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DTのまま40を超えた僕が魔法使いから○○になった話  作者: 矢車 兎月(矢の字)
第二章

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新たな術式を開発してしまいました

 何故かダンジョン攻略をしなければならなくなってしまった僕達は、当面の間ダンジョン都市メイズで暮らす事になった。ルーファウスとスラッパーの契約通りに僕達には生活の保障がされて、なんとダンジョン城の近くに一軒家を与えられた。

 そこまで大きな屋敷ではないが4人が暮らすには充分な広さの家で僕達は新生活をスタートさせることに。

 けれど簡単にダンジョン攻略なんて言っても、そう一朝一夕に出来るものではない。なにせアランとルーファウスはともかく僕とロイドはまだ冒険者になりたてのペーペーで、Eランクに昇格したと言っても実力はたかが知れている。二人に付いて行くにしても、それこそ転移魔法陣が設置されている40階層までがせいぜいで、そうなってくると当然その後の攻略はアランとルーファウスの二人で行かざるを得なくなる。

 メイズには他にも優秀な冒険者は何人かいて、その人達と行くという選択ももちろんあるのだが、ルーファウスはソレに難色を示す。

 元々あまり他人とつるむ事を好まないルーファウスは「それならば1人で行った方がマシ」とすら言って他人を受け付けない。元々この依頼はギルドマスターがルーファウス個人にした依頼だという事もあって、ルーファウスはその姿勢を頑なに崩さず、そんなルーファウスの言動に「前はもう少し柔軟な奴だったはずなんだがな」とアランも困惑顔だ。

 だけどルーファウスが何故そんな態度でいるのか、その理由に実は僕は薄々気付いている。ルーファウスは僕が一人で行動するのが嫌なのだ。

 本格的なダンジョン攻略に出るとなれば、少なくとも一日二日で済む話ではない、そうなってくると現状だと僕とロイドは当然ながら留守番だ、ルーファウスはそれがたぶん気に入らないのだ。

 一人でダンジョン攻略に臨むのならば帰りたくなったらすぐに帰ってこれる、だが他に仲間ができてしまうとそういう勝手は許されなくなる。少なくともある一定の成果を上げなければ戻れない。そうなると僕と引き離される時間が伸びて、その間に何かあったらどうするのだ! というのがたぶんルーファウスの考えだ。

 別に留守番くらい平気だし、ギルドマスターのスラッパーはちゃんと約束を守って僕のことは教会に知らせずにいてくれている。それどころか、ギルドマスターの権限で僕が街の外に出る時に身分証を提示しなくてもいいように特別な通行証を発行してくれたし、直接彼に話しかける事で個人での依頼も受けられるように取り計らってくれるようになった。

 僕にとっては至れり尽くせりの状況で、そんな感じだからダンジョン攻略だって手伝ってあげたいのだけど、現実問題実力が伴わないのはもう如何ともしがたく……という現状、何とか皆の役に立てるように、僕は修行あるのみなんだよな。

 僕が黙々と魔術の修行に励んでいると、それはそれで心配らしいルーファウスは相変らずに僕に過保護だ。


「そんなに焦ってスキルアップをする必要はないでしょう? タケルはタケルのしたいように生活したらいいんですよ」

「はい、だからしたいようにしています。今の僕は誰にも迷惑をかけずに生活をする事と、皆の役に立てる自分になる事が目標なので、その目標に向かって邁進しているだけです」


 そう、僕は何も無理はしていない。むしろやりたくてやっているのだから安心して欲しいのだけど、過保護な保護者は渋い顔で「タケルを見ているとまるで生き急いでいるように見えて心配になります」なんて言われてしまう。

 確かに人間の寿命はエルフより短いのだからそう見えてしまうのは仕方がない、でも僕は既に一度経験した事だから分かっている、時間というものは無限ではない。

 元の世界で僕が10歳だった頃、小学生だった僕は人生は無限に長いもののように感じていた。だけど40歳まで生きてみて、あの頃にできた事はもっとあったのではないかと思う瞬間は幾らでもあった。

 せっかく若返っての再出発なのだから、やれる事は何でもやりたいし挑戦してみたい。これは自分の希望に他ならない。

 僕が自分の考えを率直に告げるとルーファウスは一応僕の考えを尊重してくれたのだけれど、過保護は一朝一夕に変わるものではない。最近ではアランやロイドにまでそれは伝播して過保護な保護者が増殖中だ。


「なんでタケルはそんなに毎日仕事をしたがる? ここでは家賃も必要なくなったんだ、ある程度貯金も出来ているはずだろう? 子供はもっと自由に遊ぶもんだ。」


 なんて言ってくるアランに僕は曖昧な笑みを浮かべる。うん、確かにお金は確実に貯まってる。だけど装備を整えたり、ライムにご飯をあげたりしてるとすぐに減っていく程度のものだ。

 この世界、わりと誰もが「宵越しの金は持たないぜ!」精神で生活をしているみたいだけど、僕はそんな不確かな生活が不安で仕方がない。これは僕の元いた現代社会の価値観で、そんな価値観は捨ててしまえれば良いのだけれど、自分の根本というのはそう簡単には変えられないのだ。


「タケルは少し真面目過ぎる」


 ロイドにまでそんな風に言われてしまったけれど、だからと言って子供らしく何をしたらいいのだろう? 実際ロイドも僕同様に修行に明け暮れているくせにそんな事は言われたくない。


「俺はいいんだよ、完全に皆の足手纏いなんだから……っていうか、お前が頑張れば頑張るほど俺との差が開いてくんだよ! これ以上強くなってどうすんだ、お前はライムと遊んでろ!」

「ええぇ……」


 何というか理不尽極まりない物言いだ。僕だってまだ自分が未熟だと思っているから頑張っているのであって、そんな事を言われても困る。

 そんな訳で魔術の修行や依頼の受注を時々強制的に休まされるようになった僕は暇を持て余し、借家に最初から置いてあった本を読むようになった。

 元々この家に住んでいた住人はどうやら本好きだったようで雑多に取り揃えられた本の数々はなかなかに読みごたえがある。

 その中には小説のような読み物も多かったが、この世界の基礎知識を学べる歴史書や中には錬金術などの本もあって、僕は夢中になってその多くの本を読み漁った。

 ちなみに僕は語学に長けてはいないので日本語以外読めないのだけど、恐らくこれも神様からのチート機能で文字は読めば自動翻訳されるし、僕が日本語を書いても自動的にこちらの言語に変更されているという事に今更ながらに気が付いた。

 けれど僕が何故ソレに気付いたかというと、何だか笑ってしまうのだけど、意味が通らない誤字脱字に関しては自動翻訳が適用されなくて、その場合こちらの世界そのままの文字列が並んでしまうので僕には意味が読み取れなくなってしまうのだ。

 突然目の前に現れる意味不明の記号のような文字列、その意味が分からなくて皆に聞いて回っているうちに、僕はその事実に気が付いた。僕は本のページをめくるだけで、その本の間違っている場所が分かってしまうという、持っていても何の役にも立たないと思われる能力を身に付けてしまった。

 ただこの能力、全く役に立たないかと思いきや、予想外の役に立ち方をする事が後に判明、それが魔術の術式の構築だ。

 基本的に魔術の術式は文字列の組み合わせで出来ている。だから火球ファイアーボールの詠唱が「火」と「球」の組み合わせであるように火炎放射は「火炎」と「放射」の組み合わせになる、僕は自動翻訳でその意味を理解しているのだけど、どうやらこの世界の人達はそれをはっきり理解している訳ではないようで、こう唱えればこの術が発動するという詠唱丸暗記方式で技を発動しているという事が俄かに分かってきたのだ。

 識字率もさほど高くはないこの世界、簡単な術式であれば間違える事もなく丸暗記で詠唱できるだろうが、高等魔術になればなるほど術式は長くなり覚える事が困難になっていく、だけど、その術式の幾つかで、全く不要の文字列が挿入されている事に僕は気付いてしまったのだ。正しく言えば、ちゃんと伝わっていない。

 これは術式の間違いではないのかとルーファウスに指摘したら、本と僕を見比べて「タケルはこの世界の魔術の在り方を根本から変えてしまいそうですね」とまたしても呆れられてしまう。

 そして実際僕が正した術式の方が威力が増す事も実証されて、「この事実はあまり他人に言って回ってはダメですよ」と釘を刺された。

 そしてここで分かった事がもうひとつ、それは魔術と詠唱の関係だ。ルーファウスは出会った当初、僕に魔術を発動する上で詠唱はとても大事だと教えてくれた。特に高等魔術になればなるほど詠唱は大事になってくると言っていたのだが、それにも誤りがある事が判明。

 確かに詠唱をするとしないとでは魔術の威力が変わってくる、けれどそれが何故なのかと考えた時に浮上してきたのが同音異義語。

 例えば「石」と「医師」は言葉に出してしまえば同じ「いし」だけれどその意味は全く異なる。例としては「石礫いしつぶて」という砂弾サンドショットより少し威力の強い土魔法があるのだけれど、それを詠唱する場合はもちろん「石」+「礫」という形になるのだが、それが「医師」+「礫」になってしまえば当然だが意味が通らず技は発動しない。

 けれど声に出して発音してしまえばどちらも「いし」である事には違いなく、この場合は技が発動するのだ。どういう仕組みなのかって? そんなの僕にだって分からない。

 けれどもし無詠唱で技を発動しようとした場合、頭の中で唱えた技名にスペルミスがあった場合その技は発動しないのだが、詠唱してしまう事でそれはスルーされるという謎法則がこの世界には存在している。

 ちなみにビックリな事にスペルミスはイメージで補う事が可能だ、その事象を明確に頭の中でイメージする事が出来れば詠唱が間違っていても無詠唱でも技は発動する、だから簡単な技ならその属性に適性があれば大体の人が使えるようなのだ。

 魔術にだって教本はもちろん存在する、その場合その教本の内容が例え間違っていたとしても頭の中でイメージが完璧に出来てしまえばそれはそれで技が発動する。けれどイメージだけで技を発動する場合はより多くの魔力を要するためあまり推奨はされていないだけだ。

 元々多くの魔力を消費する高等魔術は詠唱文も長い上に発動させようと思ったら無詠唱ではおよそ1.5倍ほどの魔力を消費してしまうので一般的には詠唱は必須だとされている、けれどそれは本当に必要なのか? と僕は考えるに至る。

 教本に載っている高等魔術は誤字脱字が多く無駄に長い術名のものが多い、けれどこれだけ無駄な文字列が並んでいる詠唱など役に立っているとは僕には思えなかったのだ。

 もしかしてこの詠唱文を短縮する事で威力はそのままに魔力消費を抑えられるようになるのではないか? という仮説を立てた僕は実験を繰り返してみる。するとこれがまた大成功、僕はいつの間にか一般に流布している高等魔術のほとんどを無詠唱で発動する術を手に入れていた。


「タケルはその歳で新たな術式まで構築してしまうのですね……」


 と、ルーファウスは呆れを通り越して遠い目だ。いやいや、僕が見た目通りの年齢じゃない事はルーファウスだって分かってるはずだよね? というか、エルフにとって40歳なんてひよっこらしいし、そういう意味での「その歳で」なのかな? だけど、何となく法則が分かっちゃったんだからそこはそれ、もう不可抗力だよ。


「くれぐれも言っておきますが――」

「他人の前でこの事は口外はしません、それに人前ではなるべく詠唱して魔術を使うように心がけます」


 僕が分かっているとばかりに言葉を奪うと「理解が早くて助かります」とルーファウスは頷いた。



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