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DTのまま40を超えた僕が魔法使いから○○になった話  作者: 矢車 兎月(矢の字)
第三章

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怪獣大戦争勃発

 そのまま飛び続ける事小一時間、ようやく眼前に島らしきものが見えてきた。僕には全く視認できていなかったのに、オロチにはずっと見えていたようなのだからドラゴンの視力というのは相当に良いのだろう。

段々に島が近付くと、その島は思っているより大きなサイズだという事に気付いた僕は、改めてこの階層の広さは一体どれだけあるのかと呆然としてしまう。ダンジョンのひとつの階層にこの規模の島が一体幾つ存在するのか。海は果てしなく広いし、何処まで続いているのかも分からないのだ。まるで世界が丸ごと詰め込まれているのではないかと感じるほどの階層の規模感に僕は言葉が出てこない。

 オロチがその島の端の砂浜に降り立つと、その島の中心部の方と思われる森の中からたくさんの鳥が飛び立って行くのが見えた。ここは自然豊かな無人島、なのかな?


探索サーチ


 オロチから降りてすぐ、ルーファウスが島の状況を確認するように探索をかけ、オロチは休憩だと言わんばかりに、どっしりとその場に座り込んだ。

 アランはキョロキョロと辺りを見回し、何か不審な物が無いか目視と匂いで窺っているように見える、やはり高ランクの2人は動きに淀みがないな。

 そんな2人を感心しながら見ていた僕だけど、そんな僕の横には、ロイドがぐったりとへたり込んでいる。たぶんこれ完全に乗り物酔いだ。


「ロイド君、大丈夫?」

「だ、だいじょ……うぐっ」

「無理しなくていいから、吐いていいよ」


 涙目になってしまっている彼の背を撫でて、僕は再び回復魔法をかける。飛んでいる所にどれだけ回復魔法をかけたところでかかっている負荷が軽減する訳ではないのだ、はっきり言ってしまえばこれはもうたぶん慣れるしかない。

 そんなロイドの姿をルーファウスは冷ややかな瞳で見ていて、その瞳は言外に「情けない」とでも言っているようだったけど、言葉にしなかっただけまだマシだな。


「水飲んで、少し横になりなよ」

「そんな訳には……」

「そんな状態では何をしてもただの足手纏いです、私とアランで少しこの島の様子を見てきますので、2人はここで待機をしていてください。オロチがいるので格下の魔物が襲ってくる事はないと思いますが、念のため守護結界も張っていきます」


 そう言ってルーファウスは僕達二人の周りに結界を張って、アランを連れて島の中へと行ってしまった。


「あぁ……俺、ホント役立たずだ。こんなんじゃ何の為に付いてきたのか分かんねぇ――」


 地面にごろりと横になってロイドは自身の掌で顔を覆う。僕はそんな彼の隣に体育座りで座り込んだ。


「何事も最初は皆そんなモノだって」

「だけどさぁ、いつもこんなんばっかりで2人との格の差を見せつけられるみたいで、自分が情けなくて仕方がないよ」


 完全に落ち込みモードなロイド、確かに2人は僕たちとは明らかに冒険者としての格が違う、だけど出会った当初から高ランクの冒険者だった2人だって最初から高ランクだった訳じゃない。


「あのね、アランとルーファウスはさ、僕達が生まれる前から冒険者だったんだよ、そもそも僕たちとはスタート地点が違うのに、未熟な僕たちと比べようって方がおこがましいと思わない? 2人は今までそれぞれたくさんの経験を積み上げてきて今がある、その積み上げもなしに同等に肩を並べようなんて、それこそ相手に対して失礼だよ。僕達はまだ経験を積み上げてる最中で、比べるなら僕達も同じだけの経験を積み上げしなきゃ駄目だと思う」

「……なんだよお前、大人かよ。年下の癖に生意気だぞっ、それに――」

「それに?」


 ロイドが自分の顔を覆っていた掌を真上に上げてこちらを向いた。しばらく無言で見つめ合い、その後ぷいっとそっぽを向いた彼は「何でもない」と不貞腐れたように僕に背を向け転がった。

 僕はそんな彼から視線を外して遥かに続く大海原へと目をやる。波は何処までも穏やかだし、まだ一度も魔物に遭遇していない事もあって、まるでバカンスにでも来たような感覚に陥る。


「俺さ、この間、ルーファウスさんに名前のせいで嫌われてるって知って、何だよそれ! って思ったんだよな。俺は俺で他の誰でもないのに、名前が同じだからって同一視されて嫌われて、ホント意味が分からない」

「あはは、本当にそうだよね、そこは僕もロイド君に完全同意だよ」

「だからさ、今回もう少しいいとこ見せて、俺って存在をその同じ名前の奴の上に上書きしてやる! くらいの気持ちで付いて来たのにこの有様でさ……」


 僕に背を向けたまま、ぽつりぽつりと語り続けるロイド、当たり前だけど彼も彼なりに色々悩んで葛藤しながら生きてるんだよな。僕は今生では色々問題はあってもわりと何も考えずにのんびり暮らしているから、なんだか申し訳ない気持ちになるよ。


「ロイド君はいつもすごく頑張ってると僕は思うよ」

「はは、はぁ……お前がそう言ってくれるだけで少し救われる気持ちだよ、ありがとな、タケル」


 穏やかに会話を続けていた僕たちだったのだけど、そんな僕達の傍らで完全に休憩モードで浜辺に寝そべっていたオロチが不意に顔を上げ、何かを探るように顔を周囲に巡らせた。


「オロチ、どうかした?」

『何か来るな』

「何かってなに?」

『さて? 長いな、蛇のような……海蛇? でも、とても大きい』

「それって……」


 オロチが警戒するように立ち上がり、海の一点を凝視する。僕も倣うようにしてそちらへと視線を向けるのだが、特に変わったものは僕には見えない。しいて言うのであれば少しだけ波がさざ波立っている気がするくらい。


「タケル、どうした?」

「オロチが何か来るって言ってる」

「それって魔物か!?」


 ロイドががばりと起き上がり、僕達が視線を向ける先へと剣を構えた。けれど、その魔物はまだ姿を現さない。


あるじ、少しばかり行って来ても良いか?』

「別にいいけど、一人で大丈夫?」

『まぁ、問題はないだろう』


 そう言って、オロチは大きな翼を広げて砂を蹴って飛び立った。みるみるうちにオロチの姿は小さくなっていき、僕が辛うじて視認できるさざ波にたどり着く直前、波がぐわっと水柱を吹き上げた。

 その水柱はオロチの身体よりも大きく見える、オロチが水柱に飲み込まれてしまう! と思った瞬間、オロチはそれを回避してすいっと旋回した。けれどその水柱もオロチの動きに合わせるように動いた事で、僕はそれが水柱などではないという事に気が付いた。


「あれって……」

「タケル逃げよう! あんなん俺達だけじゃ絶対どうにもならない!」


 ロイドが僕の腕を取る。だけど僕はその場から動けない。だって、オロチが行ってしまったのだ、オロチは僕の従魔なのに主人だけが逃げ出すなんてそんな事できないよ。


「オロチを助けないと!」

「馬鹿っ! それで死んだら元も子もないだろう! 俺達にできる事はまずは自分の身を護る事だ!」

「でも……」


 オロチが水柱を避けるようにくるくると旋回している。けれどその水柱のような魔物は執拗にオロチを追いかけまわしている。

 最初は水を纏って現れたその魔物だったが、今は半身を水面から出してオロチを追いかけ回す。その姿は言ってしまえば巨大な蛇だ。

 オロチは蛇の鎌首が届かない上空まで高度を上げると、その蛇を挑発するかのようにまたくるくると旋回し始めた。

 蛇が更に伸びをするように鎌首をもたげオロチに襲い掛かる、その長さは恐らくオロチの3倍以上だ。


「オロチ!」


 僕が叫んだその瞬間、辺りに凄まじい咆哮が響いた。それは空気をも振動させて衝撃波となって水面を波立たさせた。

 何が起こったのかまるで分からなかったのだが、僕達はその凄まじい咆哮に呆然と立ち尽くした。しばらくすると蛇の巨体が横倒しに海面に倒れ込む、それに伴い大波が僕達の方へと襲いかかってくる。

 え、待って、これもう津波じゃないか!!

 襲い来る大波は僕の身長を遥かに超えて、目前にまで迫ってくる。


「ライム、スライム結界!!」

『わかった~』


 波に飲まれる直前に僕とロイドはライムの中へとすっぽり収納された。その状態のままで完全に波にのまれ流されたのだが、ライムはずいぶん頑丈だし、水を通さない上に水に浮くので僕達はなんとか事なきを得る。


「今の龍の咆哮(ドラゴン・ブレス)だよな、すげぇ……生で見るとこんななんだ」

「ドラゴン・ブレス?」

「ドラゴンの技のひとつだよ。本では読んだ事あったけど、この目で見られるなんて思わなかった」


 へぇ、そうなんだ。

 ん? という事は今のはオロチが相手の魔物に攻撃したって事か? それで攻撃は当たったのか? 僕達の所まで衝撃波が来たくらいだからもちろん当たったんだよな? それで、相手の魔物が倒れた……?


「あれ? もしかしてオロチが魔物倒してくれた?」

「倒したのかどうかは分からないけど、少なくともダメージは与えてたと思う」


 僕達は未だライムの胎内で波に揺られているので状況がいまいち掴めない。見えていたはずのオロチの姿も魔物の姿も見えなくて、何なら島も波にのまれて陸地がずいぶん減っているように見える。

 あれ? これって島の探索に向かったアランやルーファウスも大変な事になっているのでは……?

 僕の血の気がさぁっと引いた。オロチの安否も気になるのだが、津波に襲われたであろうアランとルーファウスの安否も気にかかる。ちゃんと危険を察して逃げてくれていればいいのだけれど。


「ライム、とりあえず陸地に向かって」

『わかった~』


 ぷかぷかと波に流されながらもライムは陸地を目指す。先程まで島の周囲には砂地があって島の中央に向かって緑が広がっていたのだが、現在は砂地が完全に消失している。茂った樹も海水に浸かってしまっていて、先程までとは島の景色が完全に一変している。

 これが大型の魔物同士の戦いか……島の地形が一瞬で変わってしまうってどんだけだよ。

 それにしても、周囲をぐるりと見回してもそんな怪獣大戦争を繰り広げていた大型魔物の姿が見えないのがとても不気味だ。オロチの姿も見えないし、一体何処へ行ってしまったのだろう?

 そんな事を考えながら漂流すること四半時、僕達は少し小高い丘の上だったであろう場所へとたどり着いた。

 ライムの胎内から抜け出して、僕とロイドはその丘の上に立つ。その場所は少し開けた広場のようになっていて、その中央に何やら紋のようなモノが見えた。


「あれ? これって……」

「何かの魔法陣だな」


 それは確かに何かしらの魔術が施された魔法陣だ。けれどまだ魔法陣にそれほど詳しい訳ではない僕にはそれが何の魔法陣かまでは判別できない。


「ルーファウスさんが描いたのかな?」

「それは違うと思うよ、だってルーファウスが魔法陣を描くなら何処かに樹の紋様が入るはずだから」


 そう、ルーファウスの描く魔法陣には必ず何処かに大樹の紋様が入る、それは僕の背中に刻まれた守護印と同じ紋様だ。それは指紋と似たようなもので、その紋様を見れば誰がその魔術を施したのかが分かるらしい。

 この魔法陣にはそんなルーファウス特有の紋様が入っていないので、描いたのは恐らくルーファウスではないはずだ。

 それにしてもこんな所に魔法陣か、この階層は今まで誰も足を踏み入れていないのだと思っていたのだけど、そんな事はなかったのかな。

 僕は何とはなしにその魔法陣に触れてみる、するとその魔法陣がぱあっと光を放ち、僕の身体はそのまま空中に放り出された。



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