミナさんとアリサさん。


「今回は違ったとしても、ぼさっとしてたら他の誰かに奪われちゃうわよ、ラ~ナ」

「べ、別に私はそんなんじゃないし!」

「またまた、可愛いわね、ラナは」


 ルミナさんが揶揄うように忠告し、アリサさんはラナさんの頬をつつく。

 なんか、僕でも分っちゃったよ、もしかしてラナさんはアランの事が好きなんだね? いやまぁ、年頃の男女が同じ屋根の下暮らしていて、何事もないと思う方が野暮な話だったよ。

 しかも目の前でこんな話をされるなんて、僕なんて全くの対象外……ってか、10歳の子供が彼女たちの恋愛対象に入ってたらそれはそれで問題だろうしな。


「皆さん仲良しなんですね」

「私達はこの三人でパーティなのよ。時々アラン達と一緒に組む事もあるわ」


 なるほど、そういえば先程アラン達も言っていた、ワイワイしてて楽しそうだな。僕はあまりこういう集まりとは縁がなかったけど、大学のサークル仲間とか、きっとこういう感じなんだろうな。


「タケル君も冒険者になったらここで暮らすの?」

「え、っと……お値段次第です。僕の稼ぎで部屋を借りる事できるんでしょうかね?」

「ここは期間が決まっていれば纏めて数か月分借りる事もできるし、日割り清算もしてくれるのよ、値段も宿屋より割安だし、他を探すくらいならここが安全だよ。毎日薬草採取してれば一日の宿泊費くらいにはなるし、なんなら私達と一緒にちょっと難易度の高い魔物狩りして稼いじゃえば、しばらくはここに居られるはずよ」


 ほおほお、一日の宿泊費は薬草採取で賄える……と。でも、着替えもなし、食費もなし、雑多な費用は他にもかかるだろし、そう簡単にはいかないだろうな。なにせスライムを倒すにしても皮の胴着は必須だって話だし、まずその辺を手に入れないと魔物退治なんて全然無理だ。


「えっと、とりあえあず明日の試験に受かったら色々考えてみます」


 僕がそう言うと彼女たちは「頑張ってね」と僕を応援しつつ色々な物を食べさせてくれた。どうやら彼女たちはここで皆で食事をしていたみたいだ。異世界での初めての食事は決して美味しいものではなかったけれど、どれを見ても食べても珍しいものばかりで僕は戸惑いながらもとても楽しく過ごさせてもらった。

 そんな感じでしばらくすると、アランがひょっこりと顔を出し「なんだ、飯食わせてもらったのか」と、笑っている。


「アランも一緒に食べようよ、足りなければ作るし」


 どうやら多目的ホールの奥には共用のキッチンもあるようで、ラナが嬉々としてアランを誘い込む。それならばとアランも仲間に加わって、そのうちに他の冒険者たちも数人仲間に加わり、まるで宴会のようになってしまった。

 酒が入ったあたりで子供がこんな所に居てもいいのだろうか? と思いつつも冒険者の若者たちはとても気さくで良い人達ばかりで、とても楽しい。

 けれど酒の飲み方がまるで流し込むような飲み方でハラハラする。急性アルコール中毒とか大丈夫なのだろうか? 男性陣はその辺で潰れていてもまだ許容範囲だけれど、女性陣も一緒になってはさすがにまずい気がする。


「ルミナさん、こんなとこで寝ちゃダメですよ、寝るなら部屋に戻らないと! それにアリサさんも起~き~て~!」


 僕の呼びかけに「タケル君、お母さんみたぁい」と、ルミナさんはけたけた笑いだすし、アリサさんは「子供体温あったかぁい」と僕に抱きついてきて離れない。どうしてくれようか、この酔っ払い共……


「おっ、坊主、女の子に囲まれてハーレムだな。将来有望だな、飲め」

「ちょ……僕はまだ飲んじゃ駄目でしょう? それに僕、お酒は飲めませんから!」


 お茶が入っていたはずのグラスにアルコールが注がれて僕は溜息を零す。皆はめ外し過ぎ、というかこれが普通の飲み会なのか? 僕が今まで参加した事のある飲み会と違い過ぎる! 

 老若男女問わずに酔っ払いが潰れだした頃「部屋に行こうか」とアランが僕を促した。

 ちょうどラナさん達も部屋に帰る気になったようなので僕が「おやすみなさい」と頭をさげると、また「可愛い~」と抱き潰される。酒の入った彼女たちの力は手加減がなくて窒息するかと思ったよ。



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