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DTのまま40を超えた僕が魔法使いから○○になった話  作者: 矢車 兎月(矢の字)
第二章

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ルーファウスとロイドの微妙な関係

 ゴブリン&オーク襲撃事件からしばらくして、僕とロイドはGランク冒険者からFランク冒険者に昇格した。毎日コツコツ依頼を受け続けたかいがあったというものだ。

 冒険者になって最初のGランクというのは言ってしまえば冒険者のお試し期間みたいなもので、依頼の受注と達成を30回繰り返せばそれだけでFランクに昇格できる。僕たちはFランクに昇格した事でようやく冒険者見習いを卒業したという形だ。

 今まで僕たちが受ける事ができた依頼はGランクの薬草採取依頼とひとつ上のFランクの討伐依頼だけだったのだが、昇格した事によって更にもう一つ上Eランクの依頼も受注できるようになった。

 そうは言っても今までとやる事がさほど変わる訳ではないのだけれど、受けられる依頼の数は桁違いに増える。当然報酬も上がるのでできれば積極的に依頼は受けていきたい所だけれども……


「Eランクって討伐依頼多いよね……」


 僕は冒険者ギルドの掲示板に掲示された依頼書を眺めてひとつ溜息を吐く。正しく言えばEランクの採取や収集の依頼もない訳ではないのだけれど、比較的簡単な採取依頼は採取場所が少し遠くなったり、少々危険な場所にあったりで出掛けて行くのに骨が折れる。

 アイテム収集依頼というのもこの辺りから増えてくるのだけど、それはそのアイテムを持っている魔物との討伐依頼とセットになっている事がほとんどで、それはもう討伐依頼となんら変わらないのだ。


「冒険者なんて魔物倒してなんぼだろう?」


 と、相変らずぶっきら棒に言い切るロイド。けれど、僕がそんな彼に視線を向けると「ま、まぁ、でもタケルは無理しなくてもいいじゃないかと俺は思うけどなっ」と、ふいっと視線を逸らされた。

 あの事件以来ロイドはいつもこんな感じ。憎まれ口を叩く事が減ったし、気遣いは分かるんだけど、同時に少しだけ距離を感じる。せっかく仲良くなれたと思ったのにこれはこれでちょっと寂しい。

 それでいて、僕が冒険者ギルドに来るといつの間にか横にいるのだから不思議だなって思うけど。


「おや、今日もいらしてたんですか?」

「おはようございます、ルーファウスさん。そちらこそ、御自身の依頼は受けなくていいんですか?」

「私は今タケルの指導にあたるのに専念しているのでね、しばらく冒険者家業は休職中だよ」


 にこにこ笑顔のルーファウス、片やロイドは少し不貞腐れたような表情で、何となく不穏な空気を感じる。

 この二人、別にものすごく目に見えて仲が悪い訳じゃないんだけど、なんかこう纏う空気が、ね、なんかおかしい。空気を読む事に長けてる日本人なら分かってもらえると思うんだけど、穏やかに会話してるのに少し空気がぴりつく感じ、何でなのかな?

 確かにルーファウスは当初僕を無理やりゴブリン討伐に連れ出したロイドの事に腹を立てていたけど、それはもう終わった事だしいつまでも根に持つのは大人げないと思うんだよ。しかも怖い思いをした当事者である僕がもういいと言ってるのだから、ルーファウスがいつまでも彼に怒りをぶつけるのはお門違いだ。

 しかもロイドは僕と同じでまだまだ新米冒険者なのだから失敗のひとつやふたつはあって当然、ここは先輩冒険者としてルーファウスが僕たちを指導してくれたらいいだけの話なんだけど、何故かルーファウスはロイドを毛嫌いしているふしがある。

 表立って文句や悪口を言ってる訳じゃないし、笑顔で接しているから注意も出来ないんだけど、あからさまにこっち来んなオーラを放ってるの本当に何でなのかな?

 ロイドもロイドで何となくそんなルーファウスの態度に気付いているようで、元々は「尊敬してます!」って、感じだったのが最近は少しぎこちない。

 これどうしたらいいのだろうか? 僕が何か言うと余計事が荒立ちそうで何も言えないんだよな……


「ロイド君は今日はどの依頼を受けるの?」

「タケルは?」


 質問に質問で返されて僕は考え込む。討伐依頼は得意ではないのだけど、受けておきたい依頼はあるんだよね。


「僕はホーンラビットの討伐依頼を受けてみようかと思ってるよ」

「!? なんで?」


 なんでって、しかも何でそんなに驚くかな? さっき自分で冒険者は魔物を倒してなんぼだって言ってたくせに。


「Eランクの採取依頼は採取場所が少し遠いから、もう少し準備してから行きたいんだよね。あとね、ホーンラビットって美味しいから!」


 そう、ホーンラビットは美味しい。

 シェアハウスで料理を振舞う事で小銭を稼いでいる僕にとって食材確保はとても大事。今までは他の冒険者達が狩ってきた獲物を提供してもらって調理して出すという形だったので僕へのお駄賃は調理をする手間賃のみだった、だけど自分で食材を確保できればきちんとした料理として彼等にそれを提供できる訳で、更に小遣い稼ぎが捗ると僕は考えている。

 ホーンラビットの討伐依頼証明部位は角だ、だから肉は買取にも出せるけど欲しいと告げれば丸っと貰える。討伐自体もさほど難しくないと聞いているし、こんな美味しい依頼は他にない。

 コカトリス討伐の依頼もあるけれど、毒のある魔物はまだちょっと怖いからこっちは保留。


「美味しいって、お前……スライムは可哀想とか言って討伐できなかった奴がホーンラビットは平気なのかよ!?」


 ロイドが驚愕の表情で僕を見てる。だけどそれはそれ、これはこれだ。スライムは食べられないけどホーンラビットが美味しい事はもう知っている訳で、既にホーンラビットは食材と割り切っている僕に躊躇いはない。

 豚だって牛だって生きているのを見れば可愛いと思うけど、目の前に肉を出されたら美味しく食べられるのと一緒だ。その辺は割り切らないと食べられる物がなくなるし、僕は菜食主義者ではないのでタンパク質は食べたい。


「ダメかな?」

「いや、駄目ではないけど……」

「でしたら今日は東の草原ですね、行きましょうか」


 ルーファウスが僕とロイドの間に割って入ってきて、さりげなく僕の背を押した。まだロイドが何の依頼を受けるか聞いてないのに気が早いよ。

 同じ東の草原で受けられる依頼なら一緒に行けばいいんだし、そんな急かす事ないのに。


「じゃあ俺はこれにする」


 ロイドが慌てたように依頼書をひとつ掲示板から剥がして僕たちに付いてきた。それは東の草原で引き続き継続して出されているゴブリン討伐依頼だ。

 僕たちは晴れてFランクになったので単独での討伐受注も可能になったからね、倒してくれれば助かるよ。

 魔物肉ってのは食べられる物が多いけど、ゴブリンだけは煮ても焼いても食べられない、だから僕はあまり討伐依頼を受ける気にならないんだよね。

 だけど、近くでロイドがゴブリンを倒してくれるのなら獲物の取り合いになる事もないし、僕がゴブリンに襲われる事もなくて一石二鳥でとても助かる。


「あなた、また私達に付いて来る気ですか?」

「べ、別に、そういう訳じゃなくて、たまたま受ける依頼が同じ場所ってだけです!」


 やっぱりルーファウスが大人げない、そんな風に言ったらロイドが可哀想だ。


「僕はロイド君が一緒で嬉しいよ、それにすごく助かる。ゴブリンが怖いのは身を持って知ったしね」

「私が一緒にいるのですから、もう怖い思いなどさせませんよ」


 うん、まぁ、それは分かってるんだけどさぁ。ちょっと最近のルーファウスは僕に対して過保護が過ぎるんじゃないかな?


「お~い、ルーファウス」


 そんな時にかかった声、今朝は別行動をしていたアランが手を振ってこちらにやって来た。そしてひょいと僕たちの持った依頼書を覗き見て「お、ちびっ子二人組も今日は東の草原か、だったらちょうどいい、ルーファウスは少し俺に付き合え」とそう言った。


「は? 何を藪から棒に? 依頼ならしばらく受けないと言ったでしょう?」

「それは分かってる、これは依頼というよりは自主的な活動だ。お前だって高ランク冒険者の心得は覚えているはずだよな?」


 高ランク冒険者の心得? ってなんだ? 僕たちが首を傾げているとアランは呵々と笑って「あるんだよ、そういうのが」とそう言った。


「これから昇級試験を受けていくとだんだんに出てくるんだが、ひとつ、冒険者たるもの秩序を守り正義を貫き己の任務を遂行すべし、ひとつ、冒険者たるもの品行を保ち悪事に溺れる事なかれって感じでな、結構な数の心得が実は冒険者ギルドにはあったりするんだが、その中に地域貢献、後輩育成、治安の維持、所属地域の市民の安全確保なんてのもあってな、高ランクになってくるとこれが義務みたいになってくるんだよ、最悪その辺を守れないと降格、もしくは冒険者資格のはく奪もあるから覚えておいて損はないぞ」


 へぇ~そうなんだ。冒険者って地域でかなり頼りにされているんだな、正直意外だ。確かに街には警察みたいな治安維持組織もあるのだけど、そこに務めている人達は冒険者上がりの人も多いのだとアランは言った。


「まぁ、そんな訳でルーファウス、今日は俺に付き合うよな? 少し手を貸して欲しい事があるんだよ。どうせ同じ東の草原での調査だ、なんなら二人を連れて行ってもいい」

「危険な調査ならタケルを連れて行くのはどうかと……」

「危険はないと思うぞ、この間の冒険者たちの一斉調査で特別危険な魔物はもういないって報告だし、ここ数日俺も見回っているがそれに関しては問題ないと思っている。ただ少し気になるモノを見付けてな、それをお前に見て欲しいんだ」

「気になるモノ?」


 「ああ」とアランは頷いて「だから一緒に来てくれ」とルーファウスに告げる。ルーファウスは少し困ったように僕を見るのだけど、別にそういう事なら一緒に行けばいい。道すがら僕たちもそれぞれの討伐対象に遭遇できれば問題はない。


「行きましょう、ルーファウスさん。僕もその『気になるモノ』が何なのか気になります」


 僕のその言葉にルーファウスは不承不承頷いた。そういう所、ルーファウスって少し子供っぽいよね。



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