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DTのまま40を超えた僕が魔法使いから○○になった話  作者: 矢車 兎月(矢の字)
第三章

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突然のアクシデント

「タケル待て、俺も一緒に行く」


 冒険者ギルドを出ると、ロイドが僕を追いかけてきた。アランとルーファウスはダンジョン攻略の進捗報告があるので、その場に留まったのだろう。

 僕が「冒険者ギルドで待っててくれてもいいのに」と言うと「あの場に俺が居ても何の役にも立たないだろう、それにお前一人じゃ心配だし」と、相変らず僕を子供扱いだ。


「ロイド君はいつまで経っても僕のこと子供扱いだよね、今はオロチもライムもいるから平気だよ。それに僕だってDランクの冒険者なんだから、そこまで心配しなくてもいいのに」

「それは分かってるけど……」


 ロイドが少しだけ不貞腐れたような表情を見せて、瞳を逸らす。


「ってかさ、お前、俺がどんな気持ちでお前に告白したか分かってんのか!? ちったぁ意識されるかと思ったのに、微塵も態度が変わらないってどういう事だ! 全部言わなきゃ分からないのか、一緒にいたいから付いて来た! それくらい分かれよ!」


 何故か怒涛の勢いで怒られて、思わず「あ、はい、すみません」と謝ると「謝るな!」と、また怒られた。


「そういうの、言外に俺の事は眼中にありませんって言われてるみたいで傷付くんだからなっ」


 思春期の少年の心は繊細だ、傷付けてしまったのなら大変申し訳なく思う。けれど、告白はされたものの、仲間の手前そんなにあからさまに態度を変える訳にはいかないだろう? まぁ、それ以前に僕があまり意識をそちらに向けないようにしていたのも事実だけれども。


「分かってる、これは俺の八つ当たりだ。お前はホント年下の癖にクールだよな。はぁぁぁぁぁ……俺だってこんな事言いたい訳じゃねぇんだよ。ああ、くそっ、格好悪いなっ」


 自分で言った言葉に自分で凹んでしまったロイドはまだまだ多感なお年頃だ。僕はそんな彼の姿を見て、そっと手を差し出した。


「久しぶりに手を繋いで行こうか、お兄ちゃん」

「お兄ちゃんってなんだよ、お前今まで俺の事、そんな風に呼んだ事一度もないだろ」

「嫌ならいいけど」

「誰が嫌だって言ったよ!」


 ロイドが僕の手を掴んで歩き出す。こうやって手を繋いで歩くのも思い返せばずいぶん久しぶりな気がする。僕は彼らと出会った3年前を思い出す。あの頃の僕は完全に子供扱いで、いつも抱き上げられるか手を繋がれるかのどちらかだったけれど、それも最近はなくなって久しい。

 何だかんだで僕も大きくなったからな。


『なんだ、お前等はそういう仲なのか?』


 僕たちと付かず離れず歩いていたオロチからの唐突な質問に「そういう仲って?」と、僕は質問に質問で返してしまう。


『そいつはあるじつがい候補って事だろう?』


 番!? オロチからのまさかの言葉に僕は言葉が出てこない。


『どっちが孕ませる方で、どっちが孕む方だ?』


 言い方! ってかその言い方、妙に生々しいからやめて!


『主が卵を産むのか?』

「人は卵生じゃないので卵は産みません!」

『卵ではない? ではどうやって?』


 何というか返答に困る矢継ぎ早な質問に僕が困惑していると、何処からか石がひとつ目の前に飛んできた。

 とっさにロイドが庇ってくれて、僕に当たる事はなかったのだけど、こんなの当たったら怪我をする所だ。危ないな。


「化け物だ! 化け物が来たぞ、逃げろっ!」


 そんな掛け声と共に幼い子供達が駆けて行く。恐らくまだ未就学児くらいの年齢だろう、それにしても石が当たれば人は怪我をする事くらい分かるだろうに、親は何をしているのか。


「こらっ! 危ない事したらごめんなさいだろっ!」

「うるせー、化け物連れはこっちくんなっ!」


 そう言って幼い子供達はまた僕達に石を投げる。どうやら石は偶然当たったものではなく、意図して僕達に投げられたのだと気付き僕は驚いた。


『なんだ、この躾のなっていないガキ共は! 食ってやろうか!』


 そう言って唸るようにオロチが牙を剥くと、脅えたように数人の幼い子供が泣き出した。

 いやいや、そんなにオロチが怖いなら最初から手を出さないでくれよ。

 泣いていない子供も脅えた風ではあるのだが気丈にこちらを睨むので、僕はどうしたものかと困惑を隠せない。


「駄目だよオロチ、怖がってる」

『先に手を出してきたのそっちだ』

「それはそうだけど! 子供相手に大人げないよ」

『主は俺様にむやみに傷付けられても黙って耐えろと言うのか! 確かに俺様の鱗は頑丈で、その程度の石ころでは傷ひとつ付けられはしないが、俺様は化け物などではない、由緒正しきドラゴン族の末裔だぞ! 本来ならば人の子なぞ俺様の前にひれ伏し崇めるのが筋だろうが!』


 う~ん、それもそれでどうなのだろう。確かにオロチは強く魔物の中でも最強と言われるドラゴンだけど、その態度は些か傲慢でもある。根は優しい子だと分かっているけど、その言動はいただけないな。

 そんなオロチの傲慢な考え方は今後どうにかしないといけないなと思いつつも、今は目の前で泣いている子供達の方を先に対処した方が良さそうだと、僕は子供達に視線を向けた。


「ねぇ、君達、君達はなんでオロチを化け物なんて言うのかな?」

「だ、だって、亜人は、魔物だ。魔物は人を襲うし、悪いヤツだろっ!」

「なんでそう思うの? 僕達は君達に何かした?」

「し、してないけど……」


 僕はしゃがみ込んで子供達の顔を覗き込む。


「彼は確かに少しだけ人とは違う姿をしてるけど、決して化け物なんかじゃないよ。それどころか君達に化け物だって言われてすごく傷付いてる、何も悪い事をしていないのにそんな風に言われたら、誰だって怒るし傷付くんだよ」

「嘘言うな! 魔物も亜人も人間の言ってる事なんて分からないって父ちゃん言ってたぞ!」

「君は彼に話しかけもしていないのに、なんでそんな風に決めつけるの?」


 僕の言葉に、嘘吐き呼ばわりをした少年が少し驚いたような表情を見せた。


「確かにオロチは人の言葉を話せないけど、僕達の言葉は理解してる。酷い言葉を投げられたら魔物だって傷付くんだよ」

「そ、そうなの?」


 今度は少年の隣の小さな女の子がおずおずとオロチを見やる。どうやら僕の言葉が少しは心に響いたようだ。


「うん、オロチは僕達の言葉をちゃんと理解している。魔物の中にはどうやっても仲良くなれないのも勿論いるけど、それは人と人とだって同じ、少なくとも彼は君達を襲おうとはしていないんだから、むやみに攻撃するのはやめようね」


 僕が淡々と子供達を諭すと、彼等は顔を見合わせるようにしておずおずと頷いた。


「オロチ、ちょっと手を出して」

『あん? 何でだ?』

「いいから、お手」


 不服そうな表情ながらも片手を差し出したオロチの手を取って「触ってみたい人~」と僕が言うと、子供達はまた顔を見合わせた。しばらくすると一番年長と思われる少年が意を決したように手を差し出したので、僕はその少年の手を取ってオロチの手と握手させた。


「なんだか、すごくごつごつしてて父ちゃんの手みたい。ごつごつした手は働き者の手なんだって父ちゃん言ってた!」

「うん、そうだね。彼はすごく働き者だよ」

『おい、お前はまた適当な事を……』


 やはり不服そうな表情を浮かべるオロチだったけれど、僕はオロチの言葉は黙殺する。一人が触ると、我も我もと子供達は寄って来て、オロチの手をペタペタと触り始める。


『お、おい! 何だこれは、やめさせろ!』

「ねぇ、お兄ちゃん、その角は本物? 触ってもいい?」

『な……』

「オロチ」


 言外に『いいから触らせてあげて』と目で訴えると、苦虫を噛み潰したような表情ながら、オロチもその場に膝を降り子供達に角を触らせてくれたので、一気に子供達の表情がぱあっと明るくなった。


「お兄ちゃんのお目目は不思議な色をしていて、とても綺麗ね!」


 オロチの顔を覗き込んだ幼い少女が言った言葉に『お、おう』と、困ったように返事をするオロチ。それは子供達には小さな唸り声にしか聞こえなかっただろうけれど、それだけでも意思の疎通が出来たと悟ったのだろう、少女は満面の笑みだ。


「お兄ちゃん、石なんか投げてごめんなさい。痛くない?」

『あの程度、どうと言う事もないわ』


 さすがにそんなオロチの言葉までは伝わらなかったので「大丈夫だって」と、僕が告げると、子供達は「良かった」と言いながら口々にオロチに謝罪の言葉をかけた。子供って素直で可愛いよな。

 突然のアクシデントにどうなる事かと思ったけれど、ちゃんと和解ができて良かったよ。



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