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DTのまま40を超えた僕が魔法使いから○○になった話  作者: 矢車 兎月(矢の字)
第三章

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ライムは僕の癒しです

 従魔師ギルドの職員の皆さんが帰った所でようやく起きてきたアランは少しげっそりとしていた。


「飲ませたのは俺だけど、アレは相当な酒豪だな。付き合って俺も飲んじまったが飲みすぎだ、頭が痛い……」


 そう言って頭を抱えるアランは二日酔いなのだろう、だけどそれ完全に自業自得だと僕は思うよ。


「だから、程々にって言ったでしょう。はい、座って。痛いの痛いの飛んでいけ~」


 僕はぐったりと机に突っ伏すように椅子に座ったアランの頭を撫でる。僕は聖魔法を使えるけど、その事は普段は隠しているので回復魔法をかける時はいつもこれ。それでも普通に回復魔法をかけるのと効果は変わらないので問題はない。


「助かった。あれ? そういえばオロチは?」

「自分の寝床で寝るって帰っちゃいました」


 僕が今朝あった出来事を一通りアランに説明すると「俺がつぶれてる間にそんな事が……」と苦笑した。

 そんなアランの姿を見ていたら一昨日ロイドに言われた言葉を思い出す。ロイドからの告白ももちろん驚いたのだが、ロイド曰くアランも僕の事が好きなのだと彼は言った。

 ルーファウスが僕の事を溺愛しているのは今に始まった事ではないのですっかりその過度な求愛行動にも慣れてしまったけれど、ロイドの言葉を信じるのならばアランの求愛行動はあまりにもさりげなさ過ぎる。

 けれどよくよく考えてみれば確かにアランには事あるごとに「嫁に来い」や「タケルの飯がないと俺はもう生きていけない」なんて事を日常茶飯事で言われているのだ。これはあくまでも友人同士の戯言だとしか思っていなかったのだけど、意外とアランは本気だった……?

 な~んて、考えない、考えない、僕は直接彼に何かを言われた訳ではないのだ、だったらここは知らぬ存ぜぬの顔でいるのが一番だ。人間関係がただでさえややこしくなっているのにこれ以上ややこしくなるのは勘弁願いたい。

 あまり相性の良くないルーファウスとロイドの関係は相変らずで、それはルーファウスにとって『ロイド』という名がそもそも気に入らない名前だからというのが昨晩判明した訳だけど、たぶん僕に関して恋敵認定もしていたのだろうな。


『名前がきらい。その名前を聞くだけで嫌な事ばっかり思い出す。存在がきらい、僕から全部奪っていった、だから大嫌い!』


 まるで子供のような理由だが、ロイドという名にトラウマを持っているらしい彼は何かを(或いは僕を?)奪われるかもしれないという思いを消す事ができなかったのかもしれないな。

 けれどそれは現在の僕らの関係とは一切関係のない事で、ルーファウス自身もそれが分かっているから今まで直接その理由を語ったりはしなかったのだろう。

 ルーファウスから何かを奪っていったらしい『ロイド』という人物を僕は彼から聞いた事がない。長い時を生きて、かつての仲間だった人物も恐らく大勢いるのだろう、その中でもその人物はよほど彼に影響をもたらした人物であったのだろうなとは想像ができる。

 でも同じ名前だからといって同一人物な訳ではないのだから、もう少し柔軟な対応をしてくれてもいいと思うのだがな……


「タケル、アランを甘やかすのはその辺にして朝食にしましょう」


 かけられた声に僕は顔を上げる。食事を作るのは専ら僕の担当だけれど朝食に関してはみんな割と自由だ。それというのもアランは朝に弱く朝食は抜く事が多い、逆にロイドは朝は起きるのも早いし起きるとすぐに腹が減ってしまうタイプで朝からよく食べる。ルーファウスも朝は早いのだが、朝はあまり食が進まない様子で飲み物しか口にしないので、全員が揃う朝8時から9時頃までは皆思い思いに過ごしている事が多いのだ。

 そんな全員の食事を準備するのは僕の負担が大きいだろうという事で、僕の担当は夕食だけ。朝は各自自分達で適当に食べている。ちなみに昼食は外食が多い。

 今日は朝から叩き起こされた事もあり珍しく全員揃ったので、全員揃っての朝食だ。朝からがっつり系のロイドがパンとベーコンを焼いていて、リビングには香ばしい良い香りが漂ってきている。

 そんな匂いにつられたのだろう、珍しく「俺も食う」とアランがキッチンに向かった。僕はリビングの定位置の椅子にかけ、ロイドが焼いてくれたパンを一枚もらい、ルーファウスが入れてくれた茶を啜った。ああ、なんかホッとする。

 今朝の悪夢はただの夢、昨夜見たものもきっと夢、うん。


「あの、タケル……」


 パンを頬張る僕におずおずと声をかけてくるルーファウス。


「昨晩は無理やり酒を飲まされたとはいえ、またしても色々とやらかしたようで、大変申し訳ございませんでした」

「あ~、はは、うん、大丈夫」


 ルーファウスって難儀だよな、酒で色々やらかすけど、やらかした事はほとんど覚えているタイプだ。たぶんアルコールで箍が外れちゃうだけで、いつもは我慢しているだけなんだろうな。


「それでですね、昨晩タケルに没収されたもの、返していただきたいのですが……」

「それは無理」


 いや、返す訳ないよね。あんな恐ろしいもの、僕のマジックバッグの中で永久封印決定だから!


「そこを何とか」

「一体残してあげたでしょう? そもそも三体もいりますか?」

「アレは私の大事なコレクションなんです!」

「無理なものは無理です、あとアレを最後にもう新作は作らないでくださいね」

「そんな……」


 絶望顔のルーファウス、そんなにショックを受けるような事だとは僕には思えないんだけど?


「お前達、さっきから一体何の話をしているんだ? ルーファウスは何かタケルに没収されたのか?」

「それは、その……」


 まぁ、さすがに言えないよね。僕そっくりの人形をコレクションしてるなんて、たぶん誰に言ってもドン引きだろうし。そもそも実物が目の前に居るんだから人形なんていらないだろう?


「そんな事より、今日どうしますか? さっそくダンジョン城に潜ってみますか?」


 大海原が広がっていると噂の48階層、僕には未知の世界だし、恐ろしい魔物ばかりが跋扈している場所だけど、たぶんオロチだったらひとっ飛びで大海原くらい飛び越えてくれる気がする。

 中身を知ってしまうと色々アレな感じだけど、なんせオロチはドラゴンだから! 敵に回せば恐ろしい魔物も味方になればこれ以上頼もしい存在はない。


「そうだな、従魔契約に一年って縛りがある以上早く動いた方がいいだろうし」


 アランがそう言って、焼いていないパンに適当に野菜を挟んだものに噛り付くと「あの、それなんですけど、俺も付いて行っていいですか!」と声を上げたのはロイドだ。


「ん? お前も一緒に来たいのか?」

「一応俺もDランクに昇格できました、まだまだ足手纏いだとは思いますけど荷物持ちくらいはできるので!」


 そんな風に一生懸命に言い募るロイドに「マジックバックがあるので荷物持ちは必要ありませんけどね」とルーファウスの態度は相変らず冷ややかだ。

 確かにその通りだとは思うけど、言い方! 僕にコレクションを没収された八つ当たりも入っているのだろう、大人げないな。

 ちなみにまだロイドはマジックバックを持っていない。見付けたら譲ろうとは思っているのだけど、なかなか落ちてないんだよな。


「僕はいいと思います、皆で行けたら楽しそうだし!」

「あそこに関しては楽しいだけでは済まないけどな」


 まぁ、遠足気分で行ける場所ではない事は僕も分かっているし、それはロイドだって分かっていると思うのだ。けれど向上心があるのは良い事だと僕は思う。僕としてはその心意気を買いたいのだけどな。

 僕の現在の年齢はロイドよりも年下なのだが、精神年齢的には彼は僕の息子といっても差支えのない年齢なので頑張る若者を応援したい気持ちが僕にはある。

 僕が彼の年齢だった頃、僕は自分で目標を決めてチャレンジするという事をしてこなかった、だから何でもやってみようとチャレンジするその心意気、立派だなと僕は思うのだ。


「完全な足手纏いですよ、いざという時に救助をしなければならない手間を考えたらいない方がマシです。魔物をおびき寄せる囮くらいにはなれるでしょうけど」

「お前なぁ……」

「言っておきますけど私は彼の身を案じて言ってやっているのですよ、ダンジョン内の魔物は強い、アランだって分かっているでしょう?」

「それはまぁな、だが俺達二人で倒せない敵じゃなかっただろう? 人数が増えればより楽になると逆に考えたらどうなんだ?」


 アランの言葉に「物は言いようですね」とルーファウスは溜息を吐き、ロイドを見据える。


「これも言っておきますけど、私は皆が危機的状況に陥った時、私の守るべき優先順位は常にタケルが一番であって私はきっと貴方を助けない、タケルを助けるために私は貴方を見殺しにする事もあるかもしれない、それでも付いて来たいと?」

「っ……覚悟の、上です! それに俺も、たぶんタケルを護るためならきっと貴方を助けない、お互い様です!」


 重い……

 真剣な表情の2人のやり取り、だけどルーファウスの言葉もロイドの覚悟もどっちも僕には重すぎるよ、やめて! そんな決意表明みたいなのホント重いから、皆で仲良く協力し合ってダンジョン攻略しようよぅ。


「その言葉重々お忘れなきように」

「分かっています」


 ホント待って! 売り言葉に買い言葉! そこで火花散らすの止めて! 僕は自分の身は自分で守るから!

 2人が僕を(どういう形であれ)愛してくれるのは嬉しいけど、愛情過多で圧し潰されそうだよ。

 ルーファウスの向こう側、アランも呆れたような表情を隠さない。だけど……


「タケルは本当にいつでもモテモテだな、当然俺もお前の事は守ってやるから安心しとけ」


 冗談を交えて場を和ませようとしているのか、それとも火に油を注ごうとしているのか全く分からないアランの言葉に僕は小さく「ありがとうございます」と返事を返した。いや、なんかもうそれ以上何を言っていいのか分からなくてね……

 僕さ、言っては何だけど非モテ人生まっしぐらな人生を生きてきてるから、こういうの本当に困る。なんと言うかその場の空気が居たたまれない、だって皆が取り合ってるの「僕」だよ? 意味が分からない!

 僕は「みんな、僕の為に争わないで!」なんて、自分に酔えるほど脳内お花畑な人間じゃないし、そういうキャラでもないんだよ。そして僕はそういうシチュエーションを望んでもいない。そもそも争っている登場人物が全員男な時点でなんか間違ってる気しかしないしな。女性キャラ何処行ったんだよ!

 パーティメンバーをむさくるしい男達で固めてしまったせいで女の子と出会う確率が滅茶苦茶低い上に、このパーティの中で僕が一番のマスコットキャラ的な存在になってるから、女性達が寄って来ても僕だけなんか蚊帳の外。

 分かる、分かるよ! アランやルーファウスなんかモテて当たり前だし、最近はずいぶんロイドも凛々しくなってきてこっそり女の子達にモテている、なのにその全員が僕の事が好きすぎて、どうにも解せない。

 これは僕がちゃんと恋人を作らないと、不毛な争いがいつまでも終わらないのか? 年齢が、倫理観が、と色々理由を付けて問題を先延ばしにしてきたけど、そろそろ真面目に誰かとお付き合いを考えないといけないのかな……

 だけど、小姑が多すぎて誰とも付き合える気がしないけどね!


『タケルぅ~今日はどこかにおでかけ?』


 ライムがぴょんぴょんと僕の足元を飛び跳ねる。僕はそんなライムを抱き上げて「ライムは僕の癒しだよ!」と、思い切りそのぷにぷにボディを抱きしめた。



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