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DTのまま40を超えた僕が魔法使いから○○になった話  作者: 矢車 兎月(矢の字)
第二章

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ライムは○○○スライムに進化した!

 僕とルーファウスはアラン達とあらかじめ決めておいた宿を合流場所として部屋だけ抑えて二人が街に着くまでの間、ダンジョン都市メイズの散策をする事に決めた。

 僕たちが一番最初に向かったのは、ルーファウスの提案どおり、ライムが僕の従魔であると周りに分からせるための目印アイテム探しだ。

 街はダンジョン都市と言うだけあって、ダンジョン城(駄洒落じゃないから! 街の人に本当にそう呼ばれてたから!)を中心にして街が形成されていた。

 ダンジョン上部のお城をルーファウスは飾りのようなものと言っていたが、城内には色々な施設が入っているそうで、各種お店や、冒険者ギルドの出張所もあるのだそう。寝泊りできる簡易施設もあるので、ダンジョン城に住みつくようにして暮らしている冒険者もいるらしい。

 そんなダンジョン城の店の中のひとつに従魔師御用達のアイテムショップがあった。店内はさほど広くはないのだが色々な従魔に関するアイテムが所狭しと並べられている。

 商品は装備品だけかと思っていたのだが、そんな事はなく従魔用のおもちゃや、餌なども陳列されていて言ってしまえばペットショップのような様相だ。


「ふわぁ、色んな商品があるものですねぇ……」

「タケル、首輪でしたらこちらですよ」


 ルーファウスに促され視線を向けた一角には大小さまざまな首輪が陳列されていた。それはシンプルな物から宝石のような石の付いた豪華な物まで種類は様々だ。


「お客さん、見ない顔だね。観光かい? うちはなかなか品揃えが良い事で有名なんだ、何をお探しだい?」

「え、あ……えっと、僕の従魔の目印になりそうなアイテムを探しています。首輪は無理そうなので、それ以外で何か装備できるような商品があればと思ったのですけど」


 店主に突然声をかけられ驚いて、僕は素直に欲しいものを告げる。


「? 首輪は無理? 坊ちゃんの従魔ってのは一体何なんだい? 見たところ連れてはいないようだが」

「あ、この子です! 僕のスライム!」


 ローブの中で寝ていたライムをそっと取り出し両手の上に乗せて店主の前に差し出すと、店主は一瞬目をぱちくりさせた後、ゲラゲラと笑いだした。


「坊ちゃん、冗談はやめてくださいよ。スライムを従魔って、そんな何の役にも立たない魔物をまさかダンジョンに連れて行く気じゃねぇだろう? 俺もこの商売は長くやっているがスライム用のアイテムなんて見た事も聞いた事もねぇよ」

「え、そうなんですか?」

「そもそもスライムを従魔にしてる従魔師ってのは数が少ない、いたとしても家で掃除や片づけを手伝わせる程度でアイテム装備をさせてまでダンジョンに連れて行こうなんて奇特な人間はいないからな」


 ああ、そういえばシュルクの街でもライムを従魔にしたら街行く人に笑われたんだったな。それにしてもこの世界のスライムの扱いって酷くないか? ライムは攻撃だってできるし結界も張れる凄いスライムなのに!


『タケルぅ、ここどこ?』


 ローブから引っ張り出したことで目を覚ました様子のライムがぴょこぴょこと僕の掌の上で飛び跳ねた。


「従魔専用のアイテム屋さんだよ、ライムに何か装備できるようなモノがないかと思って探しに来たんだけど……」

『ボクに? 何かくれるの!?』


 途端にライムが元気よく僕の掌から飛び出して、店内中を飛び回り始めた。


「あ、こら、ライム! 悪戯はダメだよ!」

『イタズラなんかしないよ! あのね、あのねっ、うんとね、ボク前から欲しかったモノがあるんだ!』

「? 欲しかったもの?」


 さほど広くはない店内を飛び跳ねまわるライムは何かを一生懸命に探しているように見える。


「ライム、欲しいものって何? まずは落ち着こう? お店の人にもご迷惑だよ!」

『あのねっ、これっ! こういうの!!』


 ライムが最終的にぴょこんと飛びついたのは見た感じ、かなり使い古された感じのアクセサリーだった。

 どうやらこの店はいらなくなったアクセサリーの買取も行っているようで、二束三文で投げ売りされているワゴンに入っていたそれは完全に中古品だ。しかもワゴンの中のアイテムは3つ纏めて小銅貨1枚という破格値が付いていて、どう見てもガラクタ以外の何物でもない。


「え? これがいいの? もっと他にも色々あるよ?」

『ヤダ、ボクこれがいい!』


 ライムがぺったり張り付いて離れなくなってしまったそれは、王冠型の指輪だ。しかも恐らく大型で人型の魔物にでも装備するようなサイズで僕の指にも大き過ぎるくらいの代物である。


「でも、ライム、これ指輪だよ? ライムには嵌める指もない訳だし……」

『これ、指輪じゃないよ』


 そう言ってライムがその王冠型の指輪をぽんっと頭の上に乗せた。その瞬間僕の脳裏に衝撃が走る、これは某有名RPGに出てくる王様スライム!!


「これ買います!」


 衝動的に放った僕の言葉に、店主がぽかんとしている。

 いや、だって、これは買うだろ!? ライムが滅茶苦茶可愛いし、なによりライム自身が気に入ってるのだからこれ以上のものはない。

 ガラクタだろうが何だろうが、本人が気に入ったモノが一番だよ、うんうん。僕の懐にも優しいしね!


「タケル、本当にそれで良いんですか?」

「ライムがこれがいいって言ってるので問題ないです。それにこんな王冠被ってるスライムなんてライム以外にいないですよ、目印にはピッタリです」


 ただひとつ難点を言えばライムが動いた拍子に簡単に落としてしまうのではないかという点なのだが、よくよく見れば王冠のふちの部分がライムの体内にめり込んでいる。

 何というか、ライムの絶対離さないぞ! という強い意志を感じたのでこれはもう購入以外に選択肢はない。ライム、なんて安あがりな子!


「ライム、これ3つで小銅貨一枚だから、あと2つ、この中から何か好きなモノ選んでもいいよ」

『えぇ~いらない。ボク、これだけでいいよぉ』


 ライムはワゴンの中にもう興味も関心もないようで、王冠を被って嬉しそうに飛び跳ねている。だけど一応3つで小銅貨一枚で売っている物なのだから何か選ばないと……でもこの際これひとつで小銅貨一枚でもいいかなと思っていたら「今回は特別サービスでそれは坊主にくれてやるよ」と店主に言われ僕は驚く。


「え、そんなダメですよ! お金はちゃんと払います!」

「いや、これは魚心あれば水心ってやつで、下心がある提案でもあるから」

「? どういう事ですか?」

「坊主は見た所、そのスライムと意思疎通がちゃんと出来てるんだろう?」

「ええ、それはまぁ」


 店主が何を言いたいのかよく分からない僕は首を傾げる。

 下心ってなんだ? 僕はこの店主に良くしてもらっても何も返せるものなどないのに。


従魔師テイマーって奴等には従魔を強い力で抑え付けて従わせる奴と従魔と仲良くなって従わせる奴の大体二種類のタイプがある、坊主はもちろん後者だと思うんだが、力づくで従魔を従わせる奴より、坊主みたいなタイプの方が従魔を大事にするからな、うちの売り上げに貢献してくれやすいんだ。だから俺はそういう従魔師は大事に扱う事にしてんだよ。まぁ、今はまだそのスライムしか従魔がいないようだが、坊主の年齢ならこれからまだ従魔は増えてくだろう、これは俺の先行投資ってやつだな」


 先行投資か、安上がりな先行投資だけども、確かにそれは納得できる話だな。


「でも、僕、これから従魔が増えるかどうかは分かりませんよ? 僕は魔術師で従魔師ではないので」

「お? 違うのか? それなのにそのスライムと意思疎通が出来てるのか? 悪い事は言わん、坊主には従魔師の素質がある。そっちの才能を伸ばしたらどうだ?」


 そうなんだ、確かに従魔師もやってみたい気がしなくもないけど。


「店主、勝手な事を言われては困ります。彼には魔術師としての類稀な才能があるので、そこは譲りませんよ」

「そうなのか? 坊主は才能に溢れてんだな、おっちゃんちょっと羨ましいぜ」


 店主が少し残念そうな表情だ。僕のスキルは神様の戯れで何をやっても大成するようになってるからね。有難いことだけど、選択肢が多すぎるというのも考えものだね。


「まぁ、坊主が魔術師だとしてもたぶん坊主の周りには従いたいって魔物がこれからも寄って来るだろう、その時にはおっちゃんの店を思い出してくれたらそれでいいさ」


 そう言って店主は僕の頭を撫でる。この店主さん滅茶苦茶いい人だな! 前に僕とロイドを騙した武具屋の店主とは大違いだ。


「ありがとうございます! あ、あと、このお店従魔用の餌も売ってるみたいですけど、何かこの子に合ったおやつとかありますか?」

「ん? スライムは悪食だから何でも喰うが、当店オリジナルの従魔用おやつがあるぞ、やってみるか?」


 店主が棚から取り出したのは犬猫のカリカリにも似たおやつだ。ライムにそのカリカリを食べさせてみたら、ライムの中のゼリー状の何かが粟立った。


『タケル! これすっごく美味しい!!』

「気に入った?」

『うん! もっとちょうだい!』


 僕はライムの為にそのカリカリを幾つか購入する。まんまと店主の罠に嵌められた気がしなくもないけど、ライムが幸せそうだから僕も幸せだよ。



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