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DTのまま40を超えた僕が魔法使いから○○になった話  作者: 矢車 兎月(矢の字)
第二章

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教会の内部事情

 翌日からアランは完全復活! とまではいかなくとも、そこまで激しく落ち込む姿は見せず、いつも通りのアランに戻っていた。

 ただ少し変わったなと思う事もひとつだけ、何故かアランが以前より僕に過保護になった。

 ただでさえルーファウスとロイドが僕に過保護すぎる程に過保護だったのに、それにアランが参戦してきた。とはいえ、今まで同様危ない場所では僕を抱き上げるくらいのものだけど、その頻度が少し上がったと思うんだよね。

 ロイドが手を差し出す前にひょいと抱き上げられてしまうので、ロイドは少し困惑顔だ。それはそうだよね、今までアランの前では僕たちはよく手を繋いで歩いていたのに、それをさせて貰えなくなった。

 僕としてはどっちも恥ずかしいからどっちもどっちなんだけど、一体なんでなんだろう? これはアレかな? 娘の身代わりみたいなものだった僕が、目の前でよその男と手を繋いで歩いてる姿は見たくない、的な?

 そりゃあね、奥さん再婚しちゃったし、娘さんだっていつかはお嫁にいくって考えたら、何となく複雑な心境になる男親の気持ちは分からなくない気はするんだよ。そこまで家族を僕に投影されるのはどうかと思うけど。

 これはあくまで僕の憶測でしかないので、アランの本当の心の内は分からない、だけど僕は今日もアランに肩車をされていて、世界がとても大きく見える。

 なにせ二メートル越えの視界だから、滅茶苦茶見晴らしがいいんだよ。


「アラン、アラン、向こうに大きな壁が見える!」


 アランに肩車をされた僕は、上からアランの顔を覗き込む。バランスを崩しそうなポーズでもアランはびくともしないし、安定感は抜群だ。


「おお、確かに見えるな」

「え? 何処ですか? 俺、全然見えないんですけど??」


 ロイドは僕たちの横で瞳を細めているけれど、眼前の景色が邪魔をしていて遥か向こうに聳え立つ壁が見えないみたいだ。

 ルーファウスはそんな僕たちの後ろを黙ってついてくる。何故かここの所ルーファウスはとても大人しい。少し心配になってアランにこっそり聞いてみたら、アラン曰く元々のルーファウスはこんなものだと言われてしまった。

 元々口数はさほど多くないし物静かなタイプで、逆に僕に出会ってからのルーファウスの方が少し様子がおかしかったんだぞと、アランに笑われてしまった。

 そうか、僕に会ってからの方がおかしかったのか、そんな事言われても僕は僕と出会ってからのルーファウスしか知らないからそれ以前のルーファウスの事はよく分からないけれど。

 そういえば僕は一方的にルーファウスに甘えているけれど、ルーファウスの事をよく知らない。どうやら魔術という学問に並々ならぬ情熱を傾けている事は分かるけど、その根幹を知りたいから僕を弟子にすると言ったわりには僕の隠した能力を暴こうとはしていないように見える。

 どちらかと言えばその能力をあまり公にはしないように、過度に気を遣ってくれている節があってルーファウスの心の内はよく分からない。しかも口説くと宣言もされてしまっているし、もしかしてそれは恋愛感情なのか? とここまで単刀直入にモーションをかけられては鈍い僕でもさすがに気付かざるを得ない。

 恋愛ごとに疎いままここまで生きてきて、こんなに大事に扱われたのも初めてで僕は現在ルーファウスとの距離感を計りかねていたりもする。


「そういえばルーファウスはダンジョンがあまり好きではないみたいだけど、何か理由があるんですか?」

「え? ああ……ダンジョンにはあまりいい思い出がないものでね」

「何かあったんですか?」

「大切だった人を永遠に失った事があります」


 予想以上に重い返答が返ってきて、僕は聞かなきゃ良かったと後悔する。永遠に失ったって事はその大事な人はダンジョンで死んだという事なのだろう。

 確かにダンジョンという場所も冒険者という職業も危険と隣り合わせだという事は理解していたつもりだけど、そんな言葉を聞いてしまうと簡単に行きたいと我が儘を言った自分の軽率さに少し凹む。


「メイズのダンジョンは商業化された施設みたいなもんだから、そんな危ない事にはならねぇよ。ルーファウス、あんまりタケルを怖がらせるな」

「怖がらせたつもりはありませんよ、それに私はタケルを危険な目に遭わせるつもりもありません」


 どこまでルーファウスは僕ファーストなのか、嫌ならもっと嫌って言ってもいいのに!


「それにタケルもダンジョンという場所の何たるかを知るために経験は積んでおいた方がいい。そういう意味では私もメイズのダンジョン攻略には賛成ですよ。あそこはアランの言う通りダンジョン自体が街で管理されているので余程危険な事はない。ダンジョンの怖さを知らずにその辺のダンジョンにひょこひょこ入っていかれるよりだいぶマシです」

「さすがに僕だってそんな無防備にダンジョン入ったりしませんよ」


 心外だと返した言葉にルーファウスは「故意に入っていかなくても迷い込むのがダンジョンです」と、更に真剣な表情を見せる。


「そして目的地に辿り着くためにはダンジョンを攻略しなければ駄目だと分かれば躊躇なく踏みこんで行くのが冒険者です。ダンジョンと冒険者は切っても切れない関係にあります。いずれは必ず通る道と考えるのならば、まずはメイズという選択肢は悪くないと私は考えます」


 メイズのダンジョンってそんな感じなんだ? 街で管理されていて商業化されたダンジョンってことは、雰囲気的にはテーマパークのアトラクションみたいな感じになっているのだろうか? 余程怖い事はないってルーファウスも言っている事だし、メイズのダンジョンはそこまで危険ではないみたいだけど、ルーファウスの語り口を聞いていると、それ以外のダンジョンって相当危険なのだろうか? いずれ僕もそんな危険な場所へ足を踏み入れる機会があるのだろうか?

 僕は呑気に平和に暮らせさえすればいい人間だから、そこまでがっつり冒険に出るつもりはなかったのだけど、そういうのもなんだか気になるな。


「まぁ、何はともあれ、あそこの関所を超えたら間もなくダンジョン都市メイズだ。楽しみだな」


 前方に聳え立っていた壁、それはどうやらダンジョン都市メイズへと続く道の関所であるらしい。


「関所って何かするんですか?」

「ん? 身分証を提示するだけだぞ。国境を超えるなら越境許可証も必要だが、ここは国境じゃないからな」


 そういえば僕たちの持っている身分証には魔法がかかっている、これは教会で発行されるもので職業などが変われば自動的に変更されてく便利仕様だ。犯罪などを犯せばそれも自動で記載されていくらしく、身分証に嘘は吐けない。

 だからこそこの身分証を見せれば自動的に関所を通過できるのだろう。犯罪者は関所を通過しようとした時点で即、御用だ。


「その関所ですけど、タケルは通らない方が良いかと思います、一足先に私とメイズに参りましょう」

「え? なんで?」


 ルーファウスの突然の提案に僕は驚く。


「理由は簡単、身分証を管理運営しているのが教会だからですよ。依頼を受けなければ情報共有されないギルドカードと違って、身分証の情報は直で教会に届きますのでもしエリシア様が手を回していれば身分証を提示した時点でタケルは即捕まります」


 なんだとっ!


「ついでに言うのであれば、教会にも近付かない方が賢明ですね。エリシア様がシュルクの街へやって来たのは神様のお告げもあったようですが、元を正せばタケルがシュルクの教会で受けた鑑定結果が教会本部に通達されたからであったようですからね」


 ルーファウス曰く、教会で発行される身分証というのは僕たちの世界でいう所の戸籍と同じようなもので、誕生と同時に教会に届を出し登録をするものなのだそうだ。だからこそ僕も教会で身分証の再発行という形になったのだけど、その個人情報というのは教会本部に筒抜けでもあるらしい。

 けれどそんな膨大な量の個人情報を教会で管理をするにしても個々の細かい情報は管理し尽す事は難しく、特別に有効活用されたりはしていないのだそう。

 けれど例外がひとつだけ、この鑑定水晶の結果というのが、ある一定水準を越えたスキルを持った人物が鑑定をすると自動的に教会本部に情報が転送されるような仕組みになっているんだって。

 シュルクの街の教会で僕はこの身分証の再発行と、個人情報の鑑定をしてもらった訳なのだけど、その鑑定結果というのがまぁ、あの言わずもがななチートスキルなものだから、当然教会本部に通達がいってしまったのだ。

 これは僕に限らず、特別なスキルを持った子供を神子として教会に迎え入れるのは当たり前にある事らしい。

 そうやって世界中から神子候補というのは勧誘されて集められ神職として教会で育てられるのだ。庶民にとって神子に選ばれるというのは誉でもあるので、家族はそれを喜ばしく受け止め子供を教会に差し出すのだとか。

 これは余談だけど支度金という名目で家族に相当お金も積まれるらしくて、なんかそういうの世知辛いなって思う。

 で、僕のスキルといえばそんな神子候補の中でも特別にチートだったものだからこれは早々に迎えに行かねばと聖女であるエリシア様自ら足を運んできたのだとか。


「ルーファウス、お前やけに詳しいな、そんな話どこで聞いた?」

「どこでも何も、教会関係者の方に丁寧に説明していただきましたのでね」


 ルーファウスはうっすら笑みを浮かべている。だけど、その顔なんか怖いよ! 絶対何か隠してるだろ!?

 アランもアランでルーファウスの説明には困惑顔だ。というか、僕も初めて聞く内容に戸惑いを隠せない。今までそんな事一度だって言ってくれた事なかったじゃないか!

 それにしても隠蔽された部分までは知られていないとしても僕の個人情報は完全に教会に筒抜けなんだな。個人情報を握られているっていうのはやはりいい気はしないものだ。

 それにこれだけ国民の情報を握っているのなら教会がこの国を牛耳るのなんて容易いんじゃないのだろうか? 国と同等の権力持てる訳だよ。

 それにしてもルーファウスは一体どうやってその情報を得たのかと詳細を聞いてみると「タケル達と別れて個人行動をしていた時に冒険者ギルド経由で接触してきた教会関係者がいたのですよ」と教えてくれた。

 その人に色々聞いたら親切に教えてくれたとかルーファウスはしれっと語ってくれたけど、そんな内部機密、教会関係者が簡単に教えてくれるとは思えないよ……


「ルーファウス、何か後ろ暗い事はしてない? 大丈夫?」

「私は何もしていませんよ、向こうが勝手にぺらぺらと話してくれたのを私は黙って聞いていただけですからね」


 相変らず笑みを崩さないルーファウス、うん、分かった。これ以上はもう追及はしない。なんか怖いし。


「でもそこまで教会に筒抜けだと、これから僕が身分証提示しただけで教会の人達に見付かってしまうのでは……」

「ええ、だから提示しなければいいのです」

「いや、ルーファウス、そんな簡単に言うが街に入るのだって身分証の提示は求められる訳で……」


 アランの言葉にルーファウスは頷く。


「だから、私が連れて行くと言っているのですよ」


 ああ、そうか、ルーファウスは転移魔術を使えるので街に入るのに門を通る必要がない。当然身分証の提示の必要もない。だけどこれ、防犯上の欠陥なんじゃないのか? これでは理論上転移魔術が使える犯罪者はやりたい放題だ。

 僕がその辺どうなっているのかとルーファウスに聞いてみると「これも簡単な話ですよ」とルーファウスは返して寄こす。


「まず第一に転移魔術を使える魔術師というのは根本的にとても少ない、犯罪者なんてのも論外で転移魔術を使える場合は術を封印されてしまいますので、よほどの事はありません。第二に私のように転移魔術を使える冒険者なのですが、階級ランクが上がるごとに色々と特権がありましてね、Aランク冒険者ともなると身分証提示なしでの街への出入りもまかり通ってしまいます。つまり見付かったとしてもお咎めなし! 使える特権はとことんまで有効活用すべきと私は考えます!」


 それ、ルーファウスはお咎めなしだけど、僕にはお咎めあるやつなのでは? という思いが頭を過ったのだけど、街の中に入ってしまえばもうこっちのもので、それ以上追及される事はほぼないらしい。ハイテクなシステムなくせにザルなとこはとことんザルだな。


「という訳で、私とタケルは一足先にメイズの街の観光でもしていますので、お二人は正規の手続きを踏んでごゆっくりどうぞ」


 にっこり。

 有無を言わさぬルーファウスの笑み、アランは苦笑いで「分かったよ」と頷き、ロイドは少し不機嫌そうなのだが仕方ないという表情で頷いた。



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