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DTのまま40を超えた僕が魔法使いから○○になった話  作者: 矢車 兎月(矢の字)
第一章

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アランの戦闘スタイル

 翌日、アランは約束通り僕に体術を教えてくれた。僕が彼に習いたかったのは攻撃よりも護身術、へっぴり腰ではあるのだが、言われた通りに相手にこうされたらこう返すみたいな動作を繰り返していると、意外と体格差や腕力差があってもどうにかなるという事を学んだ。これが「柔よく剛を制す」という事なのだろう。


「すごいです、アランさん! これなら僕でも大人相手に戦えるかも!」


 相手の懐に敢えて飛び込んで、急所を攻める。小さいからこそできる小回りの良さで翻弄する術を教わって興奮しきりの僕にアランは「だが、これは実践的な戦闘術じゃない、過信するな」とそう言った。


「そうなんですか? 充分戦えそうなのに……」

「これはあくまで護身術であって、対戦格闘術じゃない。いくら小回りが効いても体格で劣る場合は力尽くですぐに抑え込まれる。護身術は不意を衝くから生きる技であって、相手に勝とうと思っても難しい。あくまでこれは相手に隙を作らせるだけの気休めにしかならない」


 ああ、確かにそうかもな。アランに格闘で勝とうと思ったって僕なんかが一朝一夕に勝てるわけでなし、これはあくまで窮地に陥った時になんとか逃げる隙を作るためだけの技、それで相手を倒せるなんて思い上がっては駄目なんだ。


「だが、タケル、お前は筋がいい。お前がもう少し大きくなって、ランクも上がったら実践的な対戦格闘術も教えてやるよ」


 アランの言葉に僕は頷く。現在は付け焼刃でしかない僕の体術、奢らずにコツコツとは僕の得意とする所だし、反復練習頑張ろう。


「そういえば、タケル、さっきからこっちを覗いている奴がいるんだが、知り合いか?」

「え?」


 アランが視線で向こうと告げるので、僕がアランの視線の先を辿ると少し離れた木の陰に一人の少年が身を隠すようにしてこちらを見ていた。


「あ、ロイド君だ! おおい、こっちおいでよ!」

「ん? あの子、この間までタケルに散々絡んでた子じゃ……」

「はい、そうなんですけど、最近友達になりました。この胴着も彼がおさがりを譲ってくれたんですよ」


 ロイド少年は僕の呼び声にあたふたと慌てた様子を見せていたのだが、そのうちに観念したのか緊張したような面持ちで僕たちの前にやって来た。


「隠れてないで声かけてくれたら良かったのに」

「いや、まぁ……ちょっとな」


 ぶっきら棒な態度のロイド、どうやら憧れのアランを前にして緊張しているみたいだ。僕に対しては幾らでも憎まれ口を叩けるくせに、動揺しているのかこちらに視線を向ける事もしない。


「彼はロイド君です。ロイド君はアランさんの事すごく尊敬しているみた……むぐっ」

「余計な事は言わなくていい!」


 慌てたように手で口を塞がれ「心の準備させろって言っただろ」と小声で怒られた。そんなに緊張しなくてもアランは君をとって食いやしないのに。


「仲が良いんだな。タケルがいつも世話になってるみたいで、ありがとう」

「いえ」

「君は確か剣士だったか?」

「はい」


 ロイドの口数が少なすぎて会話が続かない。アランも少し困ったような表情で僕を見る。でも、そんな顔されても僕も困るよ。


「あ、そういえばロイド君はアランさんの弟子になりたいそうですよ!」

「っ! 馬鹿、言うなって!」

「弟子? あいにく俺は弟子をとる気はないな、そもそも俺に教えられるのは基本的な対戦格闘術だけだから剣も扱えないし教えを乞うならもっと良い師が幾らでも……」

「俺はあんたが良いんです!」


 咄嗟に出てしまった言葉だったのだろう、ロイドは言った傍からあわあわしている。


「あ、違っ、いや、違わないけど、活躍はいつも聞いています。難敵を目の前にすると闘神が乗り移ったかのような戦闘を繰り広げる、アランさんは魔王ですら太刀打ちできない凄い人だって……」

「あ~ああ、うん、分った、もうそれ以上言うな」


 困惑顔のアラン、それにしても魔王が太刀打ちできないってどんだけ?


「ずいぶん誇張された俺の武勇伝が流れているみたいだが、俺の戦い方はそんな格好いいものじゃないぞ。そもそもルーファウスと組むようになる前まではパーティーを組んでもいつも厄介者扱いで敬遠されてたくらいでな……」

「そんなの、パーティーを組んでいた相手が見る目がなかっただけです!」

「いやぁ……そうでもないと思うぞ。俺だって俺みたいな奴が同じパーティー内にいたら共闘できる気がしない」


 ? なんでアランはそこまで自分を卑下するのだろうか? ルーファウスは彼の実力を認めていたし、その実力を示すようにランクだってBランクだ。あちこちで武勇伝を噂され、同じ冒険者の中で憧れられてもいるのに当の本人はその評価をあまり良しとしていないようで僕は首を傾げる。


「そんな事ないです! 俺はあなたと一緒に冒険をしてみたい!」

「ああ……うん、そう言ってもらえるのはとても嬉しいが、たぶん君は俺とは相性最悪だぞ」

「何でですか!?」


 アランは相変らず困惑顔だ。


「アランさんは今だってルーファウスさん以外の人と出掛けたりしてますよね? なんで駄目なんですか?」

「ああ、今は低ランク依頼の手伝いをしてるだけだからな。だが冒険となったら話は別で、俺は俺と同じ近接戦闘職の相手とは組まない、というか組めないんだよ」

「それはなんで?」


 僕が首を傾げると、アランは困ったように自身の髪をくしゃりとかき混ぜて「お前達狂戦士バーサーカーって知ってるか?」と、そう言った。

 『狂戦士バーサーカー』名前だけは聞いた事がある、けれど僕の認識では狂戦士はとても強い戦士というくらいのものだ。アランはよく分かっていない僕達二人に淡々と語ってくれた。


「普段理性を保って戦っている時の俺の対戦格闘の実力は実はさして高くない、俺が真価を発揮できるのは狂戦士化した時、狂戦士化ってのは己の理性をかなぐり捨てて戦闘に全振りしてしまう、つまりは理性を失って戦いに没頭している状態なんだ。そうなった俺は分別なんてつかないから敵も味方も分らない、闘神だ鬼神だと言われる事もあるけど、仲間からしたらたまったもんじゃないぞ、俺は敵が倒れるまで止まれなくなる、近寄れば俺は仲間ですら攻撃しちまうんだから迂闊に近寄る事も出来ない上に、狂戦士化が解けた後は数時間の間動けなくなって全くの役立たず、はっきり言ってお荷物以外の何者でもない」


 アランがひとつ息を吐く。でも狂戦士バーサーカーってそうなんだ……確かに仲間にするには少し考えてしまうな。


「ルーファウスはその辺ちゃんと分かってくれていて、俺が戦っている間は後方支援に徹してくれるし、いざという時は俺の攻撃にも耐えてくれる。理性を失って暴れ回ってもルーファウスなら俺を正気に戻す術を持っているから安心して背中を任せられる。だけど、ルーファウス以外じゃまた仲間を傷付けるんじゃないかって怖くて俺は全力が出せないんだ」


 「また」? もしかしてアランは過去に仲間を傷付けたことがあるのか?


「だから少年、君の言葉はとても嬉しいが俺は君を弟子にしてやることはできないし、一緒に冒険もできないと思う」

「そ……ぅなんですね」


 あからさまにがっかり顔のロイド、なんだか僕までしょんぼりだよ。でも知らなかったな、アランの戦い方ってそんな感じなんだ……


「あ、でも僕に教えてくれた程度に戦闘術を教える事はできるのでは?」

「まぁ、それは可能だが、そもそも俺は剣を使わない、少年が剣士を目指しているならそちらの師を探した方が良いと思うぞ」

「剣士、は、勿論目指しています、が! 俺は対戦格闘術も学んでみたいです!」


 ロイドが真っ直ぐアランを見据えて言い切った。アランは少し戸惑った様子ではあったが「まぁ、そこまで少年が言うのなら」と頷き、僕達は翌日からアランに対戦格闘術の基礎を教えてもらえる事になった。

 アランは僕にはもう少し大きくなったらと言っていたのだけど、ロイドが仲間に加わった事でついでに教えてもらえる事になったのは僕にとってラッキーだったかもな。



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