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DTのまま40を超えた僕が魔法使いから○○になった話  作者: 矢車 兎月(矢の字)
第三章

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ドラゴンを飼うという事

「えっと……タケル、私の見間違いでなければタケルの後ろに居るのはドラゴン、のように見えるのですが……」


 僕と従魔師ギルドの職員さんが魔物達の理想郷ユートピアから帰還すると同時に職員さんは「これからギルド全職員で緊急会議です! 君には追ってギルドで決まった事を報告するので連絡先だけ教えて!」と、僕から連絡先をもぎ取るように奪って職員さんは慌ただしく駆けて行ってしまった。

 魔物の入った檻の積まれた部屋にポツンと残された僕がとりあえず、この仲間に加わったドラゴンをどう皆に紹介しようかと考えていた所で、僕の帰りを今か今かと待ち構えていたルーファウスに捕まった。そして冒頭の台詞である、まぁね、そりゃあ驚くよね。


「はい、正真正銘ドラゴンさんです。一年契約で僕の従魔になりました」

「ドラゴンを従魔に!? しかも一年契約? 一体どういう事ですか!?」

「話せば長くなりますが……」


 そう言って僕は事の次第を皆に説明する。


「それでタケルはこのドラゴンとの一年契約でそんな重大な頼みごとを頼まれてきたと?」

「まぁ、そうなりますね」

「なんでそんな話を何の相談もなしに受けてしまうのですか! ドラゴンというのは災厄ですよ! 説得してどうにかなるものではないのですよ!? 私も今まで何匹かのドラゴンと対峙した事がありますが、どいつもこいつも凶悪で話の通じる相手じゃない! そもそも話もできないのに!!」

「あ、そこはそれ、僕はドラゴンとも会話ができるようですし、彼も一緒に説得には協力してくれるそうなので何とかなるかな、って」


 そんな僕の言葉にルーファウスは「何を呑気な!」と怒り心頭だ。でも、これってそんなに怒る事? 意外と意思の疎通が出来ないからいがみ合ってるだけで話せば分かってくれるドラゴンだっているかもしれないだろ。


『そこのエルフ? は、随分と喧しいな、そいつはお前の何なのだ?』

「僕の保護者で魔術師のお師匠さんだよ、そうだ君にも皆の事を紹介しなきゃだよね……あ、そういえば君、名前は?」

『それはお前が決めるのだろう?』

「え、そうなの?」

『一年とはいえ契約は契約だ、だからお前が名前を付けるのだ』


 ふうん、そんなモノなのか。でも名付けか……僕、あんまり得意じゃないんだよなぁ。ライムの時にも安直って言われたし、だけどドラゴンにあまり変な名前は付けられないよな。

 ドラゴン、ドラ、ドラ○もん? ダメダメそうじゃない。じゃあゴン? いや、なんかそれも違う。ドラゴン、竜! たつ? 安直かなぁ? ええと、ええと……あ! ヤマタノ……


「オロチ!」

 あれ? でもヤマタノオロチって、龍だっけ? なんか龍っぽかった気がするけど、もしかして蛇だっけ??


『オロチか、何だかよく分からないが、まぁ良かろう』

「良いの?」

『一年間はお前が主だからな』


 そう言ったと同時にドラゴンの身体がキラキラと光を放つ、そういえばライムの時もそうだったな。これで恐らく従魔契約は完了だ。


「という訳で、僕の新しい従魔のオロチ君です! 皆仲良くしてくださいね!」

「仲良くは良いんだが、タケル。うちにはドラゴンを飼えるほどの庭はないぞ、どうするつもりだ?」


 アランのその率直な意見に僕ははっと気が付く。確かに4人で住むには充分な広さのある我が家だけれど、これだけ大きな巨体のドラゴンを一体何処へ住まわせておけばいいのだろう? 庭も勿論然程広くはないのだが、オロチを雨風もしのげない屋外に放置する訳にもいかない。だけど、でかい、でかすぎる。

 ライムは伸縮自在なので、成長しても普通に一緒に生活ができていたが、さすがにドラゴンは縮む事は出来ないと思うのだ。

 え? これ、一体どうすればいいの?


『主よ、どうした?』

「よく考えたらオロチが寝る場所、うちにない」

『はああ!? それでよくも俺を従魔にと望んだものだな!! 飼い主たるもの、その辺の事も考えずに従魔なんぞ従えるんじゃない! お前は飼い主失格だ!』


 うわぁ、早々からのダメだし。いや、でもそこはどう考えても考えなしだった僕の失態だよ、面目ない。


「タケル、そのドラゴンは先程から何と言っているのですか?」


 飼い主失格と言われて少ししょんぼりしてしまった僕にルーファウスが声をかけてくる。


「寝床も用意できないなんて飼い主失格だと言われてしまいました……」

「それはまた図々しい従魔ですね、従魔の分際で飼い主にケチを付けるなど言語道断! 従魔なんて首輪を付けてその辺の路地裏にでも寝かせておけばいいのです」

『お前、俺様に首輪だと!? 黙って聞いてれば、やんのか、こら!』

「ルーファウス、そういう事言うのやめてよ、僕が従魔を大事にしてる事は知ってるだろ? それにオロチも落ち着いて、喧嘩は駄目!」


 ああ、きっと言葉が通じないから喧嘩になるっていうのはこういう事なんだろうな。しかもオロチの方はこちらの言葉を理解しているから無礼な事を言われたら腹が立つのは当たり前だ。

 基本的に魔物というのは会話のできない者全般を指す言葉で、もしかしたらちゃんと意思疎通ができれば仲良くできる魔物だっているのかもしれないのに。

 従魔師ギルドではそういった魔物達を保護している訳だけど、冒険者にとっては魔物なんて敵以外の何物でもないのだろうな。


「でも本当に困ったな、オロチがもう少し小さかったら何とかなったかもしれないけど、さすがにこのサイズじゃ……」


 僕がオロチを見上げるようにしてごつごつとした腕を撫でると『小さくなればいいのか?』とオロチが僕に問う。


「もしかして出来るの?」

『まぁ、出来ない事もない』


 そう言うと、オロチの姿はするすると縮んでいき、何故か目の前には浅黒い肌色をした二十歳そこそこのすらりとしたイケメンがそこに立っていて僕は驚く。


「え? え?」

『これでいいか?』

「君、オロチなの?」

『まぁな』


 オロチの瞳は赤く爬虫類のような瞳のままだが、姿形は人に似ている。だが額には二本の角が生えているし手足には竜の名残の鱗も見える、逞しい尾も健在で明らかに人ではない異形だ。


「え、凄い! 格好いいね!」

『そうか?』


 褒められて満更でもないのかオロチは少しだけ口角を緩めたのだが、その傍らでアランが「ドラゴンも亜人の姿になれるんだな……」とオロチを無遠慮に眺め回した。


「亜人?」


 聞き慣れない言葉に僕が首を傾げると「魔物の中には時々こんな風に人に模した姿で社会に紛れ込んで生活している奴がいてな、それを亜人って言うんだよ」と、アランは僕に教えてくれた。


「獣人と亜人ってのは紙一重でな、獣人は人語を覚え社会に馴染んだが亜人は人と混じらない、だから場所によっては迫害されて奴隷にされる事もあるんだよ」


 なんと、この世界には奴隷制度があるのか! この世界に暮らして三年、奴隷なんて今まで見た事はなかったけれど、そういう悪しき風習もある所にはあるのだな。


「それじゃあ、人型をしていても亜人は魔物と同じで狩られてしまう?」

「まぁ、元が魔物だからそうなるな。人型という点ではゴブリンもオークも人型だが魔物だろう? 言ってしまえばそういう事だ」

『俺をゴブリンやオークなんかの低俗な魔物と一緒にすんな!』


 オロチはひどくご立腹だけれど、異形の者という点ではゴブリンもオロチも変わらない扱いなのだろうなと思うと、この世界の歪さが少しだけ見えてくる。

 同じ知的生命体なのに言葉が通じないだけで異端視するのはどうかと思う。確かに知能レベルの低いゴブリンなんかは全く話が通じなさそうだけど、人に紛れ込んで生活ができるだけの知的水準を満たしている亜人なら共存だって出来そうなものなのに、それを全部一緒くたに奴隷だなんて……


「ルーファウスの言葉じゃないが、その姿でいるのなら首輪は付けた方がいいかもしれないな、逃げ出した奴隷と間違われて連行されるかもしれないし」

『ああん!? 俺様が人間如きに捕まるなんて事があると思うか!? もしそんな奴がきたら全員返り討ちにしてくれるわ!』


 どれだけオロチが叫んでも、オロチの言葉は僕にしか届かない。ドラゴンであるオロチが強い事は分かるけど、あんまり街で騒ぎは起こして欲しくないんだよなぁ……


「少なくとも一年間はオロチは僕の従魔だし、首輪は付けた方がいいかもね」

『な!?』

「というか首輪じゃなくてもいいから何か僕の従魔だって分かる目印は付けておかないと、だからライムもこうやって王冠被ってる訳だし」


 そう言って僕が掌の上にライムを乗せると、ライムは王冠を見せびらかすかのようにオロチに向かって胸(?)を張った。


『スライム如きが王冠なぞ……いや、そういえばそのスライムはじじいの旧知の友だったんだったか?』


 うん、確かに古老はそんな事を言ってたな。古老のドラゴンの年齢が幾つなのかは知らないけれど、少なくとも数百年単位だろうというのは想像ができる、いやもしかしたら数千年単位かも? あまり深くは考えまい。


『ボク、おじいちゃんとは仲良しだよ~昔たくさん遊んでもらったぁ』


 全く年齢を感じさせないライムの言葉。けれど古老は自分が爺ならお前も爺だと言っていたので、本当のところライムと古老は同世代の可能性はあるよなぁ。


『スライムはいくら歳をとってもスライムなんだな……』


 オロチがライムを抱き上げてみょ~んとそのぷにぷにボディを横へと伸ばす。おじいちゃんのお友達をそんな雑に扱うのどうかと思うけど、当の本人ライムは楽しげだ。


「まぁ、でもこれで寝床問題は解決かな。とりあえず家に帰ろうか。あと一応ライムは僕の従魔としては先輩なんだからあんまり無体な事はしないでよ」

『ふん、スライムが先輩なぞとは片腹痛いわ』


 そう言いつつも僕にそっとライムを返してくれるあたり、古老の言う通りオロチの根は良い子なんだろうな。



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