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DTのまま40を超えた僕が魔法使いから○○になった話  作者: 矢車 兎月(矢の字)
第一章

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戦闘開始

「ライム、行くよ!」

『はぁ~い』『いっぱい食べる~』


 スライムのアレは食事なのか? だが確かにいつも草原の草もあんな感じに消化しているのだから食事ではあるのだろう、悪食だな。肉も食べるのか。

 今後のライムの餌やりに少し不安を感じるものの、今はそんな事を考えている場合ではない。僕達は洞の奥へと進んでいく。

 ライムの身体は伸縮自在のようで敵が現れれれば圧し潰し、移動の時は少し縮んでぴょんぴょん元気に跳ねてついてくる。スライムなんか従魔にしても役に立たないなんて言ったのは誰だ? 皆見る目がなさ過ぎる。

 洞窟の中は奥へ進むほどじめじめして空気が淀み、生ものを腐らせたような異臭がして不快さが増した。


「だ、誰か……」


 掠れたような小さな声が聞こえる。

 その声を辿り、行き着いた先にあったのは乱雑な作りだが、がっしりとした木の杭で造られた檻だった。檻の中にはボロボロな姿の数人の女性たち。僕が檻に近付くと彼女達は脅えたように檻の奥で身を寄せ合い悲鳴をあげる。


「いや、来ないでっ、いやぁぁぁ」

「落ち着いて、助けにきました!」


 檻の外から聞こえた声が人の声だと分かると、女性たちは今度は柵に縋るようにこちらへ助けを求めてきた。けれど薄暗がりの中、僕の姿を視認した彼女達は「子供……」と、絶望したようにへたり込んだ。


「なんで、他に助けは来ないの?」

「もう無理よ、こんな子供じゃ檻を壊せない」


 さめざめと泣き出す女性たちの絶望が濃くなる。確かに檻には分かりやすい扉がない。それはもう乱雑に女性たちの前に通り抜けられない程度の間隔を開けて木の杭が地面に突き立てられている。

 どうやらこの檻を作った者は相当に怪力で、しかしあまり知恵はない者のように思う。けれど、この頑強な檻ならば製作者にしかこの檻に侵入はできない。

 普通のゴブリンは知能が低く、女性と見ればすぐに襲い掛かると聞くが、彼女達の服は所々破れ汚れてはいても、まだ最悪な事態にはなっていないように見える。


「ねぇ、あなたはどうやってここまで来たの? 外にはゴブリンがたくさんいたでしょう?」

「僕もゴブリンに攫われてきました、だけど、助けます!」

「あなたじゃ無理よ! この檻、びくともしないのよ! 誰か大人の助けを呼んできて!」


 確かに僕では頼りなく見えるのだろうな、だけどこれ木の檻だ、たぶん僕でも何とかなる。


「お姉さん達、少し下がって」

「え?」

風刃ウィンドカッター!」


 驚いたように後ろに下がった彼女達を確認して僕は檻に向け風魔法を放つ。風刃ウィンドカッターはかまいたちのように風を刃にする魔術なのできっと木ならば切断できると思った。

 けれど、僕の風刃では少し威力が足りないみたいで杭に傷は付くものの切断とまではいかなかった。くっそ、僕の魔術はチート能力なんじゃなかったのか!?

 けれど、そこで僕ははたと気付く。違う、僕のチートは属性魔法じゃない、無属性魔法だ! でも、無属性? どんな技? 木を切断できる無属性魔法……いいや、今はもう考えている時間はない!

 僕は魔力を身体に纏うイメージで、その魔力を腕に集中する。僕の身体は刃だ、僕はこの檻を切断できる!

 根拠のないまま腕を横に一振り、僕の思惑通りに木の杭はスパッと切断された。驚く女性たち。だけど僕も驚いている。本当に出来た……

 しばし自分の掌を眺めてしまったが、今はそんなのんびりしている時ではない。考えるのは全て後回しだ。


「皆さん、逃げましょう!」

「そ、そうね、逃げなきゃ……っ!」


 立ち上がりかけて一人の女性が躓くように蹲った。


「そういえばエリシア様は足にお怪我を……」


 ここで屈強な男性ならば彼女を担ぎ上げて連れて逃げる所なのだろうが、如何せん僕の身体はこの場にいる誰よりも小さい。他の女性達も皆見た目にか弱く、彼女を背負う事はできても俊敏に逃げる事など不可能だ。


「魔力が残っていさえすれば、こんな怪我どうとでもなるのに。ああ、そうだ、君は魔術師なのよね、魔力を回復するためのアイテムを何か持っていない?」


 僕は力なく首を横に振る。僕は本当に何の準備もなくここへ来てしまったのだ、重ね重ね準備を怠った自分が悔やまれる。でも、魔力、回復……聖魔法!


「僕、その怪我治せるかも!」

「え?」

「やった事ないですけど、聖魔法の適性があると教会で言われました!」

「それでは、あなたが……」


 何かを言いかけた女性、けれどその言葉は『うわぁぁ!』『ああああぁぁ!』『つぶされちゃうぅぅ!!』というスライム達の絶叫でかき消された。


「ライム!?」


 慌てて僕が振り返ると、そこには仁王立ちした巨大な何かが立っていた。


「何故こんな所にオークが……」


 エリシアと呼ばれた女性が呟いた。

 オーク? こいつが?

 確かこの辺の魔物生息マップにはその名はなかったように思う。その身体は巨大で、こんな人里では隠れ暮らすのは困難だと思われる。街にはルーファウス達を筆頭に優秀な冒険者達が在住しているのだ、そんな人達がこんな大きな魔物を見落とすなんてあり得ない。


『タケル、たすけてぇぇぇ』


 オークがライムを踏みつけ引き千切っている。スライムは核を潰されなければ死ぬ事はないが、無造作に引き千切られたライムの欠片がびしゃびしゃとあちこちに飛び散り、ライムの身体は瞬く間に小さくなっていった。いけない、このままではライムの核が潰されてしまう!


風刃ウィンドカッター!」


 僕がとっさにオークに向け風刃を放つと、風の刃はオークの表皮を削いだものの大きなダメージを受けた気配はない。けれど攻撃自体が不快であったのだろうオークは無言でこちらをぎろりと睨んだ。

 オークの姿形はゴブリンをそのまま大きくしたような感じだが、ゴブリンほど簡単にはやられてはくれないようだ。恐らくこの檻を作ったのもこのオークで間違いない。

 オークはすっかり戦意喪失したライムを地面に放る。ライムはべしゃりと地面に広がったが、そのうちコソコソと逃げ出したので死ななくて良かったとひとまずホッとした。

 けれどライムが助かった所で僕たちが絶体絶命のピンチである事に変わりはない。


「皆さんは隙を見て向こうへ走って!」

「でも……」


 あ、そういえばお姉さんの足、治してない。

 聖魔法、今まで怪我のひとつもした事なかったから使った事ないけど、きっと使える、たぶん大丈夫! ってか考えてる時間はない!


回復ヒール!」


 僕を中心に半径2m程がキラキラと発光しだし、お姉さんたちは驚いたような表情を僕へと向けた。オークは光に慣れていないのか瞳を細めて低い唸り声をあげる。

 発光が収まると足を怪我していると言われていたエリシアが「こんな事って、治ってる……」と更に驚いたような表情を見せた。でもちゃんと治ったのなら幸いだ。


「早く、逃げて! 竜巻トルネード!」


 下級魔術である風刃ウィンドカッターはオークにはあまり効果がなかった、けれど竜巻は一応効果があったようで、オークが雄叫びをあげる。洞窟がびりびりと震えるような咆哮で頭が割れそうに痛む。

 洞窟はホールのようになっていて反響が酷い、これも一種の攻撃かと僕は頭を振ってオークを睨んだ。

 竜巻はオークに効果があったが致命傷には到っていない。何かこいつの弱点が分れば……そう思った時に僕は気付く。こういう時に「鑑定」を使えばいいのか!

 頭の中で「鑑定」と唱えれば、またいつものようにオークに被さるようにウィンドウ画面が開いた。


『オーク ゴブリンの上位種、知能は低く、残虐。人肉を好んで食べる。属性は土、弱点は火』


 弱点は火! それだけ分かれば充分だ、僕はすぐに鑑定画面を閉じる。


火球ファイアーボール!」


 放たれた火の玉はオークに命中し、オークは再び雄叫びをあげた。ってか、これ本当にうるさい! オークはあまり動きが機敏ではない。巨体だから動きも鈍いのだろう。一度捕まってしまえば逃げるのは難しいが、間合いを計っていれば遠くから攻撃できる分、僕の方が有利な気がする。

 オークの雄叫びは頭に響くが、まぁ、なんとかなるかも、なんて思ったその時、背後から背中を殴られた。



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