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DTのまま40を超えた僕が魔法使いから○○になった話  作者: 矢車 兎月(矢の字)
第二章

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平和で呑気な僕の旅

 僕たちは旅の道程で依頼を受けつつダンジョン都市へと進んでいく。僕は西方の街シュルクを出たのは初めてだったので、街の外は見るもの聞くもの初めてばかりでワクワクが止まらない。

 街道を歩いていたら頭上から影が差して空を見上げる。そこに飛んでいたのは大きな翼を広げた鳥? 体長は小型のヘリコプターくらいのサイズに見える。


「わ、わ、わ! ド、ドラゴン!?」

「ん? ああ、違う違う、あれはワイバーン、一応ドラゴンの仲間ではあるみたいだが比較的小さいし大人しい種だから、乗り物として活用されてんだよ。よく見てみろ、背中に荷物が括られてるだろ?」


 僕は瞳を細めて頭上を飛ぶワイバーンの背に目を凝らす。確かにそこには何かが括りつけられているし、騎乗している人影も見えた。


「王都にはワイバーン騎兵団なんてのもあってな、祭りの時にやる派手な飛行訓練は祭りの目玉なんだぜ」

「うわぁ、それ見てみたいです!」

「ははは、機会があったらな」


 ポンポンとアランが僕の頭を撫でる。王都かぁ、僕を追いかけ回す聖女様の教会本部があるから行きたくないんだけど、ワイバーン騎兵団は一度見てみたいぞ、きっと格好いいんだろうな。

 僕はかつて元の世界で見た事のあるブルーインパルスの飛行訓練を思い出す。隊列を組んで一糸乱れず大空を舞う戦闘機はとても格好良かった。恐らくこの世界には飛行機のようなものは存在していないと思うのだけれど、きっとその代わりにああやって魔物を使って空を飛ぶのだろうな。


「タケル、頭上ばかり気にして周りの警戒を疎かにしては駄目ですよ、街道沿いは比較的安全とはいえ魔物も盗賊もいつ何処から出てくるか分かりませんからね」


 ルーファウスからの声かけに僕はハッとして周りを見渡す。確かにその通りだ。整備された街道は人の往来が激しいので賢い魔物は街道沿いには近寄ってこないらしいけど、魔物が全く出ない訳ではない。

 実際ここまで歩いてきて、腹を減らした狼みたいな黒っぽいヘルハウンドっていう魔物や、大きな熊みたいな魔物のレッドベアなんてのにも何度か遭遇している。この辺の魔物は討伐依頼の対象だったからサクサクと討伐するよ、危ないからね!

 パーティー依頼は何人かで受ける依頼になるので採取ならそれなりの量を、討伐ならそれなりの数を要求される、だから見付けたら片っ端から倒すべし! 倒すべし!!

 ごめんね、こんな街道に出てくる君達が悪いんだからね、これも一般の人に安全な旅をしてもらう為の冒険者の仕事だから僕も容赦はしないよ。

 倒した魔物は討伐証明部位だけ回収してその場で捌く、残った肉はそのまま僕たちの食料になります。食べられない内臓や骨なんかはライムが綺麗さっぱり片付けます。ええ、欠片だって無駄にしませんよ、残さず全部いただくのでどうぞ安らかにお眠りください。


「タケルが仲間に加わっただけで旅の食糧事情が一気に向上したな、なぁ、ルーファウス」

「そこは本当に。タケルの作る料理はいつもとても美味しいです」


 そうは言ってもコンロもなければ水場もないような場所でする料理なんてたかが知れているのだけど、それでも僕が持ち込んだ調味料の数々と調理道具一式のお陰で飯が進むとアランもルーファウスもニコニコだ。


「ルーファウスなんて調理と言ったら焼くくらいしか能がないから、ホント悲惨でな……」

「私は基本的に徒歩で旅なんてしませんから」


 ルーファウスがふいっとそっぽを向く。確かにルーファウスは一人だったら転移魔術を使って何処へでも行けるのだ、徒歩で行くのは今まで行った事のない場所だけで、そうなってくるとこうやって屋外で料理をして食事をするなんてそうそうする必要ないもんな。

 キャンプ中だっていざとなったら最寄りの街に買い出しに行けばいいだけなんだから、そりゃあ調理の腕が上がる訳がない。

 ちなみにこの世界の人って基本的にあまり自宅で料理をしない。全くしないという訳ではもちろんないけど、お店で買って食べるというのがかなり浸透している。商売として惣菜を売っている人達の割合が多いせいもあるのだろうし、惣菜屋もバラエティに富んでいるので、これはこれで有りだなと僕は思っている。

 今日の晩御飯はヘルハウンドの肉の入ったスープ、肉はちょっと硬いけど、よく嚙んで食べるとうま味が増す。うん、美味しい。

 僕がスープを啜っていたら横髪がぱさりと落ちてきた。髪の毛伸びてきたな、そろそろ切らないといけないなと思いながら髪を掻き上げる。

 何度も髪を掻き上げているとルーファウスが「髪の毛留めましょうか?」とシンプルな髪留めを持って僕の隣へやって来た。


「留めるよりも切りたいです、自分で切れますかね?」

「せっかく綺麗な髪なのに切ってしまうのですか?」

「だって邪魔じゃないですか。そういえばルーファウスも髪が長いけど、邪魔じゃないんですか?」

「もう慣れましたね、それに魔力は髪に宿ると言われていますので、魔術師は髪を伸ばしている者がほとんどですよ」


 お? そうなんだ? そう言われて思い返してみれば確かに今まで会ったどの魔術師も皆髪が長かった気がする。


「伸ばした方がいいのかな……」


 僕が前髪を引っ張りながらそう言うと「タケルならどんな髪型でも似合うと思いますけどね」とルーファウスは僕の髪を指で一掬いしてキスをした。

 目の前で食事をしていたロイドが驚いたような表情で固まっている、アランは苦笑するだけで何も言わない。


「ルーファウス! 人前でそういう事しない!」

「人前でなければ良いんですか?」


 にっこり。有無を言わさぬその笑顔に僕は言葉を失くして口ごもった。確かに僕はルーファウスに口説く宣言をされているのだけど、こんな皆の前で意味ありげなことしないで欲しい、恥ずかしいじゃないか!


「でしたら今度二人きりの時にでも……」


 お前本当に遠慮もなくグイグイくるなっ!


「二人きりの時もしないっ、髪は留めて!」


 僕の言った言葉にルーファウスはにこにこ笑顔のまま僕の髪を整えていく。何故か気付けば可愛らしく髪を結われてしまったのだが、確かに邪魔ではなくなった。だけどこれ、絶対自分ではできないやつだ。


「これから毎朝タケルの髪は私が結いますので伸ばしましょう」


 ルーファウスがとても楽し気だ。

 毎日か……ほっといたら伸びてく一方な訳だし、伸ばすならそうなるよな。ルーファウスは伸ばして欲しいみたいだけど、どうしようかな、迷うなぁ。

 食事を終え日が暮れると僕たちは野営をする。宿屋を取れたら本当はそれが一番良いのだけど、街と街の間がかなり離れている場所もあるので仕方がない。

 本来なら夜襲などに備えて交代で寝ずの番を立てるのが野営の基本なんだけど、僕たちは寝床を確保したらルーファウスが防御結界を張って、その外側に僕がスライム結界を張る事で安全に寝床を確保している。

 スライムって攻撃力がほぼ皆無なせいか防御力は高いんだよね、特にスライムの上位種になると、これといった素材も取れないのにひたすら倒しにくい厄介な魔物扱いで、冒険者は遭遇しても避けるのが定番らしい。攻撃はしてこないしね。

 現在ライムはそんなスライムの上位種に進化中。オークにやられて一度は元のスライムに戻ったライムだったのだけど、旅の過程で仲間を取り込みつつ、通常スライムが食す事のないはずの魔物の内臓なんかを毎日のように食べさせていたら、少しばかり好戦的な子に育っていて困惑してたりもする。


『タケル~もし誰かが襲ってきたら食べちゃってもいいんだよね?』『食べる食べる~』『ボクはおいしいのじゃなきゃヤダなぁ』


 なんて皆好き勝手言って、寝ずの番はとても楽しみにしている様子。基本的に僕たちが活動中は僕のローブの中で寝てるし、元気が有り余ってるらしいスライム達が楽しそうだから「好きにしていいよ」と僕も伝えてある。

 ただ、時々朝になって結界の外を見ると地面がすごく踏み荒らされている時があったりもして、ライムに何かあったのかと聞いても『おいしいの食べた~』『もっと食べたい』くらいの報告しかしてくれないので何があったのか分からないのだけはとても困るんだよね。

 もし万が一スライム結界を突破されたらルーファウスの防御結界が発動するので、そこまで来るような魔物や盗賊なら対処しなければいけないけど、現在僕のスライム結界を突破するような輩は現れていないので旅は平和そのものだ。



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