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DTのまま40を超えた僕が魔法使いから○○になった話  作者: 矢車 兎月(矢の字)
第三章

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齧ってみたら美味かった

「一体貴方は何をしていたのですか!? 私に大口を叩いておいて、タケルを護れないどころか何処にいるかも分からないなんて、そんな言葉が私に通用するとでも思っているのですか!!」


 僕が戻ったと同時に聞こえてきたのルーファウスの怒鳴り声、そんな彼の前にいるのはロイドで、顔面蒼白でルーファウスの怒声に耐えている。

 そんなロイドの頭の上には何故かライムが乗っていて、心なしかシュンとしているその姿は見ているこちらの方が居たたまれない。

 僕は瞬時に現在の状況を理解する、これは恐らく僕達を探していたルーファウスがロイドを見付けて、僕が消えたという報告を受けたばかりなのだろう。


「ごめん! ルーファウス、ロイド君! ただいま!!」


 まだ僕の帰還に気付いていないであろう2人に向かって僕は声を張り上げた。一瞬の沈黙、ロイドの強張った表情が一気に崩れる。


「タケル~!!! お前っ、なんで、突然、消え……っ、マジで、心配したんだからな!!」


 半泣きのような表情になってしまったロイドに僕はとても心が痛む。半強制的に転移してしまったのは不可抗力だったのだけど、僕が迂闊に魔法陣に触ったのが原因だから、これは僕の自業自得でロイドは完全に冤罪だ。

 ライムがロイドの頭から飛び降りて僕の胸へと飛び込んでくる。ごめん、君にも心配かけちゃったね。


「みんな、ごめん、僕は無事だから!」


 ルーファウスは一瞬どんな表情をしたものかという顔をして、その後大きく息を吐きだすと「無事で何よりでした」と、ぎこちなく笑みを見せたのち続けて「けれど、正体不明の魔法陣に何の下調べもなしに触れるなんて、冒険者としては失格です! 充分反省してください!」と、厳しく叱られた。

 それに関しては、はい、反省します。ごめんなさい。


「ん? タケル、その手に持っている本は?」

「あ、っと、これは……」


 僕は今あった出来事をかいつまんで説明する。


「それで、その不思議な部屋にこの本もあった、と」

「はい。ですが、どういう訳かこの本だけ開かないんですよね」


 僕はその本をルーファウスに手渡した。受け取ったルーファウスは僕と同じように開こうとしたのだがやはり開かず、表紙を眺め、裏表紙を眺め、表紙を撫でてしばらく考えこみ「少しの間この本、貸してもらってもいいですか?」と僕に言うので、僕は「どうぞ」とそれに応えた。

 どのみち僕が読まなければならない本は他にもたくさんあるのだ、その開かない本にいつまでもかかずらってはいられない。


「そういえばルーファウス、アランは何処ですか?」


 色々と動転していて気付くのが遅れたが、そういえば先程からアランの姿が見えない事に気付いた僕はルーファウスに問う。


「ああ、アランなら置いてきました」

「置いて来たって、何処へ?」

「探索へ向かった先に洞窟があったのですよ、そこで少し中を覗いていたら島が大きく揺れて洞窟の入口が崩れましてね、閉じ込められたので私だけ先に出てきました」


 !?

 あまりにもしれっとしたルーファウスの物言いに、僕は開いた口が塞がらない。


「え、じゃあ、今アランは洞窟に閉じ込められたまま、ってこと?」

「まぁ、そうなりますね」

「そういう事は先に言ってください! 早く助けに行かないと!!」


 慌てる僕に「アランなら大丈夫ですよ」と、ルーファウスはやはりしれっとしている。ある意味とても信頼しているって事かもしれないけど、その態度はとても薄情とも言えるのでは!?


「それよりもオロチは何処ですか? できるのであればその崩れた洞窟を掘り返して貰えればと思ったのですが」


 あ、確かに。オロチのあの大きな腕なら洞窟を掘り返すのも容易いかもしれない。

 僕は龍笛を取り出して、それを一度吹いてみた。相変らず僕達に聞こえるような音はならないけれど、一度鳴らせば充分だと言われているので、僕はそのひと吹きだけで様子を見る。

 しばらくすると、海の向こうから波を蹴散らし何かがこちらへと向かってくる姿が見えた。僕は当然それをオロチだと思ったのだけど、ソレが近付いてくるにつれ、それがオロチではない事に気が付いた。

 それはオロチが倒したと思っていたあの巨大な海蛇の姿だった。


「え、嘘だよね……」

「アレは一体何ですか?」

「そんなの僕にだって分からないですよ、ってかオロチは!?」


 海蛇は物凄いスピードでこちらへとやって来る、けれどよくよく見れば、その姿はどうにも様子がおかしい。物凄い勢いでこちらへ向かって来るのは間違いないのだが、その首がぶらぶらと激しく揺れている。

 僕が呆然とその海蛇を眺めている間にルーファウスは危険を察し、僕達の周りに防御壁を張り、杖を取り出し海蛇へと向けたのだが、その時唐突に僕の頭に声が響く。

 聞こえてきたのは『あるじ、探したぞ。飯だ飯』という呑気なオロチの声だった。


「え、飯ってどういう事!?」

『飯は飯だ。なかなか食いでのある大物だぞ』


 そんな声と共にその巨大な海蛇が目の前に放り出された。あまりにも海蛇が巨大すぎて、それを運んでいたオロチの姿が見えていなかったと気付いたのは、目の前に海蛇が投げ出された事で再び辺りが地響きに襲われた後だった。

 オロチの体長の三倍ほどのサイズと思っていたその海蛇だったのだが、僕達がその姿を見ていた時にはまだ半分ほどが海中の中だったらしくその体長は更に大きく見える。ただでさえ大きいオロチより更に何倍も大きいってどれだけだよ……と、そのサイズ感に僕は言葉も出てこない。


『主よ、どうした?』

「ねぇ、オロチ、これって食べられるの?」

『齧ってみたが美味かったぞ!』


 にかっと上機嫌なオロチの声。

 へぇ、そうなんだ。もう既に齧った後なんだ……よく見れば確かにぶらぶらした首の辺り、かなり肉が抉れてる。


「タケル、オロチはなんと?」

「齧ってみたら美味かった、だそうです」

「………………」


 ルーファウスもロイドも微妙な表情で何も言わない。まぁね、そうなるよね。だけど美味しかったなら幸いだよ。


『主も遠慮せずに食え! ん? そういえばあのいつも陽気な男が居ないがどうした?』

「あ! そうだった、アランが洞窟に閉じ込められてるんだって! 入り口が埋まっちゃったみたいだからオロチに掘って貰おうと思って!」


 僕がそう告げると『それは大変だな』とオロチはすぐにアランの救助に向かってくれた。最初はどうなる事かと思ったけれど、意外とすんなりオロチは僕達に馴染んでくれた気がする。まぁ、やっている事は突拍子もないのだけれど。

 オロチが救助に向かって半時程で、アランはオロチの背に乗って戻ってきた。

 アラン曰く、一度目の揺れで入り口が崩れて、二度目の揺れでは避難していた奥の岩壁まで崩れてきて生きた心地がしなかったとげっそりしていた。


「オロチが助けに来てくれなかったら俺は死んでいたかもしれないな、九死に一生を得たよ、ありがとう」


 なんて、オロチの首を撫でながら礼を言うアランに、その揺れの原因がどっちもオロチの仕業だとは僕は何となく言い出せなかったよ。



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