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DTのまま40を超えた僕が魔法使いから○○になった話  作者: 矢車 兎月(矢の字)
第三章

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月日は百代の過客にして

 ダンジョン都市メイズの生活は穏やかにマイペースに過ぎ、時は流れ、気付けば3年の月日が流れていた。

 ダンジョンの攻略なんて一朝一夕にはできないし、僕とロイドのレベルが低過ぎてルーファウスやアランの手伝いもできないしとひたすらに自身の技量を上げるべく修行を続ける日々。そんな毎日を送り続けて早3年、僕とロイドはついにDランク冒険者へと昇格した。


「タケル! ようやく20階層まで単独攻略達成したぜ!」

「うわぁ、ロイド君、おめでとう! それじゃあ今夜はお祝いしないとだね!」


 嬉しそうに家に飛び込んできたロイドが僕に抱きつく。そんなロイドの満面の笑みに僕もなんだか嬉しくなってしまう。

 ダンジョン城の20階層まではスタッフが常駐する商業施設のようなものだが、そこを単独で攻略するのはそんなに簡単な事ではない。だからこそ、それが冒険者ランクの昇格試験として採用されているのだけれど、そんな昇格試験に3年目にしてついにロイドも合格したのだ。

 ちなみに僕は数か月前に既に合格している。聖魔法を使わない、無属性魔法も使わない、無詠唱での魔術発動も禁止というかなりの縛りプレイだったお陰でなかなか苦労したよ。

 そんな事を考えて感慨にふけっていたら僕に抱きついていたロイドが、急に僕の肩を掴むとぐいと押しやり身を離すと真面目な表情を浮かべて僕の顔を覗き込む。


「タケル、あのな……俺、この試験に合格したらお前に言おうと思ってた事があってな……」

「? そうなの? なに?」


 あまりに唐突なロイドのその言葉に僕は思わず首を傾げる。目の前のロイドは僅かに瞳を逸らし何事か言いかけては黙りこむを繰り返している。

 それにしてもロイド君大きくなったよなぁ……

 元々年上だった彼は出会った当初から当然僕より大きかったのだが、この3年で見違えるほどに成長した。僕達が出会った当初、彼の年齢は13歳で僕より3歳年上なだけだった。しっかりした少年だったのでもっと年上だと思っていた僕はその年齢を聞いた時、少し驚いたのを覚えている。

 現在彼の年齢は16歳、まだまだ成長期真っただ中の彼の身長はぐんぐん伸び続けて、今ではルーファウスと然程変わらないサイズにまで成長している。僕もこの3年間でそれなりに成長しているはずなのだけど一向に追い付かないどころか身長差は広がる一方でとても解せない。

 僕だってこの身体は成長期なはずなのに!

 まだアラン程筋骨隆々には成長していないロイドだが、確実に筋肉も付いて逞しさは増している、まったく羨ましい事この上ない。

 僕達には剣士と魔術師という職業の差も勿論あるのだが、それにしてももう少し僕にも筋肉が付いてもいいと思うのだ、けれど僕の身体はあまり筋肉がつかない。筋肉がない事で特別困っている事はないのだけど、やはり鍛えあげられた身体には憧れるよな。


「君、タケルに何をするつもりだい?」


 そんな言葉と共に、ロイドの身体が後ろへと引っ張られてロイドは慌てたように自身の背後を見やる。


「ルーファウス! アランもおかえり! ダンジョンの攻略は進んだ?」


 ロイドの背後に立っていたのはルーファウス、そしてその後ろにはアランもいる。二人は数日前から泊まり込みでダンジョンに潜っていたのだ、もう何日かは帰ってこないかと思っていたので驚いた。


「攻略はまだまだだな、だけどとりあえず48階層まで転移魔法陣の設置が出来たからあと一息だろう」

「おおお、凄い! 50階層まであともう少しですね!」


 僕達がこの街にやって来た当初ダンジョン城の転移魔法陣は40階層までしか設置されていなかった、そんな転移魔法陣を現在ルーファウスはコツコツと設置する作業を進めている。

 転移魔法陣をダンジョンに設置する為には当然一階層ごとダンジョンを攻略しながら進んで行かなければならない訳で、その作業はなかなか骨が折れるものなのだそうだ。僕はまだ40階層より下には行った事がないのでどんな感じなのかとても気になる。

 ちなみに40階層までは一度4人で潜った事がある。そこまでは転移魔法陣が設置されていたのでその時僕は物見遊山のつもりで行ったのだけど、あそこは物見遊山で行っていい場所ではなかった、出てくる魔物が桁違いに強すぎる。

 なんとか40階層を攻略する事はできたのだけど、僕はルーファウスとアランの足を引っ張る事しか出来なくて、自分の実力不足を実感した僕はそれからはこうやってずっと留守番だ。

 僕には確かに魔術の才能という神様に与えられたチート能力がある、けれど経験不足はもうどうにもならない。ダンジョンでの戦闘は一瞬の判断ミスが死を招く、それを痛感した僕は現在はひたすらに戦闘経験を積む日々だ。


「ロイド君は試験合格したし、2人も帰ってきたし、今日ははりきって御馳走作らないと!」

「お、ロイド、試験受かったのか。良かったな」


 アランがわしゃわしゃとロイドの髪を掻き回して労いの言葉をかけるのだが、ロイドは先程までのはしゃぎようとはうって変わって借りてきた猫のように大人しい。


「あ、そういえばロイド君、さっき僕に言いたい事があるって言ってたのは……?」

「あああ! 今度! また今度言うから!!」


 ? 何をそんなに慌てているのか、ワタワタしだしたロイドに僕は首を傾げた。


「タケル」


 名前を呼ばれて、まだ戯れている二人から視線を外し声の方へと視線を移す。そこには相変らず全く老け込む様子のない美貌の魔術師ルーファウスが穏やかな笑みを浮かべてこちらを見ていた。

 僕とロイドは成長期という事もあってこの三年でずいぶん見た目に変化が出てきているのだけど、ルーファウスは本当にまったく何も変わらない。

 ルーファウスの相棒であるアランですら大人の渋みが増してきているのに、ルーファウスは本当に全く1ミリも変化がないのだ。まるで彼の周りだけ時が止まってしまっているみたいだ。


「ただいま」

「おかえりなさい、ルーファウス。疲れたよね、すぐにご飯にするから皆と一緒に休んでて」


 僕がそう言って台所へと向かおうとすると、彼はすっと僕の髪を一房掬い上げた。僕の髪はこの三年間で背中の中ほどにまで伸びている、邪魔だなと思う時もあるのだが何となく伸ばし続けて今に到る。

 そもそもこの世界では魔力は髪に宿ると言われていて、魔術師のほとんどは髪を伸ばしている。それならそれに倣った方が目立たなくていいだろうという判断だ。


「なに?」

「守護印の確認を」


 ああ、と僕は頷いて自身の髪を持ち上げる。現在僕のうなじの辺りから背中にかけてまるで刺青のようにルーファウスの魔術による紋印が刻み込まれている。その紋印は背中にあるので僕自身はあまりはっきり確認する事ができないのだが、白線で木のような模様が描かれているらしい。

 これは僕を守る為の守護印で、まだ一度も発動した事がないので、どんな風になるのか詳細までは分からないのだけど、僕に危害が加わると術が発動すると共にルーファウスにその旨が伝わるような魔術が施されているのだそうだ。

 何故僕がこんな守護印を身体に刻まれてしまったかのかと言えば、話せば長くなるのだけど、一番の理由は彼が僕から離れようとしなかったから。

 ダンジョン都市メイズへやって来て3年、ルーファウスが依頼を受ける事で僕の安全は保証されていた訳だけど、ルーファウスは依頼を受けはしても一向に依頼をこなそうとはしなかった。

 理由はとても単純明快、期限が切られていないのだからその依頼をいつ完了させようと自分の自由、とやかく言われる筋合いはない、というものだった。

 確かにギルドマスターからの依頼書にはいついつまでにやって欲しいという期限は設けられていない。そもそも高ランク冒険者しか足を踏み入れられないようなダンジョンの攻略、ダンジョン核の捜索、転移魔法陣の設置なんて簡単に終わらせられるような依頼ではない。でも、だからと言って全く着手をしようとしないというのも何か違う気がする。

 だってこちらは依頼の報酬(僕達の生活の保証)を享受してしまっている訳で、それでいて依頼には一切手をつけないなんて完全に詐欺だからね。

 他に依頼を受けてくれる冒険者がいないという点で、ギルドマスターは僕達に強くは出れないし、そもそもこの依頼はルーファウスに都合のいい条件での契約になっていて、それを承知の上で依頼をしてきたのは向こうなので泣き寝入り状態、さすがの僕も見るに見かねて「ソレでは駄目だよ」とルーファウスを説得した。

 そんな訳で僕たちは4人でとりあえず40階層攻略に向かった訳だけど、前述通り僕なんて足手纏いにしかなれなかったんだよね。だからここはやはりアランとルーファウスの二人で、という話になるのだけど、まぁそこで当然ながらルーファウスはまたごねた訳だ。


「私の不在の間にタケルの身に何かあったら、私は死んでも死にきれない!」


 だってさ。今の生活で何かあるとは思えないのに、過保護もここに極まれりな感じでどうにも埒が明かなかったので、喧々諤々の話し合いの結果こういう形で落ち着いた。

 背中に紋が入っていたって別段生活に困る訳でもないし、それでルーファウスが安心するならそれで良いかなって、僕はルーファウスの施す守護印を入れる事に合意したんだ。


「特に何も変わってないでしょう?」

「ええ、そうですね」


 そう言ってルーファウスは僕のうなじを指でなぞる、思わず「ひぁ」と素っ頓狂な声が出て、僕は自分の手でうなじを隠す。


「なんでそういう事するんですか!?」

「こんなの可愛い戯れじゃないですか、それともそちらの彼は良くても私は駄目だとでも?」


 あ……これ、絶対怒ってる。そういえばさっきまで僕、ロイドに抱きつかれたり肩掴まれたりしてたよな。だけど、あんなの友達間なら普通にするくらいの馴れ合いじゃないか。そんなんでいちいち怒らないで欲しい。


「別にそんな事言ってない。ただ触り方がちょっと……」


 ロイドとの戯れは別段友人同士の馴れ合いを逸脱したものではない、だけどルーファウスの場合ちょっと違う気がするんだよ、なんか触り方やらしい気が

するし。

 なにせ僕は元々人付き合いが得意ではないし、人と人との距離感を掴むのがとても苦手だ、だけどこれは僕が過剰に反応してしまっているだけなのかもしれなくて、あまり強く拒絶もできないでいる。

 僕がこんな風にルーファウスにちょっかいをかけられるのは初めてではない、口説くと宣言されてから今日まで数限りなくこんな些細なちょっかいをかけられていて、どう対応して良いか本当に困っている。こんなの、僕が女の子だったらセクハラで訴えられても仕方がない所業だと思うのだ。

 だけどロイドやアランが僕に対してしているスキンシップと変わらないと言われてしまうと、そうなのか……? と、思わなくもないのだ。


「とりあえず、守護印は大丈夫ですよね!? 僕、ご飯作ってきますから!」


 これは僕が過剰にルーファウスを意識してしまっているから気になるだけなのだろうか? 友達同士の距離感と好意を寄せられている相手からの距離感をはかりかねている僕は言葉を濁して逃げ出した。

 これさえなければルーファウスは頼りがいのある良い仲間なのに、なんでそんなに僕のことが大好きなのだろうか? いくら僕の容姿がタロウさんに似ているからと言っても、これだけ長い間行動を共にしていれば、いい加減目が覚めてもいい頃合いだと思うのだけれど、ルーファウスは相変らずだ。



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