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DTのまま40を超えた僕が魔法使いから○○になった話  作者: 矢車 兎月(矢の字)
第三章

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新しい従魔をゲットしました

「我がドラゴン族は現在絶滅の危機に瀕している。我らドラゴン族は一匹で何千何万もの兵を滅する事ができる。我らは強い、それ故に驕りすぎた。我らは世界の敵とみなされ、人の前に姿を現せば問答無用で狩られるようになってしまった。もちろんこちらも対抗して何百万もの敵を倒した、だがそれでは火に油を注ぐばかりでここしばらくは安心して子を産み育てる事も出来なくなってしまったのだ。人は我らの言葉を解さない、例え子竜であろうとも、見付かれば即座に狩られてしまう。子を狩られた親は人を憎む、それは当然の事だろう? 人は我らを悪と決めつけるが、そちらが狩るから我らも抵抗しているというのにそんな事にすら人は思い至る事はない、そもそも我らと人が共存しようというのが間違っているのだ」


 古老のいう事はもっともだ、家族を何の理由もなく問答無用で殺されれば、残された者が怒り狂って暴れたとしても文句は言えない。けれどそれによってドラゴンはますます危険視されて迫害されるという繰り返し、これでは共存の道を探す方が難しい。


「この土地が我らを護る異空間である事を私は知っている。ここには我らを狩る冒険者などはやって来ない、ここは我らの安息地なのだ。ある一部の冒険者が有志を募ってこの地を整備したのだと私はこの地を訪れる者達に聞いた。ここならば我らも安心して暮らす事ができる、だからどうか、まだ保護されていない我が同胞をこの安息の地へと導いてはくれやしまいか」

「えっと……それは出来れば協力したい所なのですが、僕にはこの土地に直接アクセスする権限はないんですよね……」

『なに!?』


 古老が驚いたように目を見開く。でも僕は今日たまたまこの地へ招かれただけの言ってしまえばただの「お客様」で、そんな僕がそんな大任を二つ返事でOKするのは難しいと思うのだ。


「ここを管理しているのは従魔師ギルドの、その中でも一部の人達だけだと思うんですよ。僕は現在ギルドに所属すらしていないので、即答は難し……」

「少年! そこはOKしといて! 諸々の手続きは僕が何とかするから!!」


 急に声をかけられ僕はビクッとしてしまう。そういえば一緒に職員さんも来てたんだった。影が薄くて忘れていたよ。


「僕たち従魔師ギルドにとって希少な魔物の保護に尽力するのは基本理念だ、そんな話を聞いてNOなんてあり得ないよ、上層部へは僕が話を通す、だから君はその話を受けて!」


 えっと……それは僕には拒否権はないって事なのかな?

 いや、まぁ、困っている人は魔物だって助けたいと思うし悪い活動ではないと思うけど、もう少し考える時間をくれても良くない?


『そこの者は何者だ?』


 古老に頭の中に直接問われて「ここの管理をしている人族の一人ですよ」と僕が答えると、古老は少し顔を動かし「頼まれてくれるか?」と職員さんに問うた。


「それはもう! 全力で尽力させていただきます!」

「我らドラゴン族の中でも若輩者は人の言葉を話せぬでな、今まで人との意思疎通をはかる事も難しかったが、これで私の肩の荷もおりると言うものだ」


 そう言って、古老は静かに瞳を伏せた。


『おお、そういえば願いを聞いてもらう見返りに願いを叶える約束だったな、タケル、何か願いはあるか?』

「え……えっと」


 僕は瞬間口籠る。そんなに簡単に願いと言っても思い浮かばないし、この年老いたドラゴンがどんな願いなら叶えてくれるのかもよく分からない。

 金銀財宝なんかをねだってもいいのかもしれないけど、それだとここへ来た目的からはずれているよなと僕は思い直す。


「僕はここへは空を飛べる従魔を探しに来たのです。ここでは魔物が従魔師を選ぶという事なので、誰かご紹介いただけたら嬉しいのですけど」

『ふむ、空を飛ぶ従魔……』


 そう言って古老がちらりと視線を向けた先に居たのは僕達をここまで連れて来た年若いドラゴンだ。


『お主はここで生まれ育って一度も外の世界を見た事はなかったはずだのう?』

『え、まぁ、そうですね……』

『後学の為に一度外に出てみるのも良いかもしれぬな』

『な、古老!?』

『という訳で、タケル、こ奴でどうだ? こ奴は私の末の孫でとても良い子じゃ、こ奴はまだ卵のうちにこの地へやって来たので外を知らない、ドラゴン族は気配でお互いの居場所が分かるし、ある程度距離が近くなれば念話もできる、我らが同胞を見付けだすのにも役立つはず』

『古老!!! 俺は絶対嫌ですよ! 何故俺が人なんかの従魔になり下がらねばいけなのですか!』


 おおお、彼のサイズならば皆を乗せて飛ぶ事も可能だろうし、一緒に来てくれたら願ったり叶ったりではあるけれど、当の本人は酷く不服そうだけど大丈夫なのか?


『これはお主にとっても悪い話ではないはずだぞ。この地に現在留まっているドラゴン族で独り身なのはお主だけ、番える相手もいないこの地ではお主は生涯番を持てぬ、外の世界にはまだお主の嫁になれる相手も残っているやもしれぬしな。それに人の寿命はさして長くない、タケルに仕えた後はまたここへ戻ってくれば良い』

『ですが!』

『決まりじゃ、タケル、こ奴に名を付けてやってくれ』


 まだ不満を述べている若いドラゴンを尻目に古老は我関せずで僕に名付けを要求する。


「えっと、本当にいいんですか?」

「よいよい」


 朗らかな古老の言葉とは裏腹に、年若いドラゴンは僕を睨み付ける。いや、これ絶対良くないって。

 年若いドラゴンの睨みに僕が冷や汗をかいているのを知ってか知らずか、古老は「さっさと名を」とけしかけてきて僕はどうしていいか困ってしまう。信頼関係のない従魔契約なんてした所で、そんなの双方にとって不幸なだけだ。

 僕はどうせなら無理やり従わせるのではなく、仲良くしたいのだ。


「あの、まずはお友達から始めませんか!?」

『あ?』

「僕としても本人の承諾なしに従魔にするのは気が引けます、もし僕の従魔になってもいいと思った時に正式に契約してくれればいいので、今はとりあえず旅の仲間として少しだけ僕達の冒険のお手伝いをして貰えたら助かります!」


 僕の言葉に古老と若い方両方のドラゴンがぽかんとしている。


「あの、そういうんじゃ、ダメですか……?」

「こちらはそれでも構わないが、それでお主はこ奴を守れるか? 人に従わないドラゴンを人は問答無用で狩ろうとする、従魔になってさえいれば人はそれで安心するものらしいが」

「あ、そうなのですね……」

『古老、俺は人に守られねばならぬほど柔じゃない』

『だが、人語は話せまい?』

『それはまぁ……』

『言葉の通じぬ脅威に人は恐れを抱くものだ、従魔になっておいた方が安全だぞ』


 年若いドラゴンが逡巡しているのが分かる、別にそこまで悩まなくても僕は友達として仲良くしてくれるだけでも良いんだけどなぁ……


『では、とりあえず一年! 一年契約でどうだ!』

『こちらが願い事を聞いてもらっている立場でワガママだのう……』

『この、クソじじい! 俺に関係ない依頼で俺にワガママ吹っ掛けてきてるのはそっちだろうが!! この老いぼれが!』


 なんか若い方のドラゴンがキレた。けれどその次の瞬間、古老の瞳がぎらりと光って『老いぼれじゃと……』と、地を這うような低温ボイスで年若いドラゴンを睨み付ける。


『本来であれば卵から孵ってすぐに死にかけていた所を保護して育ててやったのは誰だ? 幼い頃、小物に嬲られ泣いていたお主を助けてやったのは誰だ? あまつさえ順調に育ったと思えば弱いくせに喧嘩ばかりで居場所が無くなったお主をここへ匿ってやったのは誰だと? ああ?』

『そ、それは……』

『私は可愛いひ孫が見たいと言っているだけなのになんて爺不幸な奴なのじゃ、少しくらい爺孝行をしようという気にはならんのか!』

『ぐぬう……』


 なるほど、古老のドラゴンはこの若いドラゴンの育ての親なのか。何だか悔しそうなドラゴンさん、少し可哀想になってきたぞ。


「あの、僕は一年契約でも全然良いですよ、それでもし居心地が良かったら契約更新してくれたらそれで構わないんで」


 確かに職場環境も分からないのに永久就職(僕が死ぬまで)とか、ちょっと酷だと思わなくもないし、このドラゴンさんは派遣社員だと思えば今はとても助かる訳だしそれで良いかなと提案すると、古老のドラゴンは『本当に良いのか?』と少し不満気だ。


「そちらが宜しければ構いませんよ。お仲間の保護も出来る限り尽力します」

『うむ、では宜しく頼む。孫は口は悪いが臆病者で泣き虫でな、少しでも外で成長できることを願っている』

『古老!! そんな子供の頃の事をいつまでも!』


 呵々と笑みを浮かべる古老のドラゴン、孫が可愛くて仕方がないのだろうな。僕の祖父もいつもこんな風に僕をからかいながら可愛がってくれた事を懐かしく思い出す。やっぱり家族って良いものだよな。

 こうして僕はこの不思議な土地で新たな依頼を受け、ドラゴンの仲間を手に入れたのだ。



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